フォーラム

第4回フォーラム
「地域シリーズ第2回・西部アフリカ-西アフリカも面白い-」
日時: 2015年7月9日(木)14:00〜16:00
場所:国際文化会館 別館2階講堂
参加者:当協会会員、政府関係者、在京大使館など54名

当協会の大島理事長による開会の挨拶の後、モデレーターを萩原孝一(アフリカ協会・特別研究員)氏にお願いして討議を行った。

司会:淺野昌宏(アフリカ協会副理事長)
ご多忙の中、当協会主催のフォーラムにご参集戴きありがとうございます。この地域シリーズでは、昨年11月に第1弾として東アフリカをやり、今回は第2弾として西アフリカを議論したいと思います。エボラのほうも下火になってきているようで、再度、西アフリカというところに目を向けてみようという観点からの議論を期待いたしております。
なお、このフォーラムはご覧のように、こういう形のセッティングをしておりますのは、平場で闊達な議論をして戴きたいという趣旨でございますので、よろしくお願いいたします。それでは開会にあたりまして、理事長の大島賢三よりごあいさつ申し上げます。

開会の挨拶(要約) 大島賢三理事長

会員の皆さま、平素のご支援・ご協力に心から感謝を申し上げます。まず、ご報告を申し上げますが、アフリカ協会の西新橋の事務所は、今まで手狭で不自由しておりましたが、幸いにも同じビルの一階下のスペースが空き、引っ越しをいたしました。少し広くなり会議室、応接室もできました。どうか機会がございましたら、新しい事務所にお立ち寄り戴ければ幸いでございます。
今日は、地域シリーズ第2回ということでございます。昨年11月、東アフリカの消費財市場に焦点を当て、第1回目を行いました。今日は西アフリカに注目して議論するということでございます。
西アフリカは、日本からは、地理的にも少し遠く、どちらかというと我々の関心はインド洋に面した東部アフリカ、あるいは南部ということになりますが、大変大きなポテンシャルを秘めた地域であり、既に関係もいろいろと深まっており、新しく注目を集めているところでもありますので、今回はここを議論することになりました。ナイジェリア、ガーナ、コートジボワール、それから最近エボラ熱で問題がありましたけれども、リベリア、ギニア、シエラレオネ、セネガルなどがあり、大きなポテンシャルを秘めている地域であるということで、ぜひ忌憚のない意見交換が行われれば幸いでございます。
なお、今日はセネガル大使館、それからリベリア大使館の皆さまにもご出席戴きありがとうございます。パネラーとして会宝産業(株)会長の近藤さんには、わざわざ金沢からお運び戴きどうもありがとうございます。JETROの関さん、豊田通商の鈴木部長にもご参加戴きました。どうもありがとうございます。
なお、もう既に皆さまもご案内のことと思いますが、9月の初めに在京ガーナ大使館が主催して、外務省、経済産業省、JETRO、JICA、それから経団連等々の団体が支援をする形で、ガーナに対して投資ツアーのミッションが企画されております。この種のミッションが今後ともどんどん派遣をされることは喜ばしいことと、思っています。どうぞ今日はよろしくお願いいたします。

モデレーター:アフリカ協会・特別研究員 萩原孝一氏(要約)

私は3年前まで国連工業開発機関(UNIDO)に27年間勤め卒業しましたが、ウィーンの本部で仕事をしたのはわずか6年半、残りの20年はすべて東京のUNIDOオフィスで仕事をしていました。最後の10年間ぐらいは東アフリカを中心に日本からの投資促進とか、技術移転の仕事をしていましたが、なかなか結果が出ず、忸怩たる思いとフラストレーションの日々が続いていました。
1990年の初頭に、アフロ・ペシミズムが吹き荒れる中で、日本が敢然と、アフリカをもう一度表舞台へということで、1993年に第1回目のTICADが、それから5年に一度ずつ開催されました。ちょうど私がウィーンから帰った頃であり、いよいよアフリカの時代だという思いで仕事をしたのですが、なかなか結果を出すのが難しく、また、企業にとっても難しいものがありました。
今や、アフリカ全土で約100万人の中国人、対する日本は約8,000人という、絶望的と思えるような状態の中で、これから日本がいかにアフリカでプレゼンスを高めることができるか。人口予測によると、2050年には、世界中で生まれる子どもの2人に1人はアフリカ人である可能性が強いと言われています。つまり2050年の時点で、アフリカがどうなっているかは、おそらく人類の浮沈を握ると言っても過言ではないと考えています。
では日本はこれからどうするのか。この20年間の日本は、「アフリカの状況がもう少し良くなったら」、「インフラがもう少し良くなったら」、あるいは「治安がもう少し良くなったら」、「国が安定したら」、いわゆるwait-and-see attitudeを取っていたと思うのです。その間にお隣の国が果敢に攻め入りました。ある人は、日本は、対アフリカビジネスでは土俵に上がっていないと言います。不戦敗の歴史を連ねていたという言い方もします。このままではいけないというふうに、しみじみと思います。
前回、東アフリカをやりました。日本から見ると、東アフリカのほうが何となく近く、親しみもあり、英語圏で、ビジネス的にもそこそこの結果が出ているのではないかと思いますが、西アフリカと言うと、私も実はほぼ素人に近いので、今日いろいろと勉強させて戴きたいと考えている次第です。
今日はそういう意味で、とても素晴らしいゲストスピーカーの3人にご登壇戴きます。トップバッターは会宝産業の近藤会長にお願い致します。

パネラー:会宝産業株式会社 代表取締役 近藤典彦氏 (要約)

