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- 「世界経済見通し」
- 【月刊アフリカニュースNo.118掲載】
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“World Economic Outlook”
IMF、7月26日
https://www.imf、org/en/Publications/WEO
2021年の暫定的な回復に続いて、リスクが顕在化し始めた2022年にはますます暗い展開が続いている。今年の第2四半期には、中国とロシアの景気後退により世界の生産が縮小した。米国の個人消費は予想を下回った。パンデミックによって既に弱体化している世界経済は、幾つかのショックを経験することになった;予想以上の世界的なインフレ、特にアメリカと欧州の主要経済はより厳しい状況である。中国経済は、COVID-19とロックダウンを反映して、予想より低い経済成長である。ウクライナにおける戦闘の更なるネガティブな波及効果も見逃せない。
(以下Foreign Policy の解説)
IMFは先進国における利子の上昇の特に低所得国への影響について警告している。その60%は、より高い借り入れコスト、信用の減少、ドル高、成長の低迷によりさらに苦境に追いやられるであろう。この現象は既に幾つかの国で起きている。スリランカの経済問題は幾つかの原因があるが、その一つは、過去一年間で債務返済のコストが高くなっている。ガーナも利子の高騰が、今月初めにIMFの救済を求める原因となった。バングラデシュは、通貨の下落と輸入依存で外貨準備を使いつくしたために、IMFに同じような救済を求めた。現地紙によれば、政府は45億㌦の救済を求めている。エルサルバドール、エジプト、チュニジア、トルコも同じような警戒状態にある。
Liliana Rosa-Suarez(the Center for Global Development)によれば、幾つかの低所得国の抱えている問題は、単に利子の高騰によるものではなく、問題の流れとして理解されるべきである。最初に、COVID-19パンデミックであり、景気後退を避けるために多くの国が低い利子で債務を増加した。次に市場が再び開放されるにつれてインフレが起こり、ウクライナ侵攻とその結果生じた食糧や燃料など主要商品の価格上昇というショックに繋がった。彼女によれば、Fed.(米国連邦準備銀行)がインフレに対する警告を行なわず、今になって利子率のより高い上昇を行った。そのため資金調達のコストは、どんどん上がっている。この問題は、米国よりも早く金利を引き上げたラテンアメリカのお蔭で、そんなに悪化していない。もし米国が、再度の金利の上昇を年度末に行うことになれば、低所得国の経験する損害は、大きくないであろう。
*添付の表は、下記リンク先よりご参照願います。
- 「COVID-19とウクライナ侵攻による海外仕送りへの影響」
- 【月刊アフリカニュースNo.117掲載】
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“A WAR IN A PANDEMIC: Implications of the Ukraine crisis and COVID-19 on global governance of migration and remittance flows”
World Bank、2022年5月
https://www.knomad.org/sites/default/files/2022-05/Migration%20and%20Development%20Brief%2036_May%202022_0.pdf
サブサハラ・アフリカへの仕送りは、2021年に回復: アフリカはロシアのウクライナ侵攻の影響を最も強く受けている途上国地域である。侵攻の間接的な影響は時間と共に増大している。多くの国が石油/食糧の輸入国であり、急激な交易条件の悪化となっている。という事は、赤字と債務を増やし、インフレを押し上げ、実質所得と成長に切り込んでいる。アフリカは、85%の小麦の供給(内28%がウクライナとロシア)、トウモロコシ、食用油、肥料の価格上昇に大きく影響を受けている。肥料の価格は新しい農業シーズンに向かう農家に影響を与える可能性があり、深刻な中期的課題である。
アフリカの石油輸出国は価格上昇により利益を受ける。2021年は多くの問題が山積したが、アフリカへの仕送りは14%増、490億ドルであり、2020年の減少を補って余りあるものであった。
