フォーラム

安倍首相のアフリカ訪問に関する報告会・討論会 議事録

真剣な討論
  • ■日 時:2014年2月12日 18:00-20:00
  • ■場 所:日仏会館ホール (渋谷区恵比寿3-9-25)
  • ■主 催:一般社団法人アフリカ協会、公益財団法人日仏協会
  • ■共 催:日仏経済交流会
  • ■後 援:一般社団法人日本貿易会
  • 開会の挨拶:松浦晃一郎アフリカ協会会長・日仏会館理事長
  • 今日は大勢の方に日仏会館においで戴きましてありがとうございます。主催者として、一言ごあいさつを申し上げます。安倍総理は、日本の総理として3度目の本格的なアフリカ訪問をされ、大成功を収められました。日本の総理が本格的にアフリカを訪れるのは、最初が2001年の森総理、2006年の小泉総理、そして今回が3度目です。
    その森総理は、日本アフリカ連合議連の会長を長い間務められましたが、本日は、その後任の逢沢一郎先生に日本アフリカ連合議員連盟の会長としておいで戴き光栄に存じます。
    それから、国会が長引いており未だ到着されておりませんが、自民党副幹事長の三原先生も長年アフリカに関心を持っておられます。私が外務省の経済協力局の政策課長をしている30年以上前から非常にアフリカに関心を持っておられ、アフリカの国をこまめに回っておられます。今回も安倍総理に随行されてアフリカを回られました。後ほどご挨拶を戴きたいと思っています。
    今日は、事務方として全体を推進して戴いた外務省の岡村アフリカ部長、それからJICA、三菱商事のそれぞれの担当の方、全体の司会も兼ねて慶応大学の岡田先生においで戴いております。じっくりとアフリカの話を聞かせて戴きたいと思います。今日は本当に大勢の皆様においで戴きまして、有難う御座いました。

  • 松浦アフリカ協会会長
  • 来賓の挨拶:逢沢一郎衆議院議員、日本アフリカ連合友好議員連盟会長
  • 日本AU議連の会長を務めております自由民主党衆議院議員の逢沢一郎で御座います。先般の安倍総理のアフリカ訪問について、識者の皆様方でしっかりと議論され、フォローアップを戴ける事は日AU議連の代表者として本当に嬉しく、心から感謝を申し上げます。
    去年6月の5回目のTICADは大成功でした。それを受けて、1月に国会が始まる前でいろいろな難しい状況もありましたけれども、安倍総理自身に行きたいという強い気持ちがあり、我々の期待とぴったり一致し、コートジボワール、モザンビーク、エチオピアに行って戴いた訳です。特にエチオピアでのスピーチは歴史に残る素晴らしいスピーチでした。今日はそのコピーも用意されているとの事で、後のパネルディスカッションでも、いろいろな角度から議論が戴けようかと思います。
    今までは主要先進国からの援助がなければ生きていけない、やっていけないというアフリカでありましたが、今や、総じて貿易や投資のパートナーとしてのアフリカに、大きく変わりつつある事が実感されるようになりました。オーナーシップがそれぞれの国で発揮され、日本を含めた主要先進国が上手にアフリカの飛躍をお手伝いすれば、将来のアフリカは今のASEANのような地域に変貌する可能性がある、それが少しずつ見えてきているのではないかと思います。資源がいろいろなところで見つかるというのは本当にすばらしいことですが、医療や保健の体制を同時に整えていくという事も忘れずに、アフリカ全体の未来を皆で作り上げていく手伝いをして行きたいと思います。
    昨年のTICAD V以降やたらにアフリカのお客さんが増えており、嬉しい悲鳴ですが、アフリカが大きく動き出した、日本との関係が本当に近くなってきた事が日々の政治活動や、国会においても実感ができます。我々にとってもまさに歓迎すべき事で、是非皆様にも変わりゆくアフリカにしっかり向き合って戴き、それぞれの立場で知恵と力をお出し戴きますよう、日AU議連の立場から、お願い申し上げたいと思います。政界の中でもっともアフリカを愛し、アフリカのことをよく知っていらっしゃるのは議連幹事長の三原先生であり、三原先生を先頭に、中心にしながら、我々日AU議連もしっかり政府と一体となって努力してまいりたいと思います。今日は適切なタイミングに総理のアフリカ訪問をフォローアップして戴き、重ねて感謝を申し上げます。ありがとうございました。

  • 来賓の挨拶:三原朝彦衆議院議員、自民党副幹事長長
  • ご紹介いただきました三原です。安倍首相のミッションには、ここにいらっしゃる岡村アフリカ部長や、JICAの乾部長と一緒に行ってきたのですが、やはり総理大臣が行くとなると、30数社の上場一部企業の偉い人達が付いてくるわけです。なお且つ、コートジボワールでは近隣11か国の大統領がわずか2時間の会議にワッと集まってくるのですから、皆さんに税金を払って戴いて日本がこれほど発展したからこそ、今度はアフリカ諸国の人達が、なんとか我々を支えてほしいという夢と希望で集まって来られるのだと思い、なんだか僕もすごく良い気分になりました。あれだけ近隣の総理大臣や大統領が一堂に会すると、発言される事はやはり、「日本のようになりたいから、いろいろ教えてくれ」という事です。出来る事なら、僕らも本当に協力させて戴きたいと思いました。
    エチオピアでの総理のスピーチは非常に印象的でした。「アフリカの人々、一人、ひとりが幸せにならないと世界の平和もあり得ないし、アフリカの安定もない」と語りかけられました。稀有壮大な大ぼら吹きではなく「、一人、ひとり」がちゃんと自分の足で立てるような、そんな社会づくりのために僕らは応援しますよ、本当に日本的なサポートだと思います。中国はつい先年まで日本の70倍くらいの民間投資があり、今100倍を超えているのではないでしょうか。日本はこれからです。民間投資をしながらもちゃんと横に広がっていき、技術移転をします。建物を建てるときには、皆さんご存知のように型枠、鉄筋、内装の人達がいります。我々は建物を建てるだけではなくて、そこで魚の釣り方を教えます。魚を食べてもらうのではなく釣り方を教えましょうという基本理念に立ち返ってやらなければいけないし、それが実は一番大切なことだと思っています。
    これからも逢沢会長のもとで、国会が終われば日AU議連も毎年、特にこれから先は若手を送り出していって、我が国の立場や我が国の政治的なやり方、援助というものを伝播してもらうようにしていきたいと思っています。今日これからの話し合いも大いに頑張って戴いて、我々の至らざるところを教えてもらいたいと思っています。今後ともどうぞよろしくご支援をお願い致します。有難う御座いました。

  • 講演:岡村善文 外務省アフリカ部長
  • 総理アフリカ訪問についてご報告をさせて戴きたいと思いますが、一番肝心なところを三原先生に言って戴いたので、私は細かいところからお話し致します。
    首相訪問の背景
    お手元に資料をお配りしております。まず、今回の総理のアフリカ訪問というのは単独で出てきた話ではなく、長いアフリカ外交の歴史を踏まえた上にできあがったものです。これに至るまでにいろいろな方が一生懸命、それぞれの分野で日本とアフリカの関係を力強く進めて来られて、昨年のTICAD Vに繋がり、大きな成功を見た訳です。政府と政府の関係だけではなく、日AU議連が三原先生を中心に、長年にわたってアフリカとの関係をこつこつと築いてきました。民間企業の方々も、歴史の紆余曲折はあっても、最近のアフリカの盛り上あがりに乗って行こうとしています。そしてNGOの方々も、こつこつと積み重ねてきたアフリカとの関係を背景に、TICAD Vという場で大きく謳いあげました。
    今度の安倍総理の訪問はTICAD Vの場で総理が約束された事です。5年ごとにTICADがあり、5年ごとに30-40ヶ国のアフリカの首脳が日本にやってきていますが、日本の総理は2006年の小泉総理の訪問まで遡ります。8年間、総理はアフリカの地に全く足を踏み入れておらず、アフリカの側からバランスを欠いているとの意見がありました。それを受けて総理は、「TICADそのものをアフリカで開けという声もあるけれども、自分はそこまで待てない。早くアフリカに行きたい」と言って、大いに喝采を浴びました。半年後にそれをちゃんと実行した事で、アフリカからの評価は非常に高かったわけです。一方で安倍総理は、地球儀を俯瞰する外交という事を言っておられ、実際に地球儀の裏側まで行くという大きな視野での外交を象徴するアフリカ訪問でした。