私は自動車リサイクル業を46年間やっている者ですが、この自動車リサイクルをやっていますと、海外での部品注文が非常に多いのです。そして金沢の片田舎でやっているのですが、今75カ国と取引があるようになりました。ということは、日本の自動車がいかに海外に多く出されており、またその中古品としての価格の安いもの、それから性能のいい日本の部品を欲しているところがたくさんあるということだと思っています。地球上に11億台以上の車が走っており、その中で日本車が35パーセントぐらいあると聞き及んでいます。そうしますと、3億8,500万台の日本車があるとするならば、そこに我々は中古の部品を供給し、発展途上国を応援することによって、将来的に所得が上がってきた時に、日本の新車がまた売れていくような、循環型の世の中ができればいいと考えています。
もう1つ、私は47~48カ国ぐらい回ってみたのですが、その中で日本の自動車リサイクル事業というのが一番進んでいるように思うのです。ドイツもオランダもアメリカもありますが、海外に向けて何かをしようというところは非常に少なかったです。それと日本は、2005年に自動車リサイクル法というのができて、我々の業界にとっては、ある意味では非常に厳しい目で監督されました。もちろん昔は解体屋と言われたような業種ですので、そこに法の網がかぶったことにより非常にいい「静脈産業」というか、「リサイクル事業」が生まれてきたのではないか喜んでおります。
そんな中で部品を海外に出しているわけですが、私はアフリカという所はこれから大きなポテンシャルがあるのだろうと思います。しかし、なかなか行き難い、我々にとって馴染みのない場所だったり、観光では行けるかもしれませんが、ビジネスで行こうとするとやはり非常に難しいという思いがあったわけです。
しかしながら、人のご縁というのは不思議なもので、ある大手企業からのご紹介により、ナイジェリアで自動車のリサイクル事業を始めたいという人がおり、この人は本当に安心できるから、ぜひ紹介しますということでつながりができました。私の中では自動車リサイクル事業をやってくれる処があれば、どこででもお教えしようという強い思いを持っておりました。というのは、日本の精緻なリサイクル事業を広げていけば、まさに循環型社会という事が起きる可能性があるのです。我々はよく動脈産業、静脈産業と言うのですが、人間の体と一緒で動脈と静脈と考えて戴きたいのですが、新しいものを作る動脈的な役割をする産業と、それから我々がいらなくなったものを静脈側として、また産業にして行くものとがあると思うのです。
ところが今までは、ずっと一方通行で、新しくできたものだけを販売していた。ところが我々はこれから、この静脈産業をしっかりつくり上げていかないと、循環する社会になっていかないし、環境問題にも影響していくのではないかという思いが私の中にあります。そしてどこの国でもいいからそういうリサイクル事業を学びたいという人にはお教えしようということで、金沢にIREC(International Recycling Education Center)というリサイクルの研修センターをつくり、海外の人たちにも教えています。
お手元の資料の2ページ目の裏側に、会宝産業の概要が書いてありますが、日本は皆さんのいらなくなった車から、非常にいい部品が出てくるマーケットなのです。それを世界に届けているという仕事をしております。次に4番目の絵ですが、海外にも我々はKRAシステムというシステムを作りながら、全世界につながりをつくっていっております。
その次の画面はJICAさんのご協力により、BOPビジネス調査事業に採択されましたものです。ナイジェリアで、日本から初めてリサイクル事業を教えに来るということで、新聞にも載ったり、テレビも来たり、非常に騒がれたのですが、先ほど来の話の中に、結果が出ないというお話がありました。実際私も日本人的な考え方でいろいろとお付き合いをし、あるいは指導をしたのですが、やはりなかなか上手くいかない部分も正直言ってありました。
ただ向こうの人たちと話をしていると、他の国ではなくて、ぜひ日本人に来て欲しいと言うようなことをよく言われます。私も盲蛇に怖じずかもしれませんが、何も分からないままで出ていったわけなのですが、やはり日本人の技術とか考え方、そういうものに非常に共感してくれております。ただ、共感はしてくれるのですが、それをどうやって一緒にやるかという点では教育が足りないのではないかと感じるところがあります。それで、とにかく多くの人に来て戴いて、この静脈産業側のリサイクル、要するに循環型社会を作ることに目覚めて戴きたいので、IRECを作りました。
今、多くの海外からの研修生もきますが、ナイジェリアでは2012年に、環境配慮とか、資源循環型自動車リサイクルシステム構築のための技術者と行政官が3人研修にきました。
このときにはナイジェリアのNAC(国家自動車評議会)の行政官がきて、まず自動車リサイクルに必要なことを学んで行きました。その後2013年の5月に、今度は自動車リサイクルシステム構築技術者として8名研修生を呼んで、研修をしました。それから去年は7月に、将来リサイクル事業と、研修センターを作ろうということで、中堅行政官14名がきて、すごく勉強して帰りました。
私はそこで合弁会社を作ってでも、何とか伝えしようと思ったのですが、ちょっと正直言って、動きが鈍くなっています。しかしながら、私はやってよかったなと思うことが1つあるのです。これは先ほど申しましたように、NACという処と深い関わり合いができました。そしてこの人たちは本当に日本人の心というものを理解してくれて、そして将来、定年退職したら自分は絶対この仕事をやるということを言ってくれた行政官がいました。これは私、すごくうれしかったです。これから日本人が、アフリカに対してやれることは、日本の素晴らしい精神と、それから緻密な精緻な仕事内容というもの伝えることであり、この点が大事なのではないかと思っています。
この下の写真を見ていただくとお分かりのように、バイクとか自動車がいっぱい置いてあります。日本も40年ぐらい前はこのような状態だったのです。日本がなぜこんなに綺麗になったかというと、やはり自動車リサイクル法という法律ができてこんなに綺麗になったわけです。そしてブラジルのほうでