フォーラム

第5回フォーラム
「TICAD VI ビジネスと人材育成-日本らしい視点で」
日時: 2016年5月11日(水)14:00〜16:00
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、政府関係者 など77名

当協会の大島理事長による開会の挨拶の後、モデレーターを片岡貞治 早稲田大学国際学術院教授(アフリカ協会理事)に、パネラーとして丸山則夫 外務省アフリカ部部長、江口秀夫 JICAアフリカ部部長、横山正 アフリカ開発銀行アジア代表事務所所長にお願いして討議を行った。

開会の挨拶:大島賢三理事長

本日は、会員の皆さま方をはじめ、政府各界から多数ご出席いただきまして、まことにありがたく存じます。このフォーラムは、時折の関心事項をテーマにして、5回目を迎えます。毎回、大変に盛会のうちに議論が進められております、今回も、皆さま方の活発なご参加を期待したいと思います。
今回のテーマは、「ビジネスと人材育成‐日本らしい視点で」ですが、アフリカとの関係で、ODAを中心とした人材育成の重要性は異論のないところであり、最近は企業でも人材育成をいろいろな形でやっていると聞き及びます。人材育成や教育は、日本がアフリカとの関係で果たし得る非常に重要な側面であり、全く異論のないことです。
日本の対アフリカ協力と支援は、従来ODA中心でやってきましたが、アフリカの指導者からは、「ODAも非常にありがたい、引き続きやっていただきたいけれど、ぜひ民間からの投資とか貿易という、ビジネスの進出を大いに期待している」と常々言われております。最近は、アフリカの将来性と市場の大きさに着目して、日本のビジネス界も注目するようになりました。いろいろなリスクや問題もありますが、将来的には大変大きなポテンシャリティーがあるので、関心を集めるようになったと思います。
「日本らしい視点で」という観点ですが、中国がものすごい勢いで出ており、日本は物量的に、例えば要人のアフリカ訪問などという点では、中国と競争してやるということは、現実的には難しい状況です。日本らしい協力とは、人材育成にせよ、その他の分野にせよ、きちんとわれわれ自身が日本の強みを認識して、それを生かしていくことが重要になります。今回のテーマは、「ビジネス」、「人材育成」、「日本らしさ」という3つの要素をこういう形でつなぎ合わせて開催することにいたしました。
今回パネリストは、いずれも日本の対アフリカ開発支援・協力について、第一線で活躍をしておられる方々で、キーパーソンでございます。外務省から丸山アフリカ部長、JICAから江口アフリカ部長、アフリカ開発銀行アジア代表事務所から横山所長にお願い致しました。ご多忙のところご参加いただきまして、ありがとうございます。モデレーターは、当協会理事で、早稲田大学教授としてアフリカに造詣の深い、片岡先生に務めていただくことになりました。
それから、今日は日本・AU友好議員連盟副会長の三原先生が、途中から出席されるとのご連絡をいただいております。途中で、タイミングを見てひと言ご挨拶をいただきたいと思っております。それでは、熱のこもったフォーラムとなることを期待いたします。

モデレーター:早稲田大学国際学術院 教授 片岡貞治氏

1993年の第1回以来、TICADをずっと内から外から見てきましたが、第3回まではどちらかというとODA、経済協力、開発援助を基軸とした会議でした。それが2008年の第4回くらいから、ODAベースの関係から脱却しようという試みが起こり、そのターニングポイントがTICAD IVでした。更にそのターニングポイントの再確認が、3年前2013年に開催されたTICAD Vであったと思います。そういった歴史の中で23年が経過して、今度初めてTICAD VIが場所もアフリカに移し、ケニアで行われるわけです。先のジブチで行われたSOM会合の概要を見ても、やはりビジネスを基軸とした関係強化ということが前面に出てきています。
さらに安倍総理は、現職の総理として既に2回アフリカの地を踏んでいますが、そのの度目の訪問の政策のスピーチでは、日本らしい貢献とか、日本のビジネス哲学をかなり強調していて、それがアフリカ首脳の心を打ったと聞いています。その延長線上で、TICAD VIが史上初めて、アフリカで8月27-28日に開催されます。
こういう前提を踏まえまして、主催者側の代表である、外務省アフリカ部長の丸山則夫さま、JICAアフリカ部長の江口秀夫さま、AfDBアジア代表事務所所長の横山正さまのお三方をお呼びして、ビジネス及びODAを通じて、日本らしい人材育成という観点から議論を進めていきたいと思います。それでは、早速、丸山部長よろしくお願いいたします。

パネラー:外務省アフリカ部 部長 丸山則夫氏

人材育成という観点からの話は、この後JICAの視点、AfDBの視点から、詳しい説明があると思います。私からは、このTICAD VIの中でそういった切り口がなぜ重要になってくるのかを、理解し今後の議論に役立てていただきたいので、TICAD VIは何を狙っているのか、なぜ人材育成というものが重要になってくるのかといった点について、15分ほど頂戴して、お話しができればと思います。
 本題に入る前に、アフリカ開催ということが、われわれにとってどのような意味を持っているのかということを改めて申し上げます。これまでのTICADは、ずっとホームでやってきて、温かい観客に見守られながら、みんなが応援をしてくれる中で、すくすくと育って、いい成績を残してきました。今回はアウェーです。アウェーで何が待っているのか、分かりません。それだからこそ、われわれはさらに精進をしていい成績をあげる必要があると考えています。
精進するとは何かというと、オールジャパンでやるということについて、みんなが共通の認識を持って努力をしていくことに他ならないと思います。先ほど大島理事長から、「日本らしさ」とありましたが、日本らしさというのはみんなが全員でつくり上げるものであって、政府だけでできるものではありません。また、日本の特色といったときにも、これもまたその前面に出てくるものは、一人一人の日本人、一つ一つの企業、そしてまたその総体としての文化、そういったものが関わってくるのだろうと思います。要するに、今度のTICADは、総力戦だと思っています。そうでなければ、とてもアウェーで戦うことはできません。「戦う」という言葉が正しいのかどうかは分かりませんが、日本としての存在感を高めることが、ある種の戦いだとすれば、これは総力戦だと思います。
特に、アフリカでやることになると、オーディエンスが違います。日本でやっているときは、日本の皆さんにアフリカを印象付けるさまざまなサイドイベントと、アフリカの首脳に、こんなこともやっているのだとアピールをすることの、2つの側面があったと思います。今回の場合は、後者での方であり、「日本はこういうことができるのだ」ということをアフリカにアピールする、あるいは、アフリカに対して「日本とはこうなのだ」ということをもっと裾野を広げてアピールすることが求められると思います。オーディエンスが全然違うということを認識したうえで考えるべきです。
アフリカ開催の大きなメリットは、たくさんいるアフリカの人たちを日本まで連れて来ることはなかなかできないけれど、ナイロビには来てもらえるかもしれないということです。その人たちと日本との絆を、今回このTICADをやって、プレーアップするべきだと思います。この人たちの中には、日本へ研修に来たことがある人がたくさんいるし、国費留学生だった人もいるし、海外青年協力隊員が、奥地まで入って、初等教育・中等教育もやっているので「自分は、中学校のとき日本人の先生に教わった」という人もいるでしょう。
つい最近、マラウイに行ってきましたが、マラウイの外務大臣は、「自分の中高の時の理数科の先生は、日本人だったんだよ」と言っていました。そのような人が、アフリカにはたくさんいるのです。もっと我々はこのようなつながりをPRしなければいけないと思います。それが前置きなのですが、今回のTICADで特にPRをやっていくことが重要なのは、我々が提示しようとする議題が、それにふさわしいものであると思っているからに他なりません。
今、我々が今度のTICAD VIで前面に出そうと思っていることは、大きく分けて3つあります。1つは、TICAD V以降、2013年の半ば以降に新たにアフリカが直面することになった課題です。2つ目は、このTICADは国際フォーラムですから、国際的なアジェンダをアフリカとの関連でフォローアップするということです。3番目は、アフリカのオーナーシップをさらにバックアップするという視点です。これは特に、アフリカがオーナーシップを発揮した場合には、それは大いにやるべきだと思っています。この3つの視点から、TICAD VI捉えようとしています。