    訪問国の選定
     アフリカは54か国あり、総理の日程を最大限もらえても1週間です。この1週間の中で最終的に選んだ国がコートジボワールとモザンビークとエチオピアです。この選択については、コートジボワールはお前が大使をしていたから選んだのだろうと言われますが、決してそういったえこひいきではありません。フランス語圏の西アフリカにこれまで総理は行った事がありません。フランス語で距離的に遠く、心理的にも距離がありました。しかしながら、西アフリカには非常に力強い潜在性があり、是非行ってもらいたいと考えたからです。コートジボワールは、フランスが植民地時代に経済都市として作り上げてきたアビジャンを中核とする都市です。インフラもあるし、人もいるという背景があり、日本にとっての新天地です。そこを総理に見てもらおうという事でコートジボワールを選んだわけです。
    2番目のモザンビークは、経済界、産業界がこぞって関心を示している国です。75年に独立し、その後すぐ内戦に巻き込まれ、内戦が終了したのが90年で、自衛隊もPKOでモザンビークに行っているくらいです。しかし内戦が終わると、ピタッと国内で抗争するのをやめました。とにかく選挙をやってちゃんと大統領をつないできています。しかし貧しいです。貧しい国にどうして日本の総理が行くかというと、モザンビークとタンザニアの国境近くの海の中に、大変多くの埋蔵量を誇る天然ガスが出て来た為です。
    この埋蔵量は、日本が1年間に消費する天然ガスの20年分はあり、日本のエネルギー政策及び安全保障上大きな意味があるという事です。他にも、中部から非常に優良な石炭が出て、この粘結炭を押さえる事が日本の製鉄業にとって非常に大事なので、製鉄企業が出て行っています。また、モザンビークの北部は広大なサバンナで、そこを農業開発する事により、非常に大きな穀倉地帯になる可能性があります。日本は全く同じような開発をブラジルでやった事があり、今やその日本が手掛けた地域というのは膨大な穀倉地帯になっています。モザンビークでは、まさにビジネス、投資という事で、ここでは投資フォーラムを行ないました。
    最後のエチオピアは、アフリカ各国の中では首都というふうに思われているところがあります。なぜかというと、アフリカ連合、AUの本部が置かれたのがエチオピアのアディスアベバです。ここで毎年AU総会が開かれ、立派な会議場があり、そこで総理に演説をしてもらうという事は、単にエチオピアに対して演説をするだけではなくアフリカ全土に対する演説になります。アフリカへの発信という事で、エチオピアを選びました。

    何処でも大歓迎
    この3か国とも非常に大歓迎をしてくれました。これは見事なほどの大歓迎でして、例えばコートジボワールではアビジャン空港から街の中まで車で3~4キロ走らなければなりません。日本の旗が途切れた事はなく、ホテルに至るまで全部日本の旗が飾られていました。街の中では10階建てのビル全体が安倍総理の顔写真でカバーされているという、そんな準備までしてくれました。同じような準備はモザンビークもエチオピアもしてくれていました。それぞれ首脳会談をして、行事をした後は晩餐会です。この晩餐会では、膨大な数の人達を呼んで、国の名士達がみんな来て、歴代の大統領も皆来ています。国会議長、最高裁判所長官、主立った企業のトップまでみんな来ていました。
    私は割とアフリカを知っているので、これくらいはやるだろうなと思っていたのですが、総理はじめ一行の皆さんは非常にびっくりしたと思います。コートジボワールは私が大使をやっていた関係でウワタラ大統領をよく知っており、半年前の国連総会の時耳打ちをして、安倍総理を何とか連れて行くようにするから、その暁には周りの何か国か呼んで欲しいという話をしました。3~4か国くらい来てくれれば格好が付くかなと思っていたのですが、ちょうどウワタラ大統領は、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の議長であり、その議長の資格で、全加盟国15か国に、「安倍総理が来られるのでこの日の夜皆さん集まりませんか」というレターを書いて送ってくれたのです。そうしたら驚いたことに、4か国を除いて全ての国が集まってきました。10か国集まって、コートジボワールの大統領を入れたら11人が、安倍総理が来るという事で集まってくれたという事になり、ミニECOWAS首脳会議が成立したのです。首脳会議にゲスト国として第三国が呼ばれるというのはある話なのですが、誰かが来るからといって、そこに皆が集まって首脳会議をやったというのは私も外交史上あまり聞いた事がありません。それはやはり安倍総理への期待感、人気が高いからです。それに加えて、つい半年前の横浜で皆総理と1対1で話をしましたから、人間関係があるわけです。だから、せっかく安倍総理が来るならという事で皆集まってきてくれたわけです。私もこの歓迎ぶりには非常に深く感動いたしました。

    オールジャパンでの成果
     それからもうひとつは、大きなビジネスミッションを作り、総理と一緒に行けたという事で、これは大きな成果だと考えています。3か国とも日本の一流企業の、しかも会長、社長クラス、一番トップの人が皆さん政府専用機に一緒に乗り、総理に同行して回り、それぞれの大統領と会ったわけです。もちろん三原先生にも一緒にいて戴きました。とにかく我々はオールジャパンだ、単に政治関係だけではない、経済人も銀行マンも皆一緒にやるのだという感じで先方に迫りました。それはもちろんトップセールスの大きな強みです。同時に、日アフリカ関係を変えるインパクトのあるものでした。それぞれ3か国をトップ企業の会長、社長達が回りながら、拡大首脳会議という事で一緒にセッションをして、その後握手をして、写真に撮ります。恐らくこれらの会長、社長達は、こんなことがない限りアフリカには行かない人達でしょうが、総理が行く事で同行し、それぞれの大統領と握手し写真に納まります。そうすると、それぞれ社に戻ってから、「君ら、アフリカ知っているか」と話をします。のみならず、恐らくその会長、社長方が見られたアフリカというのは、持っていたイメージを覆すものだったと思います。恐らく、アフリカというのは貧しい、よれよれの服を着ている人達が小さな屋台を並べてバナナやマンゴーを売っている、仮にそういうイメージを持っていたとしたら、実際にアビジャンに行き、マプートに行き、アディスアベバに行って見たアフリカというのは全然違うわけです。我々の知っているブランド店や近代的スーパーマーケットがバーッと並んでいる大通りがあり、車が走り、建物は建築ラッシュ、クレーンが並び、そしてホテルもヨーロッパ並みのちゃんとしたホテルがいくつもあります。恐らく今頃、一流企業の社長室、会長室で、大統領と握手している写真を横にしながら、「アフリカは違うぞ」と得意になって話しているのではないでしょうか。総理がアフリカでトップセールスを行った事の大きな影響がこれから出てくると考えます。

    何をセールスポイントにしたか
     では、総理にアフリカに行っていただき、何をしてもらうのでしょうか。日本のアフリカ政策を発表したり、アフリカに対する支援策を発表する事でしょうか。それはもう半年前にTICAD Vでやってしまっています。それを上塗りしたり、書き換えるような事は必要ありません。TICAD Vのフォローアップをするのでしょうか。いや、毎年1回フォローアップの閣僚会合をちゃんと用意しており、総理にやってもらう話ではありません。では、一体総理にアフリカに行ってもらって何をやってもらうのでしょうか。答えは、日本の売り込みです。これに焦点を定めました。すなわち、今アフリカの魅力、潜在力、資源、投資先、市場といったものをめがけていろいろな国がやって来ています。その中で「あなたの一番良いパートナーは日本ですよ」と言ってもらおうと考えました。
    ここで皆様にお配りした総理のアディスアベバでのスピーチを見て戴きたいのです。「一人、ひとりを強くする日本アフリカ外交だ」と言っています。この「一人、ひとり」というのがキーワードなのです。どういう意味で、一人、ひとりかというと、「一人、ひとりを大切にする日本」という事です。TICAD Vで、あるアフリカの指導者がこう言ってくれました、『働くとはどういうことで何が労働の喜びか、そういう倫理を教えてくれたのは日本企業だけだ』と。会社とは利益を生む場です。しかしその前に日本企業は学びと工夫を共にし、苦労だけではなく喜びを分かち合う、そして一人ひとりが自分の内なる動機というのを大切にし、命令などなくてもきちんと努力する人間、日本企業のそういった考え方がビジネスに表れてきているのだという事を総理に説いてもらいました。
    例えばということで、ヤマハ発動機を取り上げました。ただ単に船外機を売って儲けを持って帰るのではなく、船外機を売った漁民の人達に、どうやって魚を取れば良いのか教える事をやったのです。そうするとその漁民は、ただ単に船外機を付けて船を動かすだけではなく、より良い漁ができます。そうすると、その漁民も収入が増えて、もう1台船外機を買うというふうに次の需要につながります。だから日本企業はただ単に、投資した工場の中での「一人、ひとり」を作るだけではなく、お客さんに対しても「一人、ひとり」なのだ、こうした事を論じてもらいました。

    アフリカに受け入れられた「カイゼン」
    そして次が「カイゼン」という思想です。実はカイゼンというのは今アフリカですごく人気があります。もちろん皆さんご存じの様にトヨタの経営手法の「改善」です。JICAがこの「カイゼン」を、組織の中の効率を良くしていく為に、病院などを中心に広めたものです。それをアフリカの人達が聞いたとたん「これだ」というわけです。一番ビビッと来たのが、2年前に亡くなってしまいましたがエチオピアのメレス首相です。メレス首相はこのカイゼンにほれ込み、これで国民の思想改革をするのだという事で、アディスアベバに「国立カイゼン研究所」という5階建ての建物を作ってしまいました。それで今、全国でカイゼンをやろうと言っているわけです。トヨタがより高い品質のものを生産するための手法として導入した「改善」がどうしてここまでアフリカの人に受けるのでしょうか。最初私はよく分かりませんでした。しかしアフリカの人達に話を聞いてみると、「本当にこれは思想革命だ」と言うのです。なぜか。それは、アフリカの人達は植民地時代から、こういわれてきました。「あなた方が自分でやることは、大体ろくでもない。だから、ヨーロッパの我々がちゃんと教えてやるから言うとおりにしなさい。あなた方が自分で作ろうとしてもろくなものができないのだから、我々が作るものをちゃんと受け取りなさい。」別にそれは植民地の戦略や戦術というのではなく、ヨーロッパ社会というのは基本的にそういうやり方です。非常に有能なトップがドンときて指示をし、下の人達がそれを的確に履行すれば組織は強い、こういう発想です。いわゆるトップダウンというものです。一番正しい組織運営のあり方というのは上の人の言うことをよく聞くことだ、上の人の指示を忠実に履行する事が正しい組織のあり方だと言われ続けてきたアフリカの人達は、結局自主性というものをどこかに置き去りにしてしまったという事に気付き始めていたところだったのです。そこにカイゼンというものが来たのです。生産ラインなら生産ラインのひとつひとつのパーツを受け持っている工員の一人ひとりが、自分の所掌の範囲内で、自分の責任の範囲内でできる最大のことをやろう、そこでできる一番効率的なことを作っていこう、そしてそれが積み重なっていってすばらしい組織になる、という発想です。これはボトムアップが基本の日本の人達が聞いても「どうしてそんなことが珍しいのか」とあまりにも当たり前なので戸惑ってしまいます。ところがアフリカの人達には、この日本の発想が非常に新鮮に受け取られるわけです。日本の民間企業の人達も、国際協力をやっている人達も、NGOの人達も、それこそそこら辺にいる高校生1人連れて行っても、日本人であれば誰でも必ず「一人、ひとり」をやっています。
    組織の中で、必ずアフリカ人の人と一緒に考えようという姿勢でやります。ところがそれは他の国にはありません。そこを日本の良さということで売り込むようなことにしました。「一人、ひとり」と「カイゼン」という思想に表れているような、日本の企業や文化には非常に良い日本らしさがあり、それこそがアフリカを強くするのだという事を総理に訴えてもらったわけです。

    アフリカと一緒に踊ろう
     更に、私が今回の一番の成果だったと思うものをひとつご紹介しますと、エチオピアの最後の夜に、先ほど言ったような晩餐会があったわけですけ。その晩餐会の最後にダンサー達がワッと音楽とダンスを総理の前で奏で始めたとき、総理が立ち上がって一緒にダンスをしました。満場がそれに喜び、それこそ皆立ち上がってその場でダンスを始め、すばらしい雰囲気になりました。これは私共が振りつけたわけではありません。総理が自分で立ち上がってかなり上手に踊られました。私は総理には、今後ともアフリカと一緒に踊ってもらいたいと考えております。

  • 岡村外務省アフリカ部長
  • 討論:モデレーター岡田正大慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授
  •  それではこの後1時間弱、安倍首相のアフリカ訪問と今後の官民協力というテーマで討論を始めさせて戴きます。まずパネラーの方々をご紹介します。三菱商事から、経済協力部長をされている堂道さんです。それからJICAアフリカ部長の乾さん、そしてただいまお話戴きました外務省アフリカ部長の岡村さんです。岡村部長には既にお話戴きましたので、乾さん、堂道さんから、概ね5分程度で今回のこのテーマに関しての、自己紹介兼コメントを戴きたいと思います。では、乾さんよろしくお願いします。

  • 乾英二
    JICAアフリカ部長
  •  JICAの田中理事長が総理の訪問に同行致しましたので、私は田中理事長の随行という事で行きました。岡村部長からも3か国の特徴をお話戴きましたが、私共も、非常によく考えて戴いたなと思っております。まず長い内戦から急速な復興を遂げている、フランス語圏アフリカの中核的存在であるコートジボワール、それから世界最大級の天然ガスや石炭が出て地下資源が豊富で、それを利用して農業や社会開発をバランス良くやっていかなければならないモザンビーク、それからAUの本部があり、故メレス首相によってカイゼン運動を推進しているアフリカの首都であり中核であるエチオピア、その3つを非常にバランス良く、またスピード感を持って、ご訪問戴いたと思います。民間企業のトップの方とご一緒して、逆に自分も非常に勉強させて戴きました。
    具体的なフォローアップ
    JICAとしては、ひとつひとつの国々の具体的な案件を実施しながら、岡村部長のお話にあるような日本らしい協力、または実績を積んでいきたいと思っています。例えばコートジボワールではアビジャン首都圏のマスタープランを作っているのですが、その街作りをフランスの人達とも一緒に行ない、その中の重要なところを日本でやる、またはアフリカ開発銀行と一緒になって、具体的にインフラを作りながら、一緒に考えながらやるという手法で進んでいます。またECOWASの11か国の首脳が集まって、自分達の国に何をやってくれという事ではなく、地域のインフラをどうすればこの地域が活性化するかという事が話しあわれたと聞います。これを具体的な案件としてフォローしていきたいと思います。
    また、モザンビークでは、5年間で700億円の支援と、300人の産業人材の育成をしますが、その700億については円借款や、無償資金協力を使って、特に北部の貧しい地域のインフラ開発をやりながら、その中の社会開発も一緒にやり、その地域全体をボトムアップして発展させる事をやって行きたいと思っています。また、協力隊の32人が安倍首相に直接握手をしてもらい、写真も一緒に撮って、非常に激励して戴きました。ありがたい事だと思います。
    エチオピアでは、カイゼン運動などは故メレス首相の音頭で取り組んでいるのですが、産業人材育成センターを起動し、産業界のニーズをうまく捉えながら、その人材にマッチした人間を、カイゼンなどのコンセプトを入れながら育成していく事に取組んで行きます。EPSAと呼んでいるアフリカ開発銀行を通して民間を支援するためのスキームは、最初は2012年からの5年間で10億ドルという予定でやっていましたが、それを倍の20億ドルにして実施しますので、ますますアフリカの開発パートナーとも一緒に取組んで行かなくてはならないと思います。
    4つのコンポーネントで総合的に
    運輸・交通・エネルギー等の経済開発と、民間連携も含めながら、それをバックアップする人材育成、保健、社会開発をバランス良く支援しながら、全体として日本の協力、仕事を「一人、ひとり」を大切にしながら実施したいと思っています。その中で具体的にアフリカの経済開発を支援するためには、4つのコンポーネントがあると思います。
    ひとつは政策支援、工業政策や運輸政策といった「大きな政策の支援」。それに「人材育成」と「制度改善」と「インフラストラクチャー」を合わせて総合的に、問題をひとつひとつ改善しながら実施し行きます。特に現場の声、問題点を具体的に国の制度改善等に生かしながら仕事をして行きます。例えば現場で必要な人材はどういう人なのか、どういう能力がある人がこの国に必要なのかということを民間の方々から聞きながら、それを職業訓練や教育に生かす。または民間企業の方が実際に仕事をされていて、例えば税や通関の問題等でいろいろとご苦労されていると思います。それを具体的に政府に伝えて制度改善するとか、いろいろな法律を作るお手伝いをするという事で、やはり総合的に取り組みながら仕事をしていきたいと思っています。またアフリカの土壌は、それができると思います。故メレス首相がカイゼン運動を国の施策としてやると言ったのは2008年のTICAD IVの時です。それが今では具体的にエチオピア「カイゼン・インスティチュート」という形で国家政策として動き始めているくらいのスピード感、ダイナミックさがある地域がアフリカだと思いますので、ぜひ皆さんのお知恵、ご提言をお伺いしながら、具体的な案件で進めていきたいと思います