- 「食料見通し:世界食料市場に関する半期報告」
- 【月刊アフリカニュースNo.117掲載】
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“Food Outlook: Biannual Report on Global Food Markets”
Food and Agriculture Organization of the United Nations、6月
Food Outlook – Biannual Report on Global Food Markets (fao.org)
1)生産量予測
*不確実もしくは減少が見込まれる品目:小麦、雑穀(特にメイズ)、油糧作物
*増加が見込まれる品目:米、肉、砂糖、酪農製品、水産品
2)ウクライナ戦争の影響
*2016/2017年から2020/2021年にかけ、ロシアとウクライナの生産量の合計は
大麦(世界の19%)、小麦(同14%)、メイズ(同4%)。輸出量では、2021
年時点でロシアは世界第2位の、またウクライナは第6位の小麦輸出国であり、
ヒマワリ種子の輸出は両国合計で72%を占める。生産財の面では、ロシアは
肥料の大生産国であり、輸出量は窒素(世界1位)、カリウム(同2位)、
リン(同3位)。
*いくつかの国では、両国の食料への依存度が高い。アフリカに関しては、
たとえば2021年の小麦の輸入の依存度は、エリトリア(100%)、ソマリア
(90%以上)、マダガスカルとエジプト(80%以上)である。ヒマワリ種子
輸入依存度は、アルジェリア(100%)、エジプト、シエラレオネ、チュニ
ジア、コートジボワール(90%以上)、スーダン(80%以上)となっている。
*ウクライナの農業への影響は甚大。戦闘により土地、労働、投入財等への
アクセスが制限され、また輸送インフラも破壊された。さらに、国内の需要
を賄うため輸出量が減少する可能性がある。他方、ロシアの農業生産への
影響は限定的だが、制裁により輸出量が減少していることに加え、輸入に
依存する種子や農薬の確保(特にEUから)が困難となっている。
- 「フリーダムハウス報告:世界的な権威主義の伸張」
- 【月刊アフリカニュースNo.117掲載】
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“FREEDOM IN THE WORLD 2022” “The Global Expansion of Authoritarian Rule”
Freedom House
https://freedomhouse.org/sites/default/files/2022-02/FIW_2022_PDF_Booklet_Digital_Final_Web.pdf
世界の自由は重大な脅威に直面している。第2次大戦後、国連や国際機関は基本的な自由を支援し、同じことをしたい他の人々に援助を提供してきた。権威主義体制は規範を吸収し、または回避することに効果的になってきた。民主主義が古くからある国々においても、制度の欠点を悪用し、増悪、暴力、束縛されない権力を振るい、国政を歪めてきている。民主主義と権威主義の狭間で闘ってきた国々では、次第に後者に傾いている。民主主義の擁護者が一致してすべての国民の自由を擁護するために闘わなければ、権威主義が優勢になるであろう。
現在の民主主義への脅威は、16年間継続した世界的自由の衰退の結果である。昨年中60ケ国において衰退し、25ケ国で進展した。現在、世界人口の38%が自由でない国に住んでいる。これは1997年以降最も高い数字である。20%が自由な国に住んでいる。この期間に権力の乱用と人権侵害のチェックが減少している。ベルリンの壁が崩壊した後移行期にある国の指導者達は、国際社会で受け入れられるために、民主主義を受け入れたが、それは全く表面的なものであった。
21世紀に入って、民主主義の反対派は、国際秩序とそれが彼らの野心に課している
制約を解体するために粘り強く活動してきた。その成果は明らかである。中国、ロシア、他の独裁者達は、民主主義が繁栄と安全への唯一の過程であるというコンセンサスを攻撃しながら、ガバナンスのより権威的なアプローチを奨励してきた。民主主義は非リベラルな勢力によって内部からも攻撃されている。その中には、彼等をその地位につけた制度そのものを腐敗させ、粉砕しようとする悪徳政治家も含まれている。米国で昨年1月6日に起きた組織された暴徒による議会の乱入である。大統領選挙結果を変更させる試みであった。インドからブラジルにいたる国々でも、自由に選挙された指導者を引き下ろそうとする非民主的な行動が観られた。
- 「世界的なテロの指標2022」
- 【月刊アフリカニュースNo.116掲載】
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“GLOBAL TERRORISM INDEX 2022、MEASURING THE IMPACT OF TERRORISM”
Institute for Economics & Peace、96ページ
https://www.visionofhumanity.org/wp-content/uploads/2022/03/GTI-2022-web.pdf
サブサハラ・アフリカグローバル・テロリズム・インデックスは、2007年から2021
年のデータをカバーしている。
・2021年にはテロによる死亡者数は1.2%減少し、7,142であり、最大数の2015年
の3分の1である。85ケ国で減少し、19ケ国で増加している。
しかし、世界的にはテロ攻撃は17%増加し、5,225件である。ロシアとユーラシア
において、大きな改善が観られる。
・2021年に一人以上の死亡者を出したテロは44ケ国であるが2020年には43ケ国
あった。同年に105ケ国はテロを経験していない。これは2007年以来最大の数字
である。
・サブサハラ地域、特にサヘール地域では、多くの国で状況の悪化が視られた。
世界的なテロによる死者数の48%がこの地域で起きた。サヘール地域のブルキ
ナファソ、マリ、ニジェール、これにコンゴ(民)が加えられる。
・ナイジェリアにおけるボコハラムへの攻勢が、成功し2020年と2021年の間に
死者数は629から178に減少した。
- 「2021年民主主義指標:中国の挑戦」
- 【月刊アフリカニュースNo.116掲載】
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“Democracy Index 2021: The China Challenge”
The Economist Intelligence Unit、4月
Democracy Index 2021 – Economist Intelligence Unit (eiu.com)
* The Economist Intelligence Unit (EIU)は2006年から世界167カ国の民主主義
指標を発表している。1)選挙プロセスと多元性、2)機能する政府、3)政治
参加、4)政治文化、5)国民の自由の5つのカテゴリーの点数付けを行い、
各国の政治体制をア)完全民主主義、イ)不完全民主主義、ウ)ハイブリッド
体制、4)権威主義体制に分類している。たとえば2021年版では日本やイギリス
は完全民主主義であるが、フランスやアメリカは「不完全民主主義」である。
(この4か国の中では日本の点数が最も良い。)
* 世界全体の傾向として2020年以降、民主主義は衰退の傾向にある。2021年に民主
的な体制の下にある人口は45.7%に過ぎず、前年の49.4%から減少した。その一
因はCOVID19による国家権力の伸長と個人の自由の制限である。2021年にはワク
チン接種や治療などの対応がとられるようになったにも関わらず、ロックダウン
の強化やワクチン接種・接種証明提出の義務づけなど、国家による強制が更に強
化された。
* 西側の民主主義に対する中国の挑戦は、その経済力に由来する。中国の経済は紛
れもなく資本主義だが、国家と共産党が主導しているのが特徴である。経済発展
に伴い民主化が進むという西側の期待に反し、中国の民主主義指標は148位であ
る。中国の政治の特徴は、機能的な政府がある一方、アカウンタビリティ、牽制
と均衡、透明性などの民主的ガバナンスが欠如していることだ。専門家もしくは
強い指導者による統治という非民主主義的体制への指向が世界的に強まる中、西
側がすべきことは自身の民主主義を再生させることだ。
* アフリカでは、チュニジアで民主主義の後退が見られる一方、ザンビアは進展し
た。
1999年のナイジェリアの民政移管後、「クーデター文化」は消滅しつつあった
が、同国が治安上の様々な問題に直面し、地域の不安定要因となる中で、西アフ
リカでクーデター頻発している。尚、アフリカ54カ国中、49か国に関する民主主
義指標は下表のとおり。完全民主主義はモーリシャスのみ。
(分類)完全民主主義/(国数) 1 /(世界全体) 21
(分類)不完全民主主義 /(国数) 6 /(世界全体) 53
(分類)ハイブリッド体制/(国数) 16 /(世界全体) 34
(分類)権威主義体制/(国数) 23 /(世界全体) 59