もちろん、TICAD Vのフォローアップというのは、5カ年計画を立てて行っているプロセスなので、今まだその半ばの3年目です。今回アフリカと日本と交互に開催しようということになり、期間も短縮したということが1つの大きなポイントです。まだ前回TICADのフォローアップをやっている段階で、次のTICADを開催するという、これもまた大きなチャレンジに直面していることになります。ですから、TICAD Vのフォローアップが首脳レベルでしっかりと検証される、そういう場にもなると思っています。アウェーである上に、更に厳しい条件を付けながらゲームを進めていくということになろうかと思います。従って、TICAD Vのときに定めた3つの柱というのは、依然としてTICAD VIを行う場でも有効ですし、それをやりながら今申し上げた課題に対してチャレンジしていくことが、TICAD VIの立て付けになります。
TICAD V以降に新たに直面している3つの課題のうちの1つ目は、国際資源価格の大きな下落です。これは日本のみならずSOMに参加しているアフリカ各国、国際機関も含めて、関係者皆、特に重要だと考えています。これは、TICAD Vのときには想像すらしていなかったことだと思います。TICAD Vの時は、2013年のアフリカの経済は非常にすさまじい成長を成し遂げていました。少し言い方を変えると、「バスに乗り遅れるな」的な発想が全世界にありました。今は、国際資源価格の下落で、大変厳しい状況を迎えている国々があります。もちろん、プラスに作用している国もあります。ただ、産油国であるナイジェリアとかアンゴラなどはかなり厳しい状況になっていることは間違いないと思います。
そのときに、第1番目のテーマとして何を考えるべきなのか、TICADというのはOPECではないので、原油価格の議論はできないのですが、その結果として生じたことに、どのように対処するかは議論できます。我々が考えていることは、1つは経済の多角化で、農業も含みます。もう一つは産業化です。これをやることによって構造改革を進めていく、これが今度のTICADの一つの大きな柱になります。経済の多角化、産業化を進めていくと、おのずとこの中で人材育成が持つ意味が浮かび上がってくるのではないかと思います。
 アフリカが直面しているチャレンジの2つ目は、エボラです。エボラ出血熱があれだけの勢いで、コンゴではなく西アフリカで猛威を振るうということを、予測できた人はおそらく誰もいなかったのではないかと思います。その結果何が露呈されたかというと、いかにアフリカの保健システムが脆弱かということです。それは西アフリカのみならず、アフリカ全体においてです。従って、TICAD VIに課せられた2番目のテーマというのは、この保健システムの脆弱性に対してどのように対応するのか、ということです。保健、衛生、この中には、当然のことながらその前提条件にある栄養という分野も入ってきます。この分野で、日本は何ができるのかということです。
この点でも、人を育てるということの必要性があります。人を育てることとビジネスがどのように関わってくるのか、その視点をぜひ考えていただきたいと思います。保健、衛生は、エボラのときも日本の企業の皆さんの技術力が相当貢献したと思っています。それに加えて、今度はどのようにしてそれを使いこなせる人を育てていくか、ということが重要です。それから、TICADそのものは野口英世賞と非常に結び付きが深く、TICADごとに野口英世賞の受賞式を行ってきた経緯もあります。ですから、保健・衛生の分野というのは、このTICADの看板でもあるわけです。今回はそれが2番目のテーマとして、重要になってきています。
3つ目は暴力の増大に対する対策です。ISILという言葉は、2013年当時は誰からも言及されませんでしたが、今はアフリカとの関係において考えなければいけません。過激派に対して、どのようにして自分たちの若者を守っていくのか、若者、女性の強靱性をどのようにして高めていくのか、これがTICADの3つ目の大きな柱になります。
しかしながら、これも開発の会議ですから、テロ対策以上に問題にすべきことは、テロの根源にどのように対応していくのかということです。一番分かりやすいことでは、若者たちが、暴力の方向に走らないようにするためには、どのようにすればいいのか、職業訓練とか失業をしている人にどのように職を与えていくのか、といった話に直結してくる議題だろうと思っています。その意味でも、人材育成という切り口で、どれだけこのテーマが重要なのかということが、お分かりいただけるだろうと思います。
職業訓練ということでは、日本企業の場合は、ODAの案件を受注して工事をやる時に、現地の労働力を使います。労働力の水準が十分ではない場合には、まずトレーニングするところから始めます。私はそれも職業訓練の一環だと思っています。その訓練を受けた人たちの価値というのは、高まるわけです。そういった形の貢献も、職業訓練と言った時には、ぜひ思い起こしていただきたいと思います。
この3つの切り口から、人材育成が非常に重要になってくると思います。
先ほどの、もう一つの2番目の柱、国際的アジェンダとして念頭にあることは、気候変動です。今日のテーマと直接関わってくることはないかもしれませんが、COP21が終わって、次のCOP22をアフリカのモロッコでやるという時に、当然のことながらその間にあるTICADでは、この気候変動の問題に対する関心度が非常に高いわけです。特に去年、防災会議を日本でやっているので、そのときのインパクトは、アフリカから来られた首脳の方、閣僚の方にとって非常に大きなものがありました。ぜひこれを、TICADで何とかできないか、という要望があることも事実です。それに対してどのように対応するか、考えているときに、エルニーニョの大変な現象が起きて、アフリカは大変なことになっています。
私もマラウイに行って、実態を見てきました。本来洪水があるべきところで、洪水が起こらなくて日照りになり、日照りが起こるべきところで洪水が起きるという、逆転現象が起きています。だから、全然対応ができないのです。洪水が珍しくないところでは、洪水に対する対応をそれなりに考えています。ただ、通常は日照りがあって洪水のないところでは、洪水の対応ができないなど、脆弱性がよく見えてきました。その関連で、衛生問題が悪化していくという、悪循環があるわけです。この問題にどのように対応していくのかということも、おそらくTICADで十分議論すべき話だと思います。
その関連で言えば、アフリカの関心は再生可能エネルギーです。先ほどの産業化、あるいは保健もそうですが、これには十分なエネルギー、十分な電力がなければどうしようもないという話です。その中でアフリカが自信を持てることは、おそらく再生可能エネルギー分野ではないでしょうか。ただ、自信を持てるだけの土壌はあるけれど、技術がないわけです。その技術がどこにあるかというと、間違いなく日本なのです。特に、ケニア、エチオピア、ルアンダのほうに大地溝帯があって、地熱発電のポテンシャルは相当大きいです。これは、コモロのほうにまで可能性があります。そこで日本が、官民あげてどのような協力ができるのか、ケニアという象徴的な場所で、どのようなメッセージを出すことができるのか、これも重要な点だと思っています。
最後の3つ目のオーナーシップで忘れてはならないことは、アフリカが「アジェンダ2063」という、とてつもないスケールの50年の開発計画をついに打ち出したということです。これは、SDGsと密接に連携しているものなのです。TICADでは、SDGsのために何をするかということももちろんそうですが、アジェンダ2063をサポートすることによって、アフリカのSDGs達成を助けていくべきで、これをやるべきだと思っています。
以上が大ざっぱに、今の段階で関係国と議論をしながら形づくろうとしているTICAD VIの中身の話です。その中で、いかに日本らしい貢献を行っていくかということです。その日本らしさというのは、一つはやはり高い技術であり、一つはこれまでの人材育成のノウハウだと思っています。要するに、「かつて住んでいた(奥地の)故郷で中学校に通っていたときに、日本人の先生に教わった」と言うアフリカの方がいても、他の国の先生について同じような話を聞くことはあまりありません。自分の故郷でこんな国の先生に教わった、そういう話をする人がいろいろなところから出てくる。そういったことが起きるのは、おそらく日本だけだと思います。その意味でも、これまでやってきた人材育成の効果は、間違いなくあります。それを今回のTICADの時に、みんなでPRしようではないか、ということです。それから、今後の展望も含めて、おおいに活用する、アフリカの方々がたくさんいるわけですから、そういった方々に来ていただいて、「自分も日本で研修を受けたのだ」、「自分の中学校には、日本人の先生がいて、今でもあっちの中学にいるらしい」とか、そういった話をしていただくことによって、いかに日本の支援が他とは違って一人一人を大切するものなのか、心が通ったものなのか、ということが分かるのです。このような認識を通じて絆がさらに強まり、関係も強化されていくという流れになっていくと思います。

モデレーター:片岡貞治氏
政府が想定しているいくつかの課題、特にその3つの課題は全てアフリカの脆弱性につながることでもあります。それにはやはり、技術という観点だけではなく、支援ということで、例えばISILの問題とか、日本のノウハウなども取り入れてサポートしていくというお話でした。
それでは早速、その支援の観点からJICAの江口部長よろしくお願いいたします。

パネラー:JICAアフリカ部 部長 江口秀夫氏

人材育成は、大変重要な項目です。これまで、アフリカに対する支援を長年やってきて、今急に人材育成がハイライトを浴びたわけではなく、過去アフリカに対する支援、あるいは途上国への支援には、必ず人材育成の面が含まれていたということが、ある意味日本の日本らしい特徴であると思います。人材育成の事業と名打っているものばかりではなく、インフラ事業とか、あるいはJOCVの事業でも、必ず相手の誰かに、自分が派遣された国、事業を行っている国の誰かに対して何かを伝えています。それは技術であったり、労働価値であったり、いろいろなものがあると思います。そういった、人材育成の部分が必ず含まれていた、ということが日本のODA事業の一つの特徴です。
私どもはODAの実施機関ですが、ODAばかりではなくて、ODAと一体となって民間セクターの進出、あるいは経済発展の貢献という、その2つが車の両輪になることが、より明確に示されたのが前回のTICAD Vだったという指摘がありました。そういった観点から見ても、JICAのアフリカに対する姿勢も、若干変化が見られます。ODAですので、基本的には政府から政府がベースです。過去にJICAが対象にしていた人材育成というのは、基本的には官の立場といいますか、オフィシャル(公務員)や、大学の先生とか官の立場の方が中心であったわけですが、10数年前にそういう方ばかりではなく市民社会の方も一緒に研修に参加してもらうようになりました。最近は、こういったビジネス、民間セクターの支援ということで、民間セクターの人材育成を考えるのか、ということ含まれるようになったことも一つの特徴かと思います。
資料の最初に、JICAが重点的に取り組むTICAD Vの支援とあります。TICADVは、5年のコミットメントですから、現在はTICAD Vの期間でもあるし、これから3年間がTICAD VIの期間でもあるという、2つ重なった期間です。5年間しっかりやって、日本は約束を果たすということで、これまでの信頼を勝ち得てきたので、経済、社会、平和と安定といった項目に対してコミットメントしながら、コミットメントしたことについては確実にやっているということです。
この中で、特に「強固で持続可能な経済」という項目の中に、経済発展のためのいろいろな項目、要素、柱が書いてあり、今JICAとして現地で事業をやっています。TICAD VIの中では、新しいテーマとしての産業化あるいは工業化というようなテーマ、あるいは保健のテーマ、暴力的な過激組織を抑止するためには、ジョブ、雇用をしっかりしなければいけないということを含めながら、今、産業育成を考えようとしています。
その次のページを見ていただきますと、真ん中に経済成長があります。経済成長を促す4つのアプローチということで、政策支援、人材育成、インフラ整備、ビジネス環境整備というような、4つのアプローチをJICAとして考えていて、それぞれの取り組みを行っているところです。民間セクターの方が、アフリカに進出したり、投資をしたりする場合には、いろいろな検討項目があると思います。やはり観点とすればインフラ、制度、人材、治安といったことが、ビジネスとして進出するかどうかを判断する、大きな要素だと思います。今日は特に、その中でも人材育成、この図の中では②について、中心にお話をさせていただきます。
その次のページでは、JICAの考え方を整理したもので、「産業人材育成の地域別方針」とあります。これは世界経済フォーラムの国際競争力に関するレポートの中に、世界の競争力のデータが出ていて、国際競争力は、国家の生産力のレベルであるという定義になっており、いろいろなインデックスを使ってランク付けをしたものです。それが1個、2個上がったかということは、あまり気にしなくていいと思いますが、日本は一応6位に入っていて、競争力が非常に高いということになっています。その中に、「教育」という項目があり、世界のランク付けがされています。これを見ると、アフリカは赤と白になっていますから、非常に下位のところにあって、教育レベルあるいは職業訓練のレベルが、まだまだ十分ではないという位置付けです。
産業人材の観点ではアジアのほうが、比較的、高等教育、職業訓練の制度が進んでいるので、アジアに対する取り組みと、アフリカに対する取り組みは少し違ってもいいだろうと分析がなされています。
全般的に見ればここに書いてある通り、雇用創出のための企業家育成、労働者の技能向上が必要ということですが、アフリカも非常に多様なので、国によってレベルはだいぶ違いますし、それぞれの取り組みが一様ではないというのがアフリカの現状だと思います。
また、日本の企業の関心の度合が違うので、54か国の一律な取り組みではなく、国に応じたさまざまな取り組みが構想されると思います。全般的に見れば、アジアよりは段階的に、まだまだこれから取り組みが必要な分野ということになると思います。
そして教育というのは、なかなか時間のかかることです。ほんの少しの取り組みでがらりと劇的に変わるわけではなくて、非常に長い取り組みが必要だと思います。また実際、日本のODAでの人材育成の取り組み、教育の取り組みというのは、非常に長くやってきています。これから実例をお話ししますが、継続的に、粘り強く取り組むということが一つの日本の特徴でもあるかと思います。
教育をごく普通に考えれば、自分が受けた通りに、次の世代にも受け渡すということが一般的です。就業前教育でも、企業内での人材育成でも、教わった通りを次の世代に受け継ぐので、これを変えるためには大きな力や、モデルを提示して外的な力として介入するというような取り組みが必要だと考えています。
さて、アフリカの人材育成に関しての方針ですが、今日は4つの柱としてお話ししたいと思います。1つが、「中堅技術者の育成」。2つ目が、「日本にとってのビジネスパートナーとなる企業家・経営者・エンジニア・中間管理職等の育成」。3番目が、「日本企業との協力・連携」。4番目が、「基礎学力の向上」ということです。
それでは、次のページから順番にお話しいたします。中堅技術者の育成に関しては、TICADの中では「産業人材育成センター」という打ち出しを行いました。さらに次のページには、各国に人材育成を行う拠点をつくるということで、3つの箱の図を示しています。真ん中がその対象となる人材ですが、ご覧の通りいろいろな人材を育成する必要があります。この産業人材育成の中では、特に中堅技術者をどのように育成するかを、赤い字で書いてあります。このアプローチとしては、出口のある教育、すなわち、実際に教育の訓練が終わった後にきちんと職に就けるようにするということです。
これは、産業界が必要とするスキルを持っている人材をつくろうということですので、理論ばかりではなく、実務教育とか実学教育を含めての教育をしようということで、大学、技術短大、あるいは職業訓練センターなどが対象となるアプローチです。
それからもう一つが、在職者向けの人材育成です。これは日本のコンセプト、あるいはフィロソフィーである、「カイゼン」をキーワードにした、企業内人材育成へのアプローチになります。対象国はここに書いてある通りですが、日本企業の関心が比較的高いところを選んでいます。
実例として、ウガンダの産業人材育成センターを1つご紹介します。ナカワ職業訓練校には、非常に長い期間にわたり支援を行っており、産業界のニーズに合わせた技術を教えています。一般的なアフリカの職業訓練校というのは、いったん設立されるとずっと同じ教育ばかりをしていて、いろいろな技術革新についていけず、現在必要とされているようなスキルではなく、何十年も前のことを同じように教えているという実態があります。これに対して、産業界のニーズに合わせてカリキュラムを組んで、あるいは機材を更新して、スキルを身に付けるようにする、ということを中核において訓練を行っているところです。ここを卒業した学生が就職をしたり、あるいは自ら企業を立ち上げたりできるように学生に指導し、その訓練校の業界対応能力を高めていくことに協力しています。
「3.」に、「日本企業との連携」とありますが、日本企業が必要とする人材像が、きちんと訓練プログラムに反映されるような形にしていきたいと考えています。お示ししているのは、自動車の訓練コースを、日本の自動車メーカーの協力を得て、実施している事例です。
次のページは、エジプトの例で、エジプト日本科学技術大学(E-JUST:Egypt-Japan University for Science and Technology)です。これは、高等教育機関であり、より高度な人材を育成する事業として位置付けており、日本の大学のコンソーシアムで、大学院教育レベルの高度な人材の育成を行っています。特に工学系の人材を対象として、ここに書いてある幾つかのコースに対して協力を行っています。このエジプトの大学を拠点として使い、アフリカ各国とのネットワーキングも考えながら、アフリカの人材の育成をしようとしています。
その他にケニアのジョモケニアッタ農工大学という、非常に長い歴史のある大学への協力も行っています。ジョモケニアッタ農工大学と、エジプトのE-JUSTがコアになって、今、アフリカの高等教育人材をどのようにネットワークしていくかを構想しているところです。この2つの事例は、いわゆる出口のある教育です。ここを卒業した人が、人材として職を得ていくというパターンです。
その次のページでは、カイゼンに関するものです。特筆すべきは、エチオピアにあるカイゼン機構という新しい組織です。このカイゼン機構が、エチオピア国内のさまざまな企業に対してコンサルティングサービスをします。カイゼンのフィロソフィーを現地でトレーニングしながら、エチオピアの民間企業の労働生産性を上げていくというような取り組みをしています。
特に皮革、革製品の製造工場などで、このカイゼンの導入によって不良品の率が非常に下がるとか、作業効率が上がるとか、労働効率が上がるというような成果が出ています。今、このカイゼンが、エチオピアの中で非常にブームになっている状況です。こういった成功体験をアフリカの中で共有したいと思っています。
次のページでは、幾つかの国でカイゼンの事業を行っているところをネットワーキングしながら、進めている様子を示しています。54カ国あるので、われわれが効率的にやるためには、一つ一つ全部、同じように、同じものを、同じプロジェクトをやっていくのではなくて、1つのモデルをつくり、そこをコアにしながら周りの国で同じような取り組みをして、アフリカの中でのネットワーキングを行い、事業展開をしていきます。
アフリカの中でネットワーキングをすると、アフリカの中で学び合う、教え合うことが生まれ、いろいろな考え方が出てきます。カイゼンは日本のオリジナリティーであっても、アフリカのローカルなコンテクストに合わせて、アフリカの皆さんが議論し、自分のところではこういうことをやっている、あるいはこういう取り組みをしているという経験のシェアをします。それを通じて新しいナレッジが出てくるということが、ネットワーク型の協力であり、カイゼンという一つのコアのコンセプトをもとに、アフリカの中で彼らのネットワークをつくろうとしています。
 この取り組みがあって「カイゼン」は、今、アフリカではキーワードになっています。これは日本らしい1つのコンセプトですが、これを広める努力をJICAとしても推進していきたいと思います。カイゼンというのは、多くの日本の企業ではすでに内製化され、現地に進出した時にも自社の取り組みとしてやられているのではないかと思います。
さてその次が、ABEイニシアティブです。TICAD Vのときに、アフリカから1,000人の優秀な若者を呼んで、日本のビジネスとアフリカのビジネスの関係を深めて、水先案内人にする、日本の企業の先兵ということで経済成長を促していく、ということでアフリカ・ビジネス・エデュケーション(ABE)が始まりました。基本的なプログラムは、日本での修士課程に入って、2年間の留学で修士を取るというものですが、その滞在期間中に日本企業へのインターン・プログラムが含まれています。日本の大学で勉強するだけではなくて、日本のビジネスがどのように行われているかという、現場体験をしてもらうプログラムが組み込まれています。これまでにない新しいユニークな取り組みです。
2014年に始まり、第2バッチまで来日しており、現在およそ460名の研修員を受入れていますが、今年の9月に第3バッチとして、更に300人くらいの来日が見込まれています。日本の多くの大学と企業に協力をいただいて実施しています。自社人材の育成の一環として、日本企業のアフリカの拠点から推薦をもらい、このプログラムによって現地の社員を日本に送り、日本の大学で修士を取って、推薦企業でのインターンシップをしながら実務的な人材育成をやり、帰国して、現地で中核人材として活躍いただくということが可能です。
 民間だけではなく、途上国の政府人材もいますので、その人たちには、産業発展のプロモーションをしていくための制度づくりを学んでもらうことになります。また、人脈づくりも大事なことであり、ABEイニシアティブは、人材育成プラス、人脈形成という2つの面を持っていることが、このプロジェクトの特徴です。
ABEイニシアティブの活用事例は、後ろのほうに幾つか載せています。日本企業の工夫と、ニーズに合わせることで、いろいろ使い勝手があると思います。事例をお読みいただくと、さまざまな活用の仕方があることがお分かりいただけると思います。それは2ページに書いてあります。
 もう一つ特徴的なことは、資源の人材育成ということで、特別な名称を付けて、「資源の絆」という形でやっています。資源開発とか地熱の開発とか、こういった非常にスペシフィックなテーマで、特殊なプログラムを組んでいます。これは秋田大学、九州大学のご協力を得ながらやっています。日本の資源獲得とか途上国の資源開発による経済発展を狙っているプログラムです。
 このように日本での留学経験を通じて、日本の民間セクターとの関係を強め、途上国の経済発展に協力し、日本の民間企業の進出の手助けになるような形のプログラムです。その次に幾つか事例が載っておりますが、省略いたします。南アの大学での例などが、ここに載っています。3枚ほど飛ばして、「基礎学力の向上」です。これまで述べた人材育成というのは、これから職を得ようとか、すでに働いている方への取り組みですが、そうした人材を生み出すのは基礎教育であり、特に理数科分野での協力について1枚絵を付けました。
 理数科教育では、長年、青年海外協力隊の人たちが現地の小学校や中学校へ派遣され、教育の手助けをしてきました。特に、理数科教育には長い歴史があり、それの発展形として、教員養成を中心とした教員訓練、教員研修を中核の授業に据えた、理数科教員支援プログラムがアフリカでは行われています。特に、98年くらいからケニアで始まった理数科教育プロジェクトを中核として、多くの国が日本のこの支援のベネフィットを受けていることになります。このように日本は、基礎教育から中等教育、高等教育、職業訓練、在職者訓練など、あらゆるレベルでアフリカに対する人材育成をしています。
最後に、多くの民間企業の方にも出席いただいているので、ABEイニシアティブをぜひ活用いただければと思います。協力企業として登録いただくとABEに関する情報がきます。資料に、「(登録しても)インターン生受入義務等はありません」と大書きしてありますが、私としてはぜひインターン受け入れにもご協力いただきたいと思います。もちろん、義務としてではありません。日本の企業に、アフリカのこれからの新しいリーダーたちを受け入れていただくことによって、日本企業にも刺激になるし、これから進出しようという場合の現地の代表とか、あるいは現地でのいろいろな情報を入手する機会になるのではないかと思います。ぜひご活用いただければと思います。

大島理事長
日本アフリカ連合友好議連の衆議院議員、三原朝彦先生にご出席いただいております。ご出席いただける時間が限られているように聞いていますので、ひと言激励なり、ご挨拶をいただければと思います。

三原朝彦 衆議院議員
私は、アフリカが大好きで、ここにおられる高倍大使、橋本大使にも現地でお世話になりました、ありがとうございます。
今、JICAの江口さんが言われたように、安倍総理が初めてアフリカに行かれて、ABEイニシアティブというものをつくられて、もっとアフリカにエネルギーを使おう、特にその人材を向こうからも得るし、こちらからも出していかなければいけないという、確固とした信念がおありになりますから、ABEイニシアティブでも100億のお金を出して1,000人のアフリカの人に学んでもらって、私から言えば江口さんはお役人なので言いにくかったのだろうと思いますが、日本の企業の先兵になってもらいたいと私は思っています。
アフリカに足りないものは、やはり技術とお金です。その両方を日本が補完して、人材は本人も磨くでしょうし、日本に来て磨いてもらい、そして活躍してもらう、そして日本もウィンになる、向こうもウィンになるのです。日本の企業も国内だけでやっていても、縮小傾向しょう。だから勇気を持って向こうで大いに投資をしてもらって、事業を拡大してもらいたいのです。そのことが、実はアフリカにとっても大いなる刺激にもなり、雇用のチャンスにもなり、社会向上、経済向上のもとになると私は信じて疑いません。
生意気な言い方をしますが、日本のこの繁栄を、今まで歩んできた人生に余裕があるのであれば、少しでもその余裕がある分を、これからの国にエネルギーを使ってもらいたい、それが私がみんなに問いかけていることです。
政府、または議員の同僚にも声掛けをして、少しでもアフリカに興味を持って、そしてアフリカの人がより人間的な生きざまができるように、生意気な言い方ですが、「もし、われわれがお手伝いできるのなら、こんないいことはないじゃないか」と言って、声を大にして広げている次第です。皆さま方にも、さらに協力していただければと思います。

モデレーター:片岡貞治氏
三原先生、どうもありがとうございました。それでは、プレゼンテーションに戻ります。続きまして、アフリカ開発銀行の横山所長、よろしくお願いいたします。

パネラー:アフリカ開発銀行アジア代表事務所 所長 横山正氏

私は、以前より、人材育成の重要性を痛感しております。人間というのは、例えば、赤ちゃんは、お母さんの写真を見せられても、実物のお母さん程には反応しないということを聞いたことがあります。人間は、赤ちゃんの時から、実際に会っている人間のことをよく認識し、また、それを記憶に残すように脳が作られているということだと理解しています。ODAでも、目に見える支援ということがいわれることがあります。例えば、食糧難の人にお米をあげる、小麦をあげる、それに対し、支援を受けた人は、支援物資をもらって嬉しいと思うのですが、食糧袋に「From People of Japan」とか、日の丸がプリントされていても、多分10年後には、日本からの食糧支援であったということは記憶に残らず、その食糧を手渡ししてくれた人、例えば、手渡してくれた外国人の顔が強く記憶に残るのではないかと思います。
私が外務省に出向してODAの担当課長をしていた時も、実際に人が相対で支援をすることが、最も目に見える支援であるして、なるべく、日本人に出て行って欲しいということをお願いしておりました。かつ、単にフィッシュを配るのではなくて、ハウ・トゥ・フィッシュ、どのようにしたら自分が生きていけるのかという方法、例えば、作物の育て方や、ものの作り方等を教えると、多分、絶対に人は忘れないと思うのです。人材育成というのは開発効果も高く、絶対に忘れないという点で重要だと思います。
昨日、AU議連の会合に本日ご臨席の三原先生にご案内いただきました後、千代田線で自分の事務所まで戻りました。千代田線の国会議事堂前駅のエレベーターで下がって行きましたら、たまたま私の大学の恩師の岩井克人先生が、エレベーターで上がって来られたのです。私は、その後、急いでエレベーターをかけ上がり、先生にご挨拶いたしました。もう退官されており、仕事上のつながりもない方ですが、私が50歳を過ぎても、エレベーターをかけって上がってこの先生と話をしたいと思うのは一体何なのだろうというと、やはり高等教育で自分にいろいろ教えて下さった人というのは、恩師であり、感謝なりなんなりなんであろうと感じました。こういうことは絶対忘れないということです。人材育成というのは非常に重要だと改めて実感させられました。
外務省にいた時に経験した事ですが、東南アジア諸国に行って、日本留学経験のある高官等とお会いすると、その方々は、自己紹介の中で、日本のどこの大学でこういうことを教えてもらったと必ず仰るのです。JICAや文科省の研修、留学で日本の大学で研修、学んだ人は、絶対にそれを忘れないのです。日本から質の高いインフラ輸出の重要性が指摘されておりますが、質の高さについては、向こうがスペックを評価してくれないと活用されません。そのスペックを評価する人は、基本的に政治家ではなく技術者です。特に、技術者で日本の技術等の高さをしっかりと評価してくれるのは、JICAのプログラム等で日本の大学院等で学んだ人たちです。私も、モンゴルやインドネシアで、そのような話を聞きました。
ただ、アフリカ開発銀行は、マルチな機関であり、バイの支援機関とは全く異なりますので、そういうような日本的な良さは、あまりストレートに反映することができません。後で若干説明いたしますが、日本の協力によって、ある程度日本の良さを活用させていただこうと思っています。
では本題に移ります。まず、最初に当行のアフリカ開発に向けた取り組みの全体像をご説明いたします。アフリカ開発銀行には10年間戦略という長期戦略があります。インクルーシブでどんなに貧しい人でも経済成長の恩恵を得られるようにするため、また、サステーナブルで、グリーン成長というように、環境への負荷が少ない成長にするための10年間の開発戦略です。
昨年、当行では、アデシナ新総裁を迎え、また、戦略開発目標やCOP21の合意等々を踏まえ、当行の10年戦略で取り組む分野のうち、5つの分野を優先課題として取り組むこととしています。その5つとは、エネルギー(特に電力)、食糧・農業、地域統合、工業化、生活質の向上です。この中で電力というのは、すべての分野に共通する必要なインフラであり、非常に重要だということで、優先度が一番高くなっています。
教育も非常に重要ですが、電力へのアクセスは教育にも関係します。例えば、アフリカの多くの小学校、中学校、高校では、天気が悪くなると黒板が見えにくくなります。なぜかというと、電気が来ず、室内照明がないからです。パソコンを使うにしても、電力が不可欠です。教育に電力は不可欠ということです。また、いろいろな問題を解決するにあたって、産業化が重要で、これが進まなければ雇用も増えませんが、産業化にも電力は不可欠です。
このような問題を一体的に解決しないと何が起こるかというと、アフリカの人たちが困るのは勿論ですが、日本を含め世界が憂慮する事態となりかねません。アフリカの健全な発展というものが、21世紀におけるグローバルセキュリティーに直結しているということです。例えばアフリカの人口が2050年には、22~23億となり、今の中国とインドを足したくらいの人口になってしまいます。今でもアフリカは食糧の純輸入地域ですが、2050年には人口が2倍以上に増えてしまい、今世紀末の2100年には、世界人口の3人に1人か、2人に1人はアフリカ人になるという予測ですから、食糧増産をしなければ、世界の食糧事情はひっ迫して大変なことになります。日本も食糧輸入国なので大きな影響が及びえます。
丸山部長のお話のように、若者がどんどん増えていく中で雇用を増やしていかないと、現状で既に問題が顕在化しておりますが、職が得られない若者、貧困や格差にあえぐ若者が社会に不満を持ち、テロに走る誘因を更に与えることになりかねません。また、エボラ出血熱のお話がありましたが、エボラや未知の疫病の伝播リスクにも対応していかないと、日本を含め世界に伝播しかねず、大変なことになります。
その中でも、一定のレベルの教育、経験を積んだ人材がいないと、雇用しようにも雇用できません。例えば、この間中国に出張に行った時に、中国の人たちは、「アフリカでビジネスをすることは難しい」と言っていました。その理由の1つは現地の教育水準、労働の質が期待に満たず、雇用したくても雇用できないので、中国人を連れて行かなければならないということでした。ちなみに、2つ目は、腐敗がひどすぎるということでした。かなり昔の中国では、地方でも相当腐敗があり、その環境の中でビジネスをやることに慣れていたが、腐敗環境が改善され、現在のアフリカの環境に対応するのは容易でないとのことでした。ともかく、人材育成は非常に重要だということです。
私たちアフリカ開発銀行は2014年に、「人的資本戦略」を2014~2018年のタームということで採択しています。その中で焦点となっているのは、基礎教育というよりはインフラ、天然資源管理など、産業に関係するものです。あと、化学、技術、工業、数学を重視しています。また、「TVET」と書いてありますが、産業、職業に関連するものにより力を入れていこうということです。
具体的な人的資本戦略のアプローチについては、資料8ページ目にあります。サービスへのより多くの投資とか、より高度な説明責任、より高い費用対効果を目指すということです。すなわち、より付加価値の高そうなところへ貢献していくということです。
次の包摂性および社会的一体性というのは、単なる教育だけをやっても駄目ですよということです。例えば、ご飯もろくに食べられないような家庭が多いところでは、教育を受けさせる余裕はないということで、教育だけではなくてより広い意味で開発が必要だということです。あともう一つは、日本にあるUNU(国連大学)、パンアフリカン・ユニバーシティー、そういうような高等教育機関とよく協力していかなければいけないということです。そういう中で、アフリカ新教育モデル、NMAというのが9ページに紹介されています。そして、我々の戦略の実施に当たり、労働市場との連携でやりましょうとか、民間セクターを利用しましょうとか、ICTを活用しましょうとか、いろいろなことをやっています。
11ページ目に、日本的な良さを生かしつつ、私どもがご協力しているプロジェクトがあります。これはESDA、Education for Sustainable Development in Africa というものです。これは、大島大使が深く関与された、2008年のTICADのフォローアップ事業として始まったものです。国連大学等が頑張って、3つの分野、具体的には12ページ目に書いてありますが、持続可能な都市開発、アフリカの農村地域の持続可能な総合開発、持続可能な鉱物資源開発分野で、アフリカの8大学が手を挙げて、修士プログラムをつくろうということになっています。そしてアフリカ開銀は何をやるかというと、日本政府信託基金、これは財務省がお金を出していますが、そこのお金を使ってカリキュラムづくりをお手伝いするということになっています。今月の初めにそのプロジェクトが承認されて、TICAD VIに向けての私どもの一つの貢献ということになっております。
JICAがやられていることは、基本的に日本に呼んできて、いろいろ顔の見える支援を行っていますが、当行としてはアフリカにおいて、アフリカの人たちの水準を上げていこうというプロジェクトを行っているということです。このプロジェクトがうまくいくと期待しているのは、この8つの大学が全部自分でやりたい、できれば自分の金でもやりたいくらいだ、というくらいに自分たちにやる気があって、自分たちのイニシアティブ、オーナーシップがあるプロジェクトであるからです。8大学で年間100人ずつ入学させて、2年間教育を受けて100人ずつ卒業生が出ます。ここの3つの分野、農業、都市部問題、鉱山、各分野で修士が毎年100人ずつ生まれていきます。そのプログラムの中で、例えば日本だと東京大学、横浜国立大学、名古屋大学、九州大学、そういう大学がこのプログラムのご協力をするということになっています。
当行としては、全体で年間7,000~9,000億円のオペレーションをやっていますが、教育分野には大体500億円くらいお金を使っています。7,000~9,000億からすると小さいのですが、教育セクターは重要であり、アフリカの人材育成のために私どもも引き続き尽力してまいろうと考えております。

モデレーター:片岡貞治氏
以上で3つのプレゼンテーターによる発表が、それぞれの機関からの視点でTICAD VIに向けて何をやろうとしているのか、というようなお話しがなされました。そろそろフロアをオープンにしたいのですが、3時半くらいの終了を目途にしておりますので、これから45分くらい質疑応答をしたいと思います。
もちろん、ビジネスと人材育成という観点に関わる質問のみならず、TICAD VIに関わる質問も受け付けたいと考えております。フロアをオープンにしますが、質問者はまず所属と名前をお願いします。コメント、質問、あるいは何でもいいのですが、プロポーザルがおありの方、挙手をお願いします。どうでしょうか、名簿がございますので、勝手に指名させていただきます。丸紅の宇崎さん、いらっしゃいますか?よろしくお願いします。

宇崎雅雄氏(丸紅株式会社)
丸紅の宇崎と申します。お話をいろいろとありがとうございました。今、聞いておりますと、やはりオーナーシップという話がありました。そともう一つ、エチオピアでのカイゼンの話ですが、これもエチオピアの政府筋が非常に熱心だと聞いております。どうしてもそのへんは、こちらから与えるだけではなくて、向こうをうまくインボルブしていくことが必要だという気がいたします。それについて、今後の取り組みはどのようにしていくのか、ということを少し考えました。民間ということで、この中でも出てきましたが、民間としてはやはり自分の会社の利益になることをまず考えますので、その枠の中でやれることはやっていると考えております。
例えば、自社のグループ企業の社員、従業員を本社へ呼んで研修をするなどは、すでにやっております。それから、人材ネットワークについてですが、知日人材、親日人材を、アフリカの中でどのようにネットワークプラットホームとして構築するのか、これはすでに東南アジアでは経済産業省がやっていると思います。そのへんは、どのようにされるおつもりでしょうか。少し質問というか、コメントみたいな感じですが、これで終わらせていただきます。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございます。これは、全員に対する質問ということでよろしいでしょうか。それでは、早速、丸山部長よりよろしくお願いいたします。

パネラー:丸山則夫氏
おそらくは、今おっしゃったいくつかの点はとても重要なことですが、これをどのように具体化するかということは、私にとっても一番大きな関心事項です。
2番目から始めますと、利益となる枠内において、今やるべきことをやっていらっしゃるということは、大変結構なことです。その中でそのグループ企業の方の、いわゆる能力というのが高まっていて、そこでその人たちが非常に高い、ある意味ではトレーニングを受けるという結果が出ているわけです。私はやはりそういった人たちを、もっといろいろな方面で育てていってほしいという感じがします。もちろん、その人の利益になることの範囲というのは、なかなかこれは難しいかもしれません。そこを拡大解釈していくような利益のあり方があるような気もいたしますし、最初は自社から始まったけれど、あまりにも評判がいいのでもう少し広げてみよう、ということになれば、これはもう立派な地域への貢献になります。また、社会貢献という面からしますと、こういった切り口があるような気がいたしました。
それからもう一つは、3番目の知日人材のプラットホームのつくり方ですが、私はいろいろな切り口があると思っています。まずはとにかく、国費留学生をしっかりとした形で捉えていく必要があると思っています。そのトレーシングは、本当にしっかりやらなければいけないと思っています。これはJICAの研修生もしかりで、長期研修のみならず短期研修についても、そういう点で考えていく必要があると思っています。
それとできれば、これはまた大変なことですが、JOCVの隊員の皆さんが関わってこられた当時の小学生、中学生がその後どのようなところにいったのかということも把握することです。今回、私が出張に行ってみて、外務大臣まで出ているような国もあるわけですから、そういった点についても何かうまくフォローする仕組みをつくる、そこから始まっていくと思っています。
今、1つの可能性として、国費留学生だった人で、ガーナ大学の副学長になっている人がいます。ガーナ大学はコフィー・アナンが学長ですが、名誉学長のような位置づけであり、実質的にはその副学長が学長職です。彼はこういったことにひと肌もふた肌も脱ぎたい、という意識を非常に強く持っています。このような所から、しっかり固めていくことが必要だと思います。
その時に、ネットワークでいえば、大学間のネットワークも使えるし、教育機関でいえば、その大学と日本の大学とのネットワークの中に、それを入れていくことで、しっかりとしたものができるのではないかと思います。単なるOB会とか、同窓会ではなかなか機能しないので、実際に、お互いに仕事の関係でつながりがあるようなところに、そういう要素も入れながら持っていくことが、機能するプラットホームになるという気がしています。
それから、一番初めに戻りますが、先方をうまくインボルブするということは、これは当然のことです。ただ、その「うまく」ということでは、これはなかなか知恵を絞らなければいけないし、彼らにとっては、ある意味関心のある事項に集中できるかどうかということに関わってくると思います。カイゼンの話にしても、エチオピアの風土にはぴったり合って、これは本当に放っておいても彼らがインボルブされて、自分たちのこととしてやっていくわけです。
これが例えば、フランス語圏のアフリカのどこかで、うまくいくのかということになると、これはまたハードルが1つ高くなっていきます。なぜかというと、そもそもわれわれの言葉の問題が出てくるかもしれません。そういったことを含めての解決策というのは、私は今即答するものはありません。向こうのニーズを常に見ておく必要があるし、何が向こうにとってこれはウィンだと思わせるのか、ということが重要になってくると思います。

パネラー:江口秀夫氏
自社でも人材育成とか、スタッフに対する訓練をしていることは、大変日本らしいと思います。欧米の場合では、人材は取り替えが効くというか、パーツとしてより高いスキルのある人を替えればいい、という面が見られるのに対して、日本は自分のスタッフとして社内訓練をする、そういった投資をして人材育成、能力開発をするということは、大変日本らしい企業の取り組みだと思いました。
しかし、現地になかなか教育機関がないということもあり、われわれが支援しているような職業訓練センターでも、ショートコースで何らか民間企業の方にも役に立つようなプログラムを提供するようなことも、実際にはあり得るのではないかと思います。
それから、トップリーダーの関与が大変重要だということは、おっしゃる通りです。エチオピアの場合は、首相が日本の「カイゼン」というコンセプトに対してコミットして、応援してもらっているという要因が背景にあるということは、大変すばらしい事です。われわれもいろいろなプロジェクトをやりながら、政策レベルでの打ち込みということを考えていて、成功した後、そのモデルを見せて関係省庁の大臣や次官に報告をしますし、あるいは、そういう方に国際会議などで、自分の国の成功事例として、大臣に語ってもらうような機会を仕組んで、より一層意識を高めていくというようなこともやっています。
そういったことをアフリカの中でどのように広げていくのか、という指摘もあったかと思います。まず、TICADというフレームワークが5年おきにあります。このTICADというイベント自体が、国のリーダーが集まり、一緒に大臣やいろいろな人たちも来て、これからは民間企業の人たちも集まる形になると思います。ある意味でこのイベント自体、またプロセス自体が、オープンなイノベーションの場であり、つまり、日本の優れた実践を提示して、いろいろな人に共有してもらい、自分のところでもできるか検討する、そのような機会を提供するという側面があります。TICADは、非常に丁寧にプロセスであり、フォローアップをして、毎年閣僚会議をやってレポートを出す、ということをやっているので、成果が必ずフィードバックされるような大変優れた取り組みだと思います。そして非常に丁寧な対応をしていることが、相手に対して着実なものになるという取り組みではないかと思います。
知日人材、親日人材のネットワークを、より強くしていこうということは、今われわれも考えているところです。ABEイニシアティブなどの事例ですと、日本滞在中には日本の企業の皆さまとのネットワーキングの機会を設けたりしており、帰国後も同様の活動を進め、研修員と日本企業の関係を深めていきます。これから1,000人の若者が4年間で来ることになっていまして、ぜひ拡充、継続したいと思っていますが、こういった人材が、今後アフリカの中で日本との関係を強固にしていくためには、やはり働きかけがないといけません。自然体ではなかなか動かないので、働きかけをしていきたいと思っています。

パネラー:横山正氏
アフリカ諸国としては、とにかく、日本の企業にどんどん出てもらい、社内教育、技術移転による能力向上を期待しておりますが、それに加え、カイゼンの文化、職業倫理観について、アフリカの労働者に教えていただくことを、非常に重要視しています。
 課題としては、高等教育を与えてそれなりの能力が出てきた場合、活躍の場がアフリカにないので、結局国外に流出してしまうことになると、それでは意味があまりありません。いかに働く場を現地で確保するのか、例えば日本の企業が、現地で雇用の場、活躍の場を提供することができれば、それはいいと思います。これが課題だと認識しています。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございました。それでは、もう一度大島理事長どうぞ。

大島賢三理事長
今の人材育成の成果が、具体的にどのようになっているのでしょうか。アフリカから、日本の大学やJICAの研修なり、ABEイニシアティブで来て、そして帰国してその後どのようになっているのか、というあたりのトレーシング、これをもう少し日本全体として強化する必要があるのではと思います。
 私が知っている範囲でいえば、例えばジョモケニアッタ農工大学は、ゼロから大学をつくって、一定の理念を持って、もう20何年かになると思いますが、相当な数の卒業生が出ているわけです。そういう人たちがみんな知日派で親日派なのかどうかは別として、そういう日本の支援でできた教育機関でどのような人が育って、どのような方面で活躍しているのかといったあたりのファクツを、それなりにきちんと把握しなければいけないと思います。やりだせばきりがない話かもしれませんが、そういうトレーシングはやられたらと思います。丸山部長も、そういうことで言われたと思います。
ただ、そのために日本の態勢が対応できるようになっているかというと、JICAはJICAで、プロジェクトを動かすことで精いっぱいです。とても、過去JICAの研修員で来た人たちをトレースできるかというと、同窓会組織である程度やっているようですし、一定の予算を使って努力はしているようですが、じゃあ文科省の国費留学生で来ている人はどのようになっているのか、経産省はまた経産省でやっているようですが、オールジャパンとして日本の支援の結果、どこでどのような人材が訓練されて、その後どうなっているか、もう少し組織的に体制を強化してやるべきだと思います。それには個人情報が絡んで微妙な問題もあるかもしれませんが、例えば進出を考えている企業に、適当な範囲、適切な範囲でデータを提供することも、悪いことではないと思います。
しかし、そういうことを組織的にきちんとやっていくための体制が、残念ながら今の日本にはありません。これからABEイニシアティブも続くわけですし、いろいろ説明いただいた話がこれから続くわけです。そろそろこの体制を日本側につくって、オールジャパンとして、データのフォローアップとデータの整理を真剣にやることを、しっかりやらなければいけない。これをやらないと、人材育成でいろいろなことをやっていくといっても、目標がはっきりしないところに手をどんどん突っ込んでいくことになります。
JICAの説明にあったようなことは、非常に立派なことだと思います。同時に、すでに今まで長くやってきていることなので、ぜひ体制の強化をオールジャパンとしてやって、意味があり価値がある仕組みを、考えていかなければいけないと思います。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございました。先ほど横山さんからもお話がありましたが、せっかくABEイニシアティブとして育てても、アフリカに帰って、アフリカの雇用創出の為に、アフリカで働いてもらわなければ困るわけです。それがいつの日か、何年か後にブレイン・ドレインで欧米などに行ってしまったら、何のためにやっていたのかということになります。ぜひ、そういう意味でも、人材育成の先を見据えた手当ができればと思っています。
さて、それでは改めてフロアを再オープンします。安倍総理のスピーチでも、女性のエンパワメントということも言及されていたので、ぜひ女性の方に質問をしていただければと思います。女性限定ということで、誰か女性の方挙手をお願いします。お名前とご所属もお願いします。

村上純子氏(アライアンス・フォーラム財団)
アライアンス・フォーラム財団の村上と申します。JICAの江口部長に、質問がございます。プレゼン資料の、日本企業との連携、ということをあげていらっしゃって、幾つか事例もあげていただいています。これは、アフリカに中小企業が進出した際に特定の国で、特定の分野で、自社の事業に関わるグループの人たちの技術、能力を底上げしたいという要請があった場合、そういうことに対応できる仕組みをJICAさんでお持ちなのでしょうか。

パネラー:江口秀夫氏
このプレゼンの資料で、私が(発表を)飛ばしてしまったところですが。アフリカの民間ビジネスの振興には、日本のさまざまな民間セクターの方の進出が大変大事だと思います。JICAにも、民間連携事業として、中小企業、中堅企業を対象にした、幾つかの支援プログラムがあります。
いろいろな技術やノウハウを持っている企業に対して、現地での実証調査をするとか、基礎的な調査をするということを支援するプログラムがあり、これに応募いただけます。その中で、自社のサービスあるいは製品が現地で活用可能かどうか、ということを調査いただくことができます。実際にアフリカに進出したり、ビジネス、サービスを展開しようという場合、日本から人材を全部連れていくわけにいかないとすれば、現地の人材をどのように採用したり、育成したりするかということを検討することが、必要になってきます。その過程で、JICAが持っている事業を活用していただく可能性がいくつかあると思います。例えば、職業訓練センターだとか、カイゼンセンターなどと連携して、自社の事業展開に必要な人材の育成をそこに委託し、ある程度のコストは支払うことにする。そういった形で現地にあるJICAの支援している公的機関が、産業育成や産業発展のためのプログラムとしてサービスを提供するのであれば十分できると思います。
例えばケニアのエムペサというサービスでは、携帯の会社が、小規模金融で、携帯電話でお金を引き出せるというサービスがあって、全国にブランチがあります。このサービスを提供するために、携帯電話会社が相当な人材育成をやったようです。この事例のように、企業が展開、拡大しようという時に、現地の公的機関が人材育成をお手伝いする余地は十分あると思います。実現においては、現地でいろいろ協議をしながら、ということになると思いますし、ある一定のコストをお支払いいただくようなことがあると思いますが、可能性としては十分にあると思います。

モデレーター:片岡貞治氏
江口部長、ありがとうございました。他にも女性、男性に限らず、さまざまな現地で活躍されている方々で政府に対する要望ですとか、今回の議論に対する質問などがありましたら、ぜひ挙手を賜りたいと思います。

坂田泉氏(OSAジャパン)
OSAジャパンの坂田と申します。先ほど大島理事長が指摘された点に、私は非常に共感を得ました。といいますのは、ABEイニシアティブというのは、これから多分長い年月がかかり、その効果を広めるためには時間がかかると思います。例えば、ジョモケニアッタ農工大学は、30年の人材育成をしていますが、そのアウトプットがどのようになっているかということを示す前に、時間がかかることに気を取られてはいけないと思います。
 私自身はジョモケニアッタ農工大学の専門科を1年やった関係で、LIXCILと私たちが、ジョモケニアッタ農工大学と何かプロジェクトをやろうというときには、僕の教え子が出てくるのです。「先生、お久ぶり」みたいな感じで、向こうのそういうポジションにそういう人がいるわけです。後から気付くのではなく、企業や企業とコーディネートをしている人たちに対して、過去の「日本の人材育成の資産」として、こういうところにこういう人がいるということを、ぜひデータ化していただきたいと思います。私たちはそのコンセプトで、もう3年やっているわけですから、それなりのリソースというのはかなりあります。
そして、「これは、ここだけの話」というのがよくあるのですが、フェース・トゥ・フェースで育てた人が、まだ生きていて、例えば、「この人と組みたいけれど、どう思いますか?」と聞くと、「彼は止めたほうがいい」とか、「実はこの人の下にこういう人がいて、この人は努力家だよ」とか、「日本で僕が指導した時に、本当にまじめないい人だよ」とか、「部長にはなっていないけれど、この人とやりなさい」というようなことを、私に教えてくれました。だから、そういう日本人の先生がまだ生きていらっしゃる間に、ぜひそういうリソースをきちんと調べていただきたいと思います。ありがとうございます。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございます。今のお話はコメントということで、プレゼンテーターに伺うということではないので、改めて伺いたいことがございましたら、ぜひ挙手を賜りたいと思います。ないようでしたら、リクエストが幾つか入っていまして、鹿島建設の内藤部長はいらっしゃいますか?よろしくお願いいたします。

内藤智博氏(鹿島建設株式会社)
鹿島建設の内藤です。建設業としては、アフリカでずいぶん長くODAの仕事をやっています。アフリカという大きな大陸の中で、物事をつくるということでは、難しさがありました。私たちに技術はあるのですが、造ってもらう人たちのレベルにどうしても差があり、技術的なこと、安全・品質管理から非常に難しいものがあります。近年は安全が一番重視される状況にあり、これを教育するのですが、非常に難しいものがあります。
 後進国で何かを造ることのレベルが、まだ追いついていないところで物を造らなければならず、これには、すごくギャップがあります。最初はODAの無償から始まりますが、そのへんの仕組みが整備されていないと、物事を進めることが非常に難しいという現状があります。一つ一つのプロジェクト、工事には工期があります。工期の間に全部造らなければならないとなると、一番問題になることは法的な整備、技術的な整備です。これが、まだ全然できていないところで物を造ってハンドオーバーしていかなければならないことを考えると、私たちのできる範囲を超えている面があります。それをぜひ、やっていただきたいと思います。
 そのような中での人材育成は、長期計画と短期計画があります。例えばミャンマーでは戦後賠償からやっていて、あの国民は非常に良かったといえますが、技術的なものを教えると、それを引き継いでずっと伝授して、現役の人も多く、業界中枢にいる人もたくさんいます。今でも日本と往復していろいろな交流をしており、JICAでもやっていて、これが非常に役に立っています。また、トルコでもやっています。
 この様に、親日国をいち早く立ち上げていかなければいけないということが、急務な問題です。優秀な人たちを日本に連れて来て教育することもいいし、JICAが今までやっている中で短期的な教育をすることもいいが、横山さんや大島さんの話のように、向こうに日本で教育された人たちの雇用の場がなく、日本で培ったことを発揮できないのが現実です。
これからのアフリカは、いろいろな面でチャレンジするにはいいところなのですが、一次産業にしろ、二次産業にしろ、日本から行って欧米に輸出できるようなものを向こうで作れるように立ち上げるには、前提が非常に難しいところがあります。
先ほどから出ている、エチオピアが、首相、大統領からバックアップされているので、確かにアフリカでは一番いい国だと思われます。また安倍首相は、エチオピアから発信して、どんどんアフリカ諸国に教育を展開していくのだと言ってらっしゃいました。そういうローカルなことができるような仕組みを日本政府から、JICA、JETROも始めましたので、バックアップしていただけるような形ができればいいと思っています。そのへんの最新情報がどのようになっているのか質問をしたかったので、お願いいたします。

モデレーター:片岡貞治氏
分かりました、そのへんで簡潔にお答えをお願いします。丸山部長どうぞ。

パネラー:丸山則夫氏
最後の点からいきますと、エチオピアというのは、すごく有望な国だと思います。人口も1億近くになっていますし、何よりも政府自体がそういった「カイゼン」を取り入れるという発想自体がすごい話だと思いますし、それを実際に実施しているという国もなかなかないわけです。ただ、それをどのようにして取り組んでいくのか、という問題もあります。
他方において、少しギャップが存在することも事実です。彼らは、自分たちがすべて整備すれば、自分たちの工業団地に出て来てもらえると考えて、きれいなものをたくさん造っています。そこで日本側が関心を持つためには、まず労働力の問題があります。これはおそらく、他に比べるとエチオピアの労働力というのは価格の面でも、技術の面でも高いと思いますが、まだまだ先ほど内藤さんがおっしゃったようなレベルには達していないのかもしれません。現状では日本企業の関心は非常に低いと言わざるを得ない、という感じがしていまして、そのギャップをどのように埋めるかということ、これは非常に大きな問題だと考えています。
それから、技術をどのように高めていくかということですが、現地の人は使い物にならないということは、おそらくそういうふうな印象をお持ちの方がいらっしゃる反面、私が知っている別の会社の人からは、「だから育てるのです」という言葉が聞こえてくるので、これはどちらがいいか分かりません。育てるということに関しても、自社の人を育てるような感覚で、自分の事業のために育てていく、という発想をお持ちのところもあると聞いています。民間では、どちらに向かっているのか、今ひとつよく分かりません。これは、政府がどこまでやれるのかという話にもつながってくると思います。
いろいろな物によって造り方が違うのかもしれません。政府のODAを使って、円借を使ってやる事業というのは橋とか、港だとかいろいろあります。その際には、現地の方を鍛え上げて、それを造られたと、「100人以上、200人以上(への研修を)このためにやりました」という話も聞こえてきます。そこのところは、そういうものだろうと思うところもありました。他方、今の内藤部長のご指摘では、「いやいや、そんなもんじゃない」という話です。そのあたりは、個別具体的にお話を聞くことがいいのではないかという感じがしています。
最後に言えることは、制度面の話です。これはもちろん、「向こうの制度がこうなっているから、駄目なのです」という話もよく聞きます。そのとき私からは、「だから一緒に文句を言いましょう」あるいは、「トラブルシューティングをやりましょう」という話を申し上げています。これはアフリカではなくて、別の地域でのことですが、そこでいろいろ問題があったときに一番効果的だったことは、個別の面談の中で向こうの官も入れる、向こうの民も入れる。こちらも官が入る、個別の企業が入る。その中でお互い問題点を指摘することによって、トラブルをシューティングしていくという仕組みは十分考えられると思います。そういったことを、もっとアフリカでもやるべきだと思っています。
今は、大使館がその役割を果たしていますが、もっと制度的なことをそれぞれの国とやっていくことだと感じています。これは、これからも力を入れてやっていく必要があります。これからも個別、具体的な問題点を教えてください。