  • 熱気あふれる会場
  • モデレーター 岡田教授
  • ありがとうございました。続きまして堂道さん、よろしくお願いいたします。
  • 堂道雅治
    三菱商事(株)経済協力部長
  •  今回の安倍首相のアフリカ訪問には、弊社社長が3か国全てに同行させて戴きました。社長は担当者時代にアフリカの案件を手掛け、アフリカに対する経験や思いは非常に強い人ですが、岡村部長がおっしゃるように、帰国後は「アフリカを攻めろ」という明快なトップダウンの指示が出て、我々は非常に喜んでおります。
    アフリカでの取組み
    弊社は世界の90か国以上に200以上の拠点を持ち、600のグループ企業と事業を展開しています。分野としては貿易のみならず資源開発、インフラ整備、産業金融、製造から流通まで事業展開をしています。また、資源関連では、日本が輸入しているLNGの約4割、原料炭の3割を扱っています。アフリカでは1950年代から拠点を設けており、現在では12拠点、邦人が31名、ナショナルスタッフは70名活動しています。各拠点は市場の変化を察知するアンテナ機能がメインの役割ですが、加えてビジネスパートナーとの関係構築の役割を担っています。
    訪問3か国のいずれにも長年拠点を持っており、モザンビークではアルミ製錬事業であるモザールに参画しています。モザンビークの投資フォーラムでの安倍首相のスピーチでも、モザールがについて付言戴き、おかげで安倍首相のご発言の後に社長からモザールのプレゼンテーションをさせて戴く貴重な機会を戴きました。モザールの成功原因として2点あり、1番目は関係政府機関の十分なサポートを得て連携ができたこと。2番目は商社のマーケティング機能が生かされたことです。これは弊社のアフリカ事業の取組みにおいて非常に大きなヒントになっております。
    わが社の主要ビジネスは、資源関連、インフラ整備、貿易取引の3点です。資源関連ではモザンビークで日立建機と鉱山機械のメンテナンス事業、アンゴラ・ガボンで石油生産事業をしています。貿易取引は鉱物資源のみならず、コーヒー豆、ごまなどのアフリカ産品の輸出を手がけております。インフラ整備では、日本のODAを活用した電力、港湾、交通等の無償案件にも積極的に取り組んでおり、円借や投融資案件につなげていきたいと努力しています。
    アフリカを含め海外での事業において、地域との共生は不可欠です。これ無くしてビジネスは実現できないと思います。モザールを筆頭に、弊社はアフリカ各国において奨学金、教育、保健分野での社会貢献活動を推進しています。
    アフリカでの官民連携
    アフリカにおける官民協力
    の観点から3点申し上げたいと思います。
    1番目は、今回のトップセールスは非常に意義があったという点です。TICAD Vの日本政府のコミットメントを踏まえて、日本のトップが改めてアフリカの地で自ら一人ひとりの力を大事にする日本らしい支援や、官民連携でのアフリカでの取組みを直接表明した事は大変意義深いと思っております。
    2番目は連携の重要性です。アフリカ経済の発展や中間層の拡大を見ると、今後インフラ事業や、アフリカをひとつの巨大な市場、面として捉えるビジネスは大変重要になってきます。その際に、官民連携や、日本企業とパートナー企業の連携が重要です。機能を補完しあうこと、これ抜きではなかなか成功は難しいく、スピード感も含めたケミストリーの合うパートナーを探すといった、パートナー戦略がますます重要になってくると思います。
    3番目は、やはりWin-Winの関係に向けた取組みという点です。アフリカでは事業推進に必要な登録手続きや法制度はまだまだ未熟な点が多く、日本政府からの技術協力や専門家派遣のご支援を引き続きお願いしたいと思います。またインフラ整備ではODAが大切な突破口ではありますが、インフラ整備に続く投資を伴うコマーシャルビジネスの創出が相手国の発展にとって大変重要です。コマーシャルビジネスを考え、それを支える機能として政府資金、技術協力と連携するビジネスプロセスを考えていきたいと思います。弊社としてもアフリカで新しいビジネスを創出し、各国の雇用創出、人材育成、発展に寄与することを目指します。
    最後になりますが、ODA制度のさらなる充実、柔軟な運用、加えて邦人の安全対策に対する一層のご支援をお願いしたいと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  •  堂道さん、有難う御座いました。それでは私自身の自己紹介を兼ねて、私から2~3分話しますが、その後にフロアの皆様にもこのパネルにかかわって戴き、インタラクティブに進めてまいりたいと思います。
    まず私自身の簡単な自己紹介ですが、慶応のビジネススクールというMBA(経営学修士)と博士課程を持つ教育機関です。基本的には営利企業がいかに利益と売上を増大させていくかということを中心に教育と研究をしています。従って、当初はこのパネルで司会を務めるのは如何なものかと思いましが、今回の安倍首相の訪問にもあるように、また堂道さんのお話にあった民間企業がリスクを取る決断をして事業参入をしていくという事は、まさにビジネススクールが目的とするところであって、そこに強い一致を感じて今回登壇させて戴きました。
    私の持っている唯一のアフリカとの個人的関係といえば、それはつい最近知ったのですが、安倍首相のアフリカ訪問の直前にエチオピア大使になられた鈴木量博さんが、高校のテニス部の同級生だという事だけです(笑い)。私自身は、もともとの専門は戦略理論ですが、現在は「包括的ビジネス(inclusive business)」といって、如何に社会性と経済性を両立させていくかという、開発課題と営利事業を同時に成立させるビジネスのあり方を研究しております。ここ数年はアフリカを訪ねたいという欲求が高まって、何度も足を運ぶようになりました。
    ビジネススクールでは、企業を固有名詞で議論をするのが通常です。今まで、そしてこれからも民間企業がリスクを取り、アフリカに事業参入するということが続々と期待されますが、例えば総合商社、三菱商事、丸紅、住友商事、双日、それ以外にも多くの商社がアフリカへ参入されていますし、専門商社ではもちろん豊田通商が非常にパンアフリカでカバレッジを高めていらっしゃいます。また今後は事業会社がどのように自社でリスクを取って事業参入するかという点が非常に重要になってくると思うのです。少なくともこれまでの事例を見ましても、例えば味の素はナイジェリアでもガーナでも積極的にやっていますし、いすゞ自動車は南アフリカで展開されています。もちろん安倍首相のあいさつにも出てきたヤマハ発動機、それから日本通運もグローバルロジスティクスのネットワークを組んでいらっしゃいます。東芝もエジプトを中心にテレビ事業をやっていらっしゃると記憶していますし、有名な住友化学、私もアルーシャのオリセットネットの工場に行ってまいりました。8,000人プラス現地の提携パートナーによる雇用で合計1万6,000人の雇用を生んでいます。それから日本たばこもスーダンで現地企業をM&Aし、さらに事業を拡大しています。これは新聞記事で拝見しましたが、カネカは付け毛のビジネスではアフリカのシェア50%を超えているという事です。それから大森回漕店のキリマンジャロエクスプレスについても新聞記事で拝見いたしました。NECは非常に有名なパソリンクが欧州を中心にアフリカでも事業を展開してきていますし、東洋製缶は確か米国企業を買収し、その企業がアフリカへも事業を展開しているなど、枚挙に暇がないほど多くの民間企業があります。さらには、例えばパナソニックのタンザニアの乾電池工場を訪れた際には、先ほどお話にあった「カイゼン」や「5S」に非常に一生懸命取り組んでいました。関西ペイントの南ア企業買収も非常に耳に新しい、大きな進展と言えるかと思います。私はもともと本田技研工業に勤めておりましたが、ホンダもナイジェリアとケニアに二輪の工場を建てています。このように続々と民間企業がアフリカへ、という流れが近年できあがっていると思います。
    そのような中で、当然ながら政府に対してどのように支援をしてほしいのか。来月ケニアを訪れてリクシルと環境ライフテクノロジーのプロジェクトを見学するのですが、これらはJICAの支援を受けています。やはりJICAの80件を超えるFS採択案件の中でアフリカはその何割かを占めているわけで、民間企業が当初の参入リスクをいかに軽減して参入していくかという体制も続々と整いつつあります。また、JICAとJETROが連携して民間企業の事業参入を支援する、こういった体制が今急速に構築されてきており、大変心強い限りだと思います。
    さてそれではここから、ぜひフロアの皆様方から、今回の安倍総理のアフリカ諸国への訪問、そしてまたパネリストの皆さんにこういうことを聞きたい、ということがありましたらぜひ伺いたいと思います。何かございますでしょうか。どうぞ。

  • (左より)岡田慶應ビジネススクール教授、岡村外務省アフリカ部長
  • 質問者:加藤透
    ヤマハ発動機海外市場開拓部
  • ヤマハ発動機が魚の取り方を教えたというのは25年くらい前からこつこつやっている事で、JICAの水産関係の専門家の方にご指導戴いて、四半世紀も前から今で言うPPPを始めていたという事です。従って、JICAに御礼申し上げたいというのが我々の気持ちです。それから質問ですが、エチオピアに入る前に南スーダンでドンパチがありました。アフリカの中で一番若い国だというので私も期待して去年10月に入り、こいつら面白いなとすごく思ったのですけれども、ああいうふうになかなか分かりにくい中、日本政府としてもヘルプすると言っていますが、どのような援助をお考えになっているのかお伺いしたいと思います。

  • 岡村善文
    アフリカ部長
  • 南スーダンは、去年12月に突然内乱を始め、非常にがっかりしています。スーダンという大きな国があったのが、昔から南の、どちらかというとキリスト教系の人達が独立したいと言っていた、そして長いプロセスを経てやっと独立しました。その背後には、彼ら自身の力もあったかもしれないけれども国際社会もしっかりと支援し、かつその後の国づくりに一生懸命力を入れてきたわけです。日本も自衛隊員をPKO要員として派遣し、国づくりをしっかりと支援していこうと思ったところに、独立後わずか2年も経たないうちにそういう事態になったことに非常にがっかりしています。これがアフリカの弱さというものを象徴している事は確かです。ただ、非常に根深い対立からこうなった面もないわけではなく、これではいけないという事で、一生懸命事態の収集を図っている人達もいます。特に周りの国々はなんとかこの南スーダンのことを大きな人道的な被害にしないようにという事で努力しています。私はそういったアフリカ自身の努力というのは今回もちゃんと出てきていると思っています。日本の支援は、この事件が起こる前と後とでは少し性質が違ってくる事は確かですけれども、引き続きこの国がまた元の道におさまり、国民和解を達成し、そして和平と安定した国家の建設に戻ってくれるように、きちんと支援をしていきたいと考えております。

  • モデレーター 岡田教授
  •  乾さん、堂道さん、この南スーダンの現状について知見、メッセージが御座いましたらよろしくお願いします。

  • 堂道雅治
    三菱商事(株)経済協力部長
  • 外務省のミッションで南スーダンを訪問し、本当に貧しい国のひとつだなと思いました。一方で、人は非常にすばらしいし熱心だし、ポテンシャルは高いということで、無償ODAの案件フォローを中心に東京やケニアから南スーダンをカバーしています。民間としてできることは限られますが、やはり立ち直ってほしいので日本のプレゼンスを高めていく支援をしていきたいと思っています。

  • (左より)乾JICAアフリカ部長、堂道三菱商事経済協力部長
  • モデレーター・岡田教授
  • 今日、アフリカ開発銀行の玉川所長がいらっしゃっていますので、せっかくの機会ですのでぜひ一言戴ければと思います。今の話も絡めてお願いします。

  • 玉川雅之
    アフリカ開発銀行アジア代表事務所長
  • TICADが開催されて、大きなテーマとなったのは、日本がアフリカの民間主導の成長を支えていく事です。我々が成長を遂げたのは民間セクター主導でやったからであり、これと同じことをアフリカで行なっていくべきだという事が日本の今後の支援の中心となりました。そのためにはやはり民間セクターが非常に大きく発展していく事を手伝っていかなければいけないのです。そのときに日本企業がアフリカの方々とパートナーシップを作り、そこで事業をやりモデルを示す事によって、アフリカ経済が民間主導で育ってゆきます。この様な形で日本が大きく貢献できるのではないかという事がTICADでの大きなテーマとなりました。今回の安倍総理の訪問は、まさに企業のトップの方を連れて行って戴き、またそれがアフリカ各国でも大歓迎されたという意味では大変大きな一歩ではなかったかと思います。その意味で、次のTICADまでの4年の間に、このようなモーメントが官民においてどこまで進んでいくかというのが非常に大きな課題だと思います。我々アフリカ開銀もアフリカ側からのそういう期待を大変に受けておりますので、ぜひ日本政府との連携も行なっていきたいと思っております。

  • モデレーター・片岡教授
  • まずはいかに平和が確保されるか、治安が確保されるかという事があってビジネスが成立していくという事になるわけで、その意味においての政府、公的セクターの役割、そしてまた政策的支援も非常に重要だと改めて感じます。さて、それではまたフロアの皆様からお願いします。

  • 質問者:北村達也
    日経BP 海外営業部長
  •  人材教育について皆さんのご意見を聞きたいと思います。TICAD Vで安倍首相から「ABEイニシアチブ」、5年間で1,000人の学生をという話がありましたが、今日の日経新聞等でも、中国がいよいよ人材教育にも力を入れているということで、中国語教育、ものづくりも含めて教育機関を作った、そういう動きが活発になっているという話がありました。日本の民間企業ではトヨタが南アで作っているのは知っているのですが、最近の民間企業でのそういったエンジニアの育成、要はタレンテッドなエンジニアをいち早く手に入れるために、いち早く教育をするという事についてはどういう状況になっているのか。また政府として中国がいよいよ人材教育にも力を入れ始めたという状況の中で、トルコでやっているような科学技術大学のような現地での学校との提携といったものへの投資について何かお考えがあればお聞かせ戴きたいと思います。民間企業が今トヨタ以外でどういう動きがあるのかという事と、現地での教育の提携、この2点についてお聞かせ戴きたいと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  • 乾さんお願いします。
  • 乾英二
    JICAアフリカ部
  •  ABEイニシアチブは、5年間で1,000の留学生を呼ぶというものです。今までの留学制度と違う点は、マスターディグリーを修了する前に日本企業にインターンなどに行き、日本企業の良さを分かった上で卒業して戴きます。できれば日本企業との架け橋になってもらい、または現地の日本企業に就職してもらい、日本にシンパシーを持ったアフリカの知識階層を作って行く試みです。今までは、研修事業を通じて取り組んできましたが、今回はこの様に大きなイニシアティブを通じた留学制度を実施するという事で、JICAも手伝っています。民間の中の人材育成は、例えばトヨタはケニアでトヨタアカデミーというのを作り民間で育成する部分と、官ベースで我々が育成する部分をジョイントしてやろうという事になっています。カイゼンの話では、10か国で、産業界のニーズを踏まえて、例えば日立やトヨタ、日産で、どういう人材が必要なのかをヒアリングし、それを例えば教育のカリキュラムに入れ、またはインターンシップのプロジェクトを企業でやってもらい、それを踏まえた上で卒業させます。それによって就職率が上がるといった細かい分析と、細かいアプローチをしながら、国別に、地域別にいろいろな人材育成を目指しています。

  • M. ンガム ヤヒア
    駐日モーリタニア特命全権大使閣下
  • TICADは確かにフォーラムとしてさまざまな問題を取り扱うことができました。アフリカと日本の協力に関する問題で、安全から投資に至るまでの問題が話し合われました。私が実際に日本の民間企業の方々にお会いすると「我々はとても興味を持っている、アフリカに進出したい」というふうに言って下さいます。しかしアフリカの幾つかの地域、幾つかの国においては少し赤に染まっているところがあります。つまり政府からそこに渡航禁止になっている国々があります。
     確かに安全の懸念はとても重要なものです。けれども、ある程度のものを考えて均衡を取るべきではないかと思うのです。赤い色を少しどこかで溶かして日本の企業がプレゼンスを伸ばす事ができる様にしなければいけないと思います。
     ここにいらしている丸紅と豊田通商の2社は、モーリタニアで既にプロジェクトに関わって下さっています。丸紅は非常に大きな砂糖製造のプロジェクトに関わっており、このプロジェクトが本当に実現することを望んでいます。モーリタニアの発展のためにとても重要なプロジェクトであります。豊田通商については特に付け加えることはありません。
     日本のタコの消費の45%はモーリタニアから輸出しおり、魚のセクターだけで知られています。我々の国は日本の民間部門に対して開かれています。エネルギーやインフラその他の分野においても協力をしたいと思います。モーリタニアの大統領は1カ月前にセネガルを訪問しました。その際の成果の一つはモーリタニアとセネガルの国境となっている、セネガル川の間に橋を架けるという事でした。日本企業はこうした橋の建設に経験をお持ちですから、モーリタニアにきてその橋の建設に参画して下さい。

  • モデレーター 岡田教授
  • 堂道さん、何かございますか?
  • 堂道雅治
    三菱商事(株)経済協力部長
  •  総合商社ですからグローバル人材の育成は大変重要ではあるのですが、メーカーさんのようなエンジニアを育てるという観点では申し上げられません。ただし、やはり人材の厚みというのは非常に重要です。特に弊社の経験では、コンプライアンスをしっかり分からせて事業を推進する人材を育てていくためには時間がかかっても新しい人材を教える教官的な現地の人が必要だと思っています。それが、先ほど申し上げた拠点で70人を抱え、時間をかけて人材を育てている理由です。またわが社ではいくつかの国の主立った大学の覚醒に奨学金の支援を行っており、それを通じても現地の教育事情を見ながら人材育成の相場観をみています。
    一方で大事なのは、人材はやはり事業があってこその人材であって、人を取って仕事がないと辞めていく、もしくは能力が発揮できないというジレンマがあると思います。したがって事業を伸ばす、または投資の機会を増やす、トレーディングを増やすという中で人材を取っていくという両輪で進めていくことが大事だと思います。今申し上げた何点かのバランスを取りながら、積極的にグローバル人材、アフリカ人材を育てていくという事は取り組んでおりますし制度は整備しております。

  • モデレーター 岡田教授
  • ありがとうございます。では岡村部長。
  • 岡村善文
    アフリカ部長
  • 少し違う話になるかもしれないのですが、北村さんの言われた人材というのは本当に大きな問題だとつくづく実感したことがありました。南アに出張したとき、大きな建設事業を落札したある日本企業の人が頭を抱えていました。せっかく事業を取っても、溶接工がいないのです。かなりの数の溶接工が必要なのですが、とにかく質の高い溶接工がいません。南アフリカは、アフリカの中で図抜けて経済が先進している国なのです。それでも溶接工がいないのです。そんなものだろうかと思いながらヨハネスブルクから帰りの飛行機に乗って、隣の席に座ったのが、ナミビアでウラン鉱山を作っている中国人でした。この中国人と話が弾み、ナミビアで一番苦労する事は何かと聞いたところ、「溶接工がいない事だ」と。彼は現地で溶接工を探したけれどもほとんど見つからないので、仕方なく中国からたくさん連れて帰るのだと言っていました。中国は現地の労働者を使わないとの批判があります。しかし、実情はそのようなところにあるのかなと思いました。
    先ほど堂道さんから事業を伸ばす中での人材というお話がありました。これは非常に大事なことで、やはり必要な人材を必要な時に作って行く、トヨタアカデミーのような取り組みは非常に有益だと思います。我々もそれをよく見ながら、これからの日本企業が現地で必要とするような人材を見極め、その人達を早目、早目に作って行きます。それは、エンジニアリングのような知的に高度な人達の話もそうですが、溶接工のようなまさに職人レベルの人達もそうであると感じています。

  • モデレーター・片岡教授
  •  まだ幾つか取りたいと思うのですが、他にどなたかいらっしゃいますか。
  • 漆原 智子
    武田薬品 元青年海外協力隊
  • 一般参加の漆原と申します。2年前まで青年海外協力隊としてモザンビークで医療系隊員として2年間赴任していました。今は一般企業に勤めています。豊田通商の横井さんと、JETROの石井さんに質問があります。
     まず豊田通商さんは、アフリカに今50カ国以上ありますけれども、最初に日本で車を組み立てて輸出を始めたのはケニアだとおっしゃいましたが、なぜケニアだったのかというのが非常に興味のあるところです。
     JETROの石井さんには、アフリカで幾つ事務所を構えているかという事ですが、モザンビークには日本企業も、商社が何社か入って日立なども来ていますが、まだ日本とのかかわりは資源以外のところは非常に薄いかなと思っています。どういう基準で事務所を構えるのかを教えて下さい。

  • 熱心に聞き入る参加者
  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございました。私も私立大学におりますので、アフリカと日本の経営人材について現在考えている事を申し上げます。ビジネススクールなので、多くの民間企業の方々と触れ合う機会があります。非常に強く感じるのは、アフリカでビジネスをやるという事に対して、情報の非対称性といいますか、そもそも知らない、その彼我の違いというのが非常に強く感じられる事があり、アフリカをもっと学ばなければいけません。もちろん、日本がアフリカに何か教えると言う事もたくさんあるかもしれませんが、実はアフリカから学ばなければいけない事がたくさんあると考えています。ビジネススクールで経営人材の育成をやっている中で、一生懸命取り組んでいるのは、アフリカのビジネススクールと日本の(この場合慶応のビジネススクール)がいかにタイアップするか。これは明らかに対等なパートナーシップです。先ほど玉川所長が民間セクターにおける開発という事をおっしゃったのですが、それはプライベートセクターディベロップメント、決して先進国の民間セクターが行ってアフリカ経済を豊かにするのではなく、アフリカの民間セクターも同時に発展していくという事が成立しないとうまくいかない話で、その辺りを私共は強く意識しています。
    来月、ジョモケニアッタ大学のモンバサキャンパスと、ナイロビにあるストラスモア大学に行くのですが、そこで、どうやってイコールパートナーで学び合えるか、例えば教員や学生の相互交流みたいな事をどうやってプログラム化できるかという相談をしに行きます。そういう事を今画策しているというご報告です。乾さん、何かございますか?

  • 乾英二
    JICAアフリカ部長長
  • ジョモ・ケニヤッタ農工大学というのは日本が30年ほど協力していて、ゼロから作った大学です。他の大学と何が違うかというと、実学が非常に強い、いわゆるシビルエンジニア、現場があって、現場の中で工夫したり考えたりするような事を日本の先生方が行って徹底的に教えたので、そこを出たエンジニアは基本的に現場できちんと工夫ができるという事です。机上の理論を知っているアフリカ人はかなりいますが、それにプラスして現場で役に立つ実学のところも持っていなければいけないという事だと思います。私はコンゴ民などのODAの現場を見たのですが、日本の北野建設が道路工事をやっている現場ではバングラディシュの人を連れてきてきちんと中間段階をおさめている。または大日本土木がエジプト人を連れてきて、結構難しい工事をしています。それを見ると、例えばコンゴ民の方々は、日本と一生懸命頑張ってやればあのレベルに達するのだという事を非常に分かります。どういうDNAか分かりませんが、日本人が現場の人と一緒に、彼らのモチベーションを高めながら教育をして使える人に育てて行くというのは日本のやり方として、我々もきちんといろいろなところで話をしたいと思っています。

  • モデレーター 岡田教授
  •  アフリカに行くたびに、その国のビジネススクールを訪ねる事にしていて、南アフリカに行ったときは、プレトリア大学のビジネススクールであるゴードンインスティチュートオブビジネス、タンザニアのダルエスサラム大学のビジネススクール、ガーナにガーナ大学のビジネスクールがありますが、行くたびにびっくりするのは、その校舎があまりにも豪華で立派な事です。多くの企業や国から経営人材教育に対する資金が、ある意味その後に期待してのドネーションが入っています。確かダルエスサラム大学だったと思いますが、ゴールドマンサックスの銘板が入っていたり、そういったことを見るにつけ、日本企業からもそういった経営人材教育のサポートをする余地はまだまだあるなという気がいたしました。さて他には。はい、どうぞ。

  • 質問者:武藤一郎
    アフリカ協会特別研究員
  •  アフリカは植民地時代の経緯があり、国をそれぞれの単位で見るより地域で見るという事が非常に重要だと常々思っているのですが、今回総理が訪問されたモザンビークについて2つほどお聞きしたい事があります。ひとつはナカラ回廊です。ナカラ回廊の奥にはテテ州という石炭の豊富なところがあるのですが、それとインド洋への出口を結ぶのがナカラ回廊であるから、当然マラウィを経由する事になります。そうなるとモザンビークに対する協力だけではなくマラウイに対する支援も含めたSADC全体で考えると必要があります。特に海に面していないマラウイの様な内陸国にとっては、モザンビークの港湾に至る経路を確保する事になるのでナカラ回廊はマラウイにとっても極めて重要であり、同地域の総合的な計画が必要となります。今回の訪問に関していえばマラウィの名前は出てきませんが、地域的に見るとマラウィも含めて考える必要があるのではないかと思います。
    もう1点は、ボツワナに日本の援助による鉱物資源のリモートセンシング、遠隔探査のセンターがありますけれども、モザンビークは資源が将来に向けて非常に期待されるところがあります。ボツワナの遠隔探査センターはJOGMECが中心になって進めてきたプロジェクトだと思いますが、もう少し日本のODAの中枢に包含するような形で位置付けられたほうが良いのではないかと感じています。同センターは何か日本のODA本体とは別建てのプロジェクトのような印象を受けており、オールジャパンの協力として実施されるべきと感じますが、その点につきどういうふうになっているのか、お話を伺えたらと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございました。2点についてご質問がありましたが、では乾さんから宜しくお願いします。
  • 乾英二
    JICAアフリカ部長
  •  先日、三原先生とご一緒してナカラ回廊をずっと上り、マラウィを陸路で行きました。外務省が出したTICAD Vのひとつのイニシアティブとしての5大回廊開発という事の中にナカラ回廊というのは位置付けられていて、それはモザンビークだけではなくザンビアやマラウィも包含するものだという事で、各国政府ともいろいろと話をしております。
    それからボツワナにつきましても、まさにJOGMECのリモートセンシングセンターが、人材育成とその国の資源開発を一緒にやっていこうという事で非常に良い活動をされています。先ほど申し上げたモザンビークの産業人材育成の300人というのは、半分はJOGMECの中の研修が入っていて、研修するだけではなく実際にその国の資源開発を一緒にしながら研究もするという事で非常に良い活動をしています。経済産業省またはいろいろな省庁とも、どこで何をやっていて、何をターゲットにしているかと考えながらJICAのスキームをうまく活用して戴きながらやっているところです。
    なかなかその説明ぶりが難しく、皆さんに届かない面があるのかもしれませんが、私からするとTICADを契機にかなりオールジャパンとして持てるものを出し合い、その中で一番良いところをアフリカにアピールしていくという事をやっていると思っています。

  • モデレーター・片岡教授
  • 堂道さん、民間のお立場で何かございますか?
  • 堂道雅治
    三菱商事(株)経済協力部長
  •  マラウィの大使は弊社のOBが昨年から務めておりますので、ぜひマラウィに足を運んでください。しかし、マラウィだけ見ると非常に厳しいと言わざるを得ません。今回のJICA、外務省の施策で我々が一番興味を持っているのはマスタープランです。マスタープランは、地域で見ているという事、もしくは回廊で見ているという事、もしくは内陸国の開発をどう支援するのかという観点で見ているというのが非常に興味深いですし、注目されるべきだと思います。そういう観点であの回廊、もしくはマスタープランをどう進めていき、日本の民間企業がどのように参加できるのか、この辺りは民間として知恵の出しどころだと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございます。岡村部長、何かございますか?
  • 岡村善文
    アフリカ部長
  •  地域で見なければいけないというのはとても良い視点だと思います。アフリカは多くの場合、かなり人工的・作為的な形で国境が引かれたことにより、分割されすぎています。ひとつひとつの国が市場としては小さすぎるので、それをいかに大きな市場として結合していくかという事は、アフリカの人達自身も実は強く感じている問題意識です。まさに今の戦略的マスタープランも含めて、我々はアフリカの人達にオーナーシップを持ってもらおうとしています。我々がその地域をつなげていくという事はできなくて、やはりアフリカの人達自身が自分達でどうしようか、国境のボーダーストップをやめようとか、流通のためのインフラを作ろうといったことを相互に協力して考えていかなければならないので、アフリカの人達のイニシアティブに我々は期待しています。
    その意味で大変面白かった話をひとつご紹介しますと。先ほどアビジャンに11か国の首脳が集まったと申し上げましたが。11か国集まってくるという事に際してひとつだけ我々が心配した事があります。それは、その11か国それぞれが日本に個別の陳情をしてくるのではないかという事です。私も総理の後ろで、それぞれの国の陳情案件について回答を持って控えておりました。ところが、11か国の大統領が並んで、一人ひとり発言した時に、誰ひとりとして「我が国にこれをしてくれ」という話をしませんでした。一人ひとりの大統領が、自分達の西アフリカ地域は、南部アフリカに比べて紛争などがあって若干遅れているけれども、こういう潜在性がある、でもここが自分達には足りないのだという話をしました。陳情合戦になるのかと思ったら全くそうではなく、やはり大統領達が自分達の地域単位の開発をどう進めていくかという事を考えているという事です。
    もうひとつ驚いたのは、10時半くらいまで歌や踊りの大パーティが巨大な会場で行なわれ、終わって総理初め皆さんが退場しました。ところが、総理を除く11か国の大統領達は、その後別室に集まり、彼らだけでまた協議を続けたらしいのです。そして、今、西アフリカにとって一番必要で、日本にぜひ協力してほしいものは何か、これを夜中の12時過ぎまで話し合い、ぜひ地域全部をつなぐ高速道路を作ってほしいと言う結論になったそうです。それは翌日の空港での見送りのときに、ウワタラ大統領から安倍総理に伝えられました。私が感銘を受けたのは、大統領達は真剣なのです。地域をひとつにぐっとまとめて大きな市場を作っていく、そのために自分達には何が必要か。これだけの資源があり、これだけの潜在性を生かし切れていないのはなぜかということを地域の大統領は一人ひとりきちんと考えていて、それをとにかく日本の力でなんとか解決に向けて進めて欲しいというふうに感じていたという事です。私はそういった、地域のイニシアティブがちゃんと出てきているという事を非常に嬉しく思った次第です。

  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございました。はい、どうぞ。
  • 質問者:布目正浩
    丸紅株式会社 情報金融不動産部門長付
  •  私はケニアに1984年から5年駐在し、毎週のようにウガンダに通いつつ、ケニア、ルワンダ、エチオピア、タンザニアなど東アフリカ地域をカバーしました。その後通算6年駐在した南アでは、マンデラ大統領が就任した前年の1993年にヨハネスブルグに合弁会社を作りました。最初の仕事は1994年の総選挙のための通信網作りでした。この会社はそれから20年間黒字でやっています。今日のお話を伺い、方向性に賛同しますし、非常に素晴らしいと思うのですが、私は商社で情報通信をやっていますが、NTTのプレゼンスがアフリカではほとんどないのは残念に思っていました。
    2011年、NTTはディメンションデータを3,000億円近いお金をかけて買収しました。なぜでしょう?南ア人の大半は少なくとも3か国語を話します。自分の部族の言葉と英語ともうひとつ、南ア人はマルチリンガル、マルチカルチュアルです。世界に出て勉強している人も非常に多くいます。ディメンションデータは東京に200人規模のチームを常駐させ、トヨタのネットワークの世話をしたりしています。そういう南ア企業の実力というものがあるという事を申しあげたいのです。NTTには英語を話す人もそんなにいないし、そういう文化でもありませんので、このまま世界に単独で出て行くのは難しいでしょうが、ディメンションデータの買収によって補完された訳です。彼らはヨーロッパには巨大なプレゼンスを持っていますし、東京にもいますし、南米にも出てやっています。
    それからモバイル通信でいうと、NTTドコモよりも南アのMTNという携帯電話会社のほうが加入者の数は多いのです。NTTドコモはせいぜい1億人ですが、MTNは約3億人の加入者を持っています。ナンバーワンを張っているのがナイジェリア、ガーナ、リビア、イエメン、シリア、イラン、つまり日本の通信事業者が全く手の届かないところを彼らはカバーしているのです。そういうふうに物事を見る、つまりアフリカというところだけを切り離して見るのではなく、世界の中で日本人が弱いところを補完してくれる存在がアフリカにもあるというのが、37年アフリカと付き合った経験から得たことです。
    質問ですが、去年、アルジェリアのイナメナスで日揮の方がテロリストに殺害されました。サヘル地域というアトラス山脈の南麓には、まともな仕事がないので人殺しを仕事にしている人が沢山いるわけです。一方、セネガルからソマリアまでの地域で農業開発をやってグリーンベルトを作ろうという壮大な構想があり、先ほどの高速道路を引っ張ってくれという話もそこにリンクしているのだと思いますが、高速道路というインフラだけじゃなく、そこの経済開発を面でやろうという構想があるわけです。やはりこれをやらないとゲリラというお仕事もなくならないという事だろうと思いますが、そこに対する外務省やJICAのスタンスはどうか質問したいと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  •  サヘル地域に関するお話ですね。
  • 岡村善文
    アフリカ部長
  •  MTNなどの補完してくれる現地企業があるという事は大変正しい指摘でして、実はアフリカで見ているとヨーロッパ系の企業が強いのかと思ったら意外とそうではなく、地元企業がしっかりとビジネスチャンスを生かして成長している事に驚かされます。
    先ほどご紹介のあったMTNというのは南アの通信会社です。西アフリカのほうまで出てきて通信ネットワークを作り上げています。それから西アフリカではレバノン資本が非常に強固に地元に根を下ろし、ネットワークを持っています。こうした企業と提携してどんどん使っていくという視点も、日本企業が出て行くときには必要だと思います。その辺りはすごくよく分かる話です。
    サヘル地域ですが、非常に難しいところあります。赤道直下辺りから北に100~200キロほどは非常に肥沃、しかしそこから北に行きサハラ砂漠に近づくと、非常に厳しい気候になります。年のうち3分の2くらいは日照り、乾燥が強く、耕作ができるのは1年の4分の1から5分の1くらいの期間しかありません。やっと雨が降るその期間に耕作をしなければいけないということで、ちょっとした気候の変動などで大きな問題が生じる地域です。その地域というのは、荒涼としていて人間活動ができないところかというとそうではなく、商業活動が非常に盛んです。砂漠というのは決して不毛なところではなく、いわば広大な海です。砂漠の向こう側はちょうど北アフリカで、北アフリカのいろいろな富と、南アフリカの赤道地域の非常に豊かな農産物資源などをずっと交易しているのがサヘル地域の実態です。その中で今おっしゃったようなゲリラの問題等が出てくるのは、そうしたちょっとした気候変動などで生じてしまういろいろな社会の矛盾にそういう人達が付け込んでいってしまうということです。特に最近はリビアがガタガタになり、リビアでもともと大変な武器を持っていた人達がみんなそれをビジネスにしてしまうという事があって、サヘル地域で次から次にいろいろなことが起こっています。マリで起こりましたし、イナメナスの事件はそのひとつの象徴です。一方で今は中央アフリカ、南スーダンで起こっているようなことも若干それに関係しているかもしれません。そうした事が次から次に起こっているという事です。日本の考え方としては、まずとにかくそこの応急手当てをしなければいけないという事で、そういう難民の人達が出てきたり、あるいは非常に秩序が乱れてしまったことに対して手当てをするための支援を考えています。お配りした総理のアフリカ訪問の中でも、「平和と安定への貢献」という事で全体成果の中に書いています。積極的平和主義に基づき、南スーダン、サヘル地域、中央アフリカを含む紛争等への対応のために3億2,000万ドルの支援の用意を表明しました。これで応急手当のためのプロジェクトを進めていこうと考えています。一方で一番大事なのは根本治療でして、それはやはりおっしゃったとおり、その地域は非常に強い農業開発の潜在性を持っているという事もありますので、そうしたところで、各地域がより良く発展できるような経済開発に導くことが非常に大事だと思います。

  • 乾英二
    JICAアフリカ部長
  •  テロの裏には貧困と格差があり、基本的には生計がたち、物がきちんと考えられないとテロにも陥りやすく、例えば教育や農業を、彼らのやり方に沿って教えるという事をサヘルでもやっています。もうひとつ重要なのは、今、騒動がおこっているところは難しいですが、例えばブルキナファソやまだそうなっていないところを、そうなる前に生計向上や教育をきちんとするという事に我々も取組んでいます。
    もうひとつIT、携帯電話の件は、例えばM-PESAといって携帯電話を使ってお金をやり取りするような事が、東アフリカでは普通に行なわれています。あのような使い方を、誰が考えるかというとアフリカ人だと思うわけです。そこの人と一緒に考えずして、日本のIT企業の次の発展はないのではないかと考えますので、ヒントを逆にアフリカから得ることがこれからのITを伸ばす中では必要だと思います。

  • モデレーター 岡田教授
  •  堂道さん、何かございますか?
  • 堂道雅治
    三菱商事(株)経済協力部長
  •  特にニジェールについて語る術がないのですが、アフリカのひとつの悩みは54か国をどうやってカバーするのだという事です。アフリカと言う括りで捉えるのではなく、もっと会社ごとに国、地域を絞って行く方がビジネスの観点では良いのではないかと思います。そういう時期がそろそろ来ているのではないかと思います。
  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございます。では時間ですので1件だけ、手短にお願いします。
  • 質問者:イロ・カザ・イブラヒム
    (ニジェール)
  •  ニジェールの人間ですが、アフリカの為に会議を作って戴いて感謝致します。ひとつ質問をしたいと思いますが、ニジェールと日本の間は、協力隊のほうでも、外務省のほうでもやって戴いていますが、民間企業としてのビジネスのほうは、日本から見るとどうなるかという事です。
  • 活発な質疑応答
  • 乾英二
    JICAアフリカ部長)
  •  協力隊については、おっしゃるとおりアフリカの中では1、2を争うくらい実績のある国で、古くから出している国です。ただ、今のところはやはり治安状況の問題がありまして、新規に派遣がないという事で、すでに撤退しています。ただ、ニアメ首都圏の近くの技術協力については引き続き継続しており、治安状況を見極めているというのが現状です。ウランなど、ビジネスの関係でも昔から長い付き合いをしている国だと思っていますし、ひとつの大切な国だということで我々も継続してお付き合い戴いているというのが現状です。

  • モデレーター 岡田教授
  •  ありがとうございます。あっという間に1時間10分ほど経ってしまいました。まだまだご質問等あるかと思いますが、この後はもしよろしければ個人的に質問して戴ければと思います。私自身、アフリカに進出している日本企業や、それに限らず数々の企業の事例を研究していますが、多くの企業が自社単独でなく、政府、国際機関、非営利組織との連携が極めて重要だったと結果的に学習しているケースが多いです。ぜひこういう場を活用し、今後も官民、それに学も加えて戴いて交流を活発にしていきたいと思います。本日はパネリストの皆様、オーディエンスの皆様、ありがとうございました。

  • 主催者挨拶:松浦晃一郎 アフリカ協会会長・日仏会館理事長
  • それでは最後に、主催者を代表して私からパネリストの皆様へお礼と共に、私なりに感じたことを簡単にご紹介します。丸紅の方が37年アフリカとのお付き合いがあるとおっしゃいましたが、私は53年です。私は外務省に40年奉職しましたが、最初に勤務したのが西アフリカで、1961年の9月にガーナに着任し西アフリカ10か国を担当しました。本省に帰り、経済局や経済協力局、特に経済協力局(今の国際協力局)に長く籍を置いてODAの担当、最後は経済協力局長をしました。例えばジョモケニアッタ大学は、経済協力局にいた頃に、最初はプロジェクト技術協力として始めました。プロジェクト技術協力として力を入れてやったのでこれが大学になり、私が経済協力局長のときに、ぜひジョモケニアッタ大学を東アフリカの拠点にしたい、無償でさらに建物を建て増したいという要請があり、これに応じました。私がユネスコ事務局長時代に訪れて、その話を当時のケニアの大統領(同大学の学長を兼任)にしましたら喜んで、大学の卒業式に招かれて名誉博士号を戴きました。
    それからニジェールの方もおられますが、ニジェールは私が外務省の経済開発協力課長をしていた時に外務担当大臣が来られて、日本に何かして欲しいというので、私が団長でJICAの方と現地に乗り込み、ひとつは無償、ひとつは青年協力隊を出すべきだろうという事で始まったものです。今お話を聞いて、この50年余りに日本とアフリカの関係がいろいろな形で深まっている事を非常に嬉しく思います。まだまだ深めて欲しいと思います。
    よくODAから民間投資へと言われますが、ODAと民間投資両方が相携えて伸びなければいけないと思います。私が経済協力局の政策課長をしていたのは1980年からですが、当時私は日本のODAのあり方から、2国間のODAをアジア中心からもっとグローバルにしなくてはならない、アジアのシェアは70%に落とし、アフリカ10%、中近東10%、中南米10%ということを提唱し、よくいろいろな方からアフリカ10%なんて無茶だ、それだけの重要性をアフリカは持っているのか、さらに言えばこのアフリカの吸収能力から言って10%いくのかという疑問も呈されました。しかし、私は頑張りまして、すぐに達成できなくてもODAの10%はアフリカに向けるべきであるという事を提唱し続けました。今20%になっています。TICADを始めた時には、外務審議官として、細川総理のもとで事務局長をやっていました。TICADの1回目は非常に良いイニシアティブで、まさに日本とアフリカの関係を更に飛躍させるものとなりました。その後、回を重ねて5回となり、非常に充実したものになりました。
    今日は、いろいろのお話を伺い非常に嬉しく思いました。例えばコートジボワールも、最初に訪れた日本人の1人だと思います。私は62年9月、独立したばかりの同国を訪れましたが日本人はゼロです。その後大洋漁業の方が1人来られました。50年前に比べると、今のコートジボワールとの関係は隔世の感があると思います。これはひとつひとつの国にみんな当てはまる事ですが、ぜひこれからもアフリカとの関係をしっかり進めて戴きたいと思います。
    それから、アフリカ協会の会長として一言PRさせて戴きますと、これだけ日本の一般の方がアフリカに注目して戴いているので、ぜひアフリカ協会としてもアフリカと日本の相互理解を深める、あるいは交流を深める、多少でも日本から進出される企業のお役に立ちたいと思っております。ぜひ皆さん方もアフリカ協会にご協力戴ければ有り難いと思います。最後に、今日のご出席のお礼と共にお願いをさせて戴きました。今日はありがとうございました。

    (文責・編集 アフリカ協会理事 淺野昌宏)

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