モデレーター:片岡貞治氏
では、江口部長お願いします。

パネラー:江口秀夫氏
アフリカでいろいろな日本の民間企業の方に支援をいただいて、実際に施工をやっていただき質の高いものができて、一般的には評判が高いところです。大きなインフラ工事の場合、長い期間もかかるし、高度な技術を使うので、大勢のエンジニア、ワーカーを動員して工事が進められています。アフリカで日本の企業が実際に受注し、施工している現場は大変すばらしいものです。現地企業の土木工事現場では、人は多いけれど見ているかぎり安全に配慮していません。ヘルメットも被っていなければ、サンダルを履いているとか、仕事をしていないで見ている人が多い。それに対して、日本の企業だとみんなが働いていて、ちゃんと安全帽を被っているし、安全靴も履いているし、安全に配慮していることが一目瞭然です。工程管理、人材をどのように使うか、いろいろな形で工夫されていることがよく分かります。
 アジアではこれまでのODA事業で、いろいろな工事やインフラ建設をやり、人材も育ってきていると思います。アフリカの日本企業が参加する施工現場の中には、そうやって自社で育てたアジアの人材、バングラデシュ、フィリピン、ネパールの人が、働いている例はよく見ます。アフリカの人々の技術力はまだそのレベルに至っていないかもしれません。しかし、時間をかけて人をつくることによって、アフリカの人材もグローバルな事業を展開する中で、活かせるようになるかもしれません。当然、企業からすれば、そのときのパートナーとしての人材にどれだけコストをかけて育てるのかということで、経営の判断になるのかと思います。これからアフリカでは若者が増えていきますので、現地での基礎的な職業訓練校やカレッジを整備しながら、中堅人材の部分を育てていくことで、スキルを持てるような職業訓練校を整備していくことがODAの役割だと思います。日本的な安全管理をしっかりして、その現場で働いて初めて分かるようなことがあります。日本の工事現場では、朝礼後ラジオ体操をやって、整列をします。そういうことが身に付くと、そうせざるを得なくなるわけです。
先ほどの教育と一緒で、自分が教育を受けた通りにしか人は教育ができないと言いましたが、われわれは小さいころからそういう訓練を受けているから、手洗いをしないではいられないという、習慣づくりがあるわけです。工事現場の安全というのを、そういうふうに決まりとしてやっている、ルーティーンとしてやっているということが、身に染みることがアフリカのワーカーの人たちにも、ある意味新鮮なのではないかと思います。
制度がしっかりしていないと、コストがかかるということはおっしゃる通りです。そういった労働安全面や規制というのは、公的機関の役割が大きいので、JICAの課題別研修などで、ルールづくりや制度面での支援をこれからもやっていきたいと思っています。規制やルールを作って、それが守られないと、守っているほうがばかを見るとか、余計コストがかかるのにコラプションで見逃されるとか、ルール通りに行われないとか、いろいろなことが起こるわけです。環境に関する基準をつくっても、誰一人守る者がいない、それは罰則がないし、罰則があってもコラプションで少し賄賂を払って見逃してもらったほうがいい、というようなことが現場でまだあるというのが現実です。そういったことも、アフリカの現実として捉えながら、改善することを考えているところです。

モデレーター:片岡貞治氏
江口部長、どうもありがとうございました。よろしいですか、分かりました。あと10分程度ですが、どうしてもという方がいらっしゃれば、手短に且つ簡潔に質問をお願いします。

高松幸司(クラウンエイジェンツ・ジャパン株式会社 代表取締役)
クラウンエージェンツの高松と申します。簡単に4つほど、ほとんどコメントですのでお答えいただく必要はございません。
 一点目ですが、アフリカをこれからいろいろ考えていくときに、日本国内でのパブリックサポートということが非常に大事になってくると思います。そのことで、横山所長からもありましたが、人から学ぶと非常に強く残って、その後でも効いてくるということでしたが、思いつきですが、アフリカに留学する日本人、産業人材をもう少し増やしてみたらどうかということです。もう1つは、文科省がやっているJETプログラムで、小中学校に外国の先生が来ていますが、そこの割合にアフリカの先生方をお呼びしてみたらどうか、ということがコメントです。
 二点目が人材育成ということで、かなり包括的にやっておられますが、日本の企業がアフリカに進出することで考えると、そのアキレス腱はリーガルとファイナンスではないかと思います。ここにもう少し焦点を当てて、産業の進出という側面から考えていったらどうかということです。
 三点目は、日本らしさということで丸山部長から、高い技術と今までの実績ということがありました。私も外資系の企業におりまして、常々同僚から言われることは、日本の特質として文化の違いを許容する力が高い、ということがあります。ともすれば、「相反する価値の間を取り持ってうまく進めていけるのが日本だ」ということをよく言われています。例えばアフリカで言いますと、中国の脅威ということが謳われています。例えばその中国の脅威と、今までの主要なプレーヤーの間に立って、うまく中国の支援も活用していくという視点も、日本らしさということであってもいいのではということです。
最後になりますが、アフリカにおいても援助外交を展開していくことになりますが、アフリカの脅威ということは、これありですが、例えば同じ価値を共有する、課題表記でいいますと、民主主義とか資本主義という同じ価値を共有する諸外国と連携することも、もう少し打ち出してもいいのではないかと思いました。それはすなわち、欧米、すなわち強国を意味するわけではなくて、アジア諸国での優等生、あるいは卒業生と言われる、マレーシアとか、フィリピンとか、そういう国と何らかの連携をすることも一つの視点ではないかと思いました。以上、四点のコメントです。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございます。ここでconcludeしてもいいのですが、せっかく最後のコメントが出ましたので、お三方、1分くらいずつ程度で、手短にご発言賜ればと思います。よろしくお願いいたします。

パネラー:丸山則夫氏
非常に興味深い視点を提示いただきまして、大変ありがとうございます。ひとつ、JETプログラム(語学指導を行う外国青年招致事業)の対象にアフリカというのも非常に面白いと思います。実は似たような話もあって、JICAでアフリカの研修生を呼んで、その人たちに高校などへ行ってもらったことがありましたが、アフリカの先生は非常に評判がいいのです。全然違った発想で、本当に子どもたちを盛り上げることがよく分かっていますので、これはもっとやっていくべきだろうと思います。それと同じように、そろそろ日本人がもっとアフリカへ行くべき時期が来たと思います。これも確か、どこかの大学がすでにそういうことを始めています。
そして、これからいろいろとそういった人材を送り込んで、アフリカで学んだ人がこれからますますアフリカと日本との関係をやっていくのだということで、取り組まれている大学ももう出始めています。これは、非常にうまくサポートしていかれると思っています。
リーガルとファイナンスは、まったくおっしゃる通りです。これは先ほどの内藤部長の問題意識とも通じるところですが、この制度的な問題について、どのようにバックアップしていくのかということは、制度に対してはトラブルが起こるという前提でトラブルシューティングをしっかりやっていく、これが一番だと思います。それと同時に、着実にリーガルとファイナンスを見直していくということです。
そして日本らしさ、文化の違いを確かに許容する力というのは、非常に強いものがあります。この売り方というのは、非常に難しいと思いますので、これはやはり実践するしかないだろうと思っています。そういった意味でも、「日本人はやっぱり違う」と言われたときに、「実はこうなのだ」と言ってくれる人をたくさん育てて、発言してもらう事が必要で、そういった意味では広報戦略の中にも入ってくると思います。
諸外国との連携は、まったく同感です。これは民間のほうが先にやっていらっしゃると思います。先ほどのアジアで育った技術の高い人をリーダーとして送り込んで、その人に人材育成をやらせているという、これももうアジアとの連携になっているわけです。こういったことをもっと活用しながら、PRしていくことです。
ちなみにTICADというのは、非常に広い意味での国際フォーラムなので、われわれのほうにもパートナー国がたくさん来ます。そこでそういった事案をサイドイベントのような形で紹介できればと思います。

パネラー:江口秀夫氏
JICAの取り組みでは、経済成長は先ほどの4つの枠組みで実施しています。あれは、JICAが今まで実施してきた得意な分野でもあるので、そこを重点にしています。今日のテーマの人材育成だけでもできないし、インフラだけでも経済成長は進みません。おっしゃるように、リーガルの面とかファイナンスの面ももちろんあります。制度づくりなどはもちろんやっていますし、新しいテーマでもあるTPPなどにどのように取り組むかということも、これからの新しいテーマとしてJICAの事業の中に取り組まれてくるかと思います。
ファイナンスについて、JICAでも融資スキームがありますが、べつにJICAだけではなくてJBIC、民間の金融機関、もちろんアフリカ開発銀行もありますし、IFCもあれば現地の地場銀行だとかいろいろあります。ファイナンスの規模も、大規模な何千億円必要なものから、スタートアップ支援としての数百万円単位のベンチャー的なものなど、いろいろなレベルがあると思います。これはJICAだけではなくて、いろいろな組織との組み合わせが、考えられていくだろうと思います。全部JICAでやる事にはならず、それぞれがもっている仕組みをうまく組み合わせる工夫が必要になると思います。
それから、今の質問ばかりではなく、先ほどジョモケニアッタ農工大学という、ケニアで長くやっている事例が幾つかでました。1980年代から計画がつくられて、一度協力が終了して、また15年ぶりくらいに再開して今に至っています。まさにゼロからつくった高等教育機関で、カレッジのレベルから大学になって、大学院も持つようになってきたところです。そこは日本が中心になって支援してきたので、日本のプレゼンスがものすごく高いのですが、人材育成をやっているといろいろなところがそこに集まってくるわけです。ジョモケニアッタ農工大学は、世銀とも協力していますし、ドイツとも協力していますし、最近は中国もやってきて、いろいろなパートナシップをやっています。大学からすれば、日本とだけということにはならないのです。やはり、世界に開いて大学として発展していこうということがあるので、それは当然だと思います。そういう意味では、日本が関わっていたからといって、日本だけで囲い込みができるわけではもうないわけです。やはり継続的な働きかけとか、取り組みが必要だと思います。場合によっては日本と相手国だけの、ジョモケニアッタとだけの関係だけではなくて、その彼らが関心を示しているパートナーと日本がまた組んで、より大きな成果を狙っていくとか、もっと広い関係でみていく必要もあると思います。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございました。今、丸山部長が退場されるので、盛大な拍手をよろしくお願いします。(拍手)どうもありがとうございます。では、横山所長。

パネラー:横山正氏
日本のビジネスマンにお話を伺うと、一般的に「アフリカというのは投資環境があまり整備されていない」とか、「法的にいろいろ難しいところがある」とか、いろいろなことをおっしゃります。例えば世銀グループは、ビジネスのし易さランキングである『DOING BUSINESS』を毎年発表しています。日本では、中国でのビジネスリスクに鑑み、「チャイナ・プラス・ワン」、「次はラオスだ」とか、「カンボジアだ」とか言われておりましたが、ラオス、カンボジアよりランキングが上の国が、アフリカに10カ国以上あります。
アフリカの投資環境がそんなに悪いかというと、例えば、腐敗ということで考えてみると、東南アジアでもいろいろと腐敗で、ご苦労されている方もいらっしゃると思います。日本企業にとってのアジアとアフリカでのビジネス環境の違いは何かというと、私が想像するに、一つは、問題が起きたときに、対処に必要な押すボタンを知っているかどうかということ、つまり、そのマーケット、政治社会をよく知っているかどうかではないかと思います。問題が起きたときに押すべきボタンとは、例えば、問題が起きたときに、あの権限ある者、有力者に相談すれば打開できるとか、あの弁護士さんに頼むと、法制度、判例、慣行を熟知しているのでどうにかやってくれるとか、そういう意味です。
従って、日本からすると、アフリカは分かりにくいところがあるかもしれませんが、例えば、『DOING BUSINESS』のように、一定の尺度から見ると、アフリカでビジネスをすることが、例えばアジアに比べて必ずしも殊更難しいとは限らないのではないかとも言えます。では、どのようにしてアフリカビジネスを行うにあたってのハードルを乗り越えるかというと、自分だけで攻めないで、現地のことをよく知っている良きパートナーと組むことが一つ考えられます。現地の方はちゃんとビジネスを現地でやっているので、何が起きたときに何をすればいいか、どのようなボタンを押せばいいかということが分かっているので、そういう人と一緒になって攻めるということがあると思います。ただ、その良きパートナーをどのようにして見つけるのか、ということも課題だと思いますが。
あと、一般的にリーガルのいろいろな問題があり得ます。それは法的な安定性がなかったり、ルールがよく変わったり、実は法文規定、成文規定と全然違うようなルールがあるとか、解釈がバラバラであるとかいろいろな問題があり得ます。先ほども申しましたが、この間中国へ行ったときに、地方政府系公社で鉄道のインフラを輸出されている方が、アフリカのある国について「本当にわけが分からない」と言っていました。ともかく、担当官庁とかいろいろな担当者の言うことが、みんなが違うそうです。「俺が正しい」と、「絶対承認が下りるから、大丈夫だ」と、みんな違うことを言うそうです。現地のビジネスマンはうまくそこを渡っていっているはずなので、ライトパーソンとか、パートナーを見つけると、一定のビジネスはできるはずだと思いますので、そのような攻め方を考えることも一つの方法です。
ファイナンスについては、先ほどJICAもおっしゃっていましたが、いろいろな所やツールを使っていただいて、例えばアフリカ開発銀行にもご相談していただければ、ご協力することができるかもしれません。一般的なご相談でも結構ですが、何か実現したいプロジェクトがある場合は、例えば、「こういうようなことで、ここの最後のパーツが埋まらないのだけれど、アフリカ開発銀行で何かできることはありますか」とか、そういうふうに個別具体的にご相談いただければと思います。
諸外国との連携は、まさに丸山部長がおっしゃられましたが、全くその通りで、重要だと思います。例えばナイジェリアの即席麺は、インドフードというインドネシアの会社が現地資本と組んで、マーケットリーダーになっています。このように東南アジアの会社でもアフリカで頑張っている例がありますし、イスラム圏だったらマレーシアと組むことも考えられれるかもしれません。シンガポールについては、インド系もいるし、マレーシア系もいるのでいろいろできるかと思います。
先ほどのパートナーを探すという意味では、これもケニアの人から聞いたことですが、ケニアには当然、非インド系の地場の資本もありますが、タンザニアもそうですがインドの方々の資本も強いらしいのです。現地の印僑は、基本的には二代目、三代目で、祖父母、曽祖父母の代に来た人たちが多いということです。そういう人たちには、実は、現在のインド本土の人とは組みたくない人が結構多い、ということを聞きました。なぜかというと今のインド本土から来る人たちは、ヒット・エンド・ランみたいに短期間で利益を得るとさっと引くとか、中長期的な観点で投資・ビジネスをしたがらない傾向があるということです。とにかく、儲けたらすぐ帰るということで、そういう人間たちとは付き合いたくないそうです。ケニアにいる伝統的なインド系のビジネスマン達には、「むしろ、日本みたいに腰を据えてやってくれる人たちと、僕たちは仕事がしたいのだ」という人たちもいるそうです。要するに、個別具体的にいいパートナーを見つけていただいて、攻めることも一つの手かと思います。

モデレーター:片岡貞治氏
ありがとうございました。これで大体、本日のプログラムは終了です。3人のプレゼンテーターの方々には、それぞれの機関の立場から、TICAD VIに向けた今日のテーマである、「ビジネスと人材育成‐日本らしい視点」、あるいは日本らしい貢献、あるいは日本型の支援のあり方について、非常に網羅的に説明がなされました。
冒頭で丸山さんがおっしゃられたように、アウェイでの開催ということで、オールジャパンで対応しなければ、まさしくAUの首脳会議をTICADがハイジャックする、というくらいの気合で対応していかないと、なかなかアフリカ人の心をつかむことは難しいのではないかと思います。その意味でこうした機会を設けて、いろいろな議論を深めて、日アフリカ関係の強化のために資するような意見交換を続けることができればと思っています。
最後に、クロージング・リマークスを大島理事長にやってもらいますが、その前に2人のプレゼンテーターに盛大な拍手をお願いいたします。(拍手)
それでは、理事長お願いします。

大島賢三理事長
どうも、長時間ありがとうございます。特にご参加いただいた3人のパネリストに、厚く御礼を申し上げます。非常に興味深いポイントが幾つか出されました。今日は人材育成、日本らしいアフリカへの支援、そういう角度からの議論でした。
終わりに当たり私の印象を2,3点述べさせていただきます。最後のほうで横山さんが触れられた、良きパートナーと組んでアフリカを攻めていくという視点、私もこれは非常に大事だと思います。幾つか具体例がありますが、私が最近、「へ~?こんなこともあるの」と思ったことは、あるフランスの新聞に書いてあったことですが、中国がフランス語圏に展開をする時、フランスの企業、弁護士事務所などいろいろなところへアプローチしているということです。例えば、リーガルの問題で、言語の問題、現地の法制度や慣習も含め、中国が手段を講じても及ばないことが当然あるわけで、そこはフランスの力を借るに越したことはないということで、フランス側にアプローチを強めているとか。これにはフランス側の人もややびっくりして、「あの中国からそういう話が来るとは期待もしていなかったけれど、中国も考えているな、そういう時代になったのだ」というような話が載っていました。
日本の場合はいろいろハンディもあるし、自前で人材育成をするにしても限度がありますので、そこはいいパートナーがいれば、それと組むことがもっとあってよいのでしょう。今日はここに、サンヨー食品の福地さんがご出席されています。福地さんは機関紙「アフリカ・冬号」に、サンヨー食品会社がシンガポール所在のインド系大手と組んでナイジェリアに進出をしたというお話を書いておられます。これなど一例かと思いますが、そういうことも含めて、いろいろ攻め方を考えて、アフリカに進出を考えておられるなと思います。
もう1つは、これはもう皆さんも重々ご承知の通り、アフリカについてはいろいろな国により政策フォーラムの場、いわば各国の「TICAD版」が最近どんどんできています。旧宗主国を多く含むEUはもとより、アメリカ、インド、韓国、中国、トルコ、ブラジルなどです。アフリカの巨大な市場の将来性に注目をして、世界的に一種のアフリカ詣でというような現状にあると言って良いのかもしれません。TICADは、政策フォーラムとしては最も老舗としての存在になるわけですが、そのTICADはそういう状況に今おかれているわけです。そういう中で、日本としてはODAを通じる支援だけではなく、これからはビジネスの進出をアフリカも強く期待しているわけですからもっと強調していくべき立場にあります。適切な現地あるいは外国パートナーと組むことも含めて、官と民の力を合わせ、オールジャパン的に、総合的な対応を強化していかねばならない。従来の延長戦で少し手を加えるような対応だけでは、戦略性に欠けるのではないかと思います。5~10年経ったときに、果たして日本企業のアフリカ進出がどのようになっているのか、出遅れを悔やむことのないようにしっかり手を打っていく必要があると思います。
そういう意味でも、外務省、JICAのみならず、経産省、他の省庁も大いに関わっているわけですので、オールジャパンとして、アフリカに取り組むための戦略的なアプローチを強め、現状ではどこまでできているのか、足りないところがあるとすれば何なのか、今後それをどうするのか、ビッグ・ピクチャーを良く考える必要がある。先ほど人材のフォローアップの話が少し出ましたが、それも一つの問題です。
それから、例えば日本の大学もいろいろ協力をしていますが、もっと力を発揮する余地があると思います。留学生政策についても、ABEイニシアティブのような戦略的といって良いアプローチが出てきたことは大変に結構ですが、人材のフォローアップ体制を含めこの際全体的に現状の見直しをしておくことも必要でしょう。新興国を含め世界のアフリカ詣でが見られる中で、「日本は他に先駆けて1993年にTICADを始めました」というアセットが今後も生かされて、アフリカ諸国から頼りにされるよう、努力を重ねることについては、皆さんに置かれてご異論のないところだと思います。
そういうことで、本日はパネリストの方から大変に貴重な話をいただきました。どうも、ありがとうございました。

配布資料:
 1.「JICAの産業人材育成支援について」
 2.「アフリカ開発銀行による人材開発の政策と実施」

(文責:副理事長・事業委員長 淺野昌宏)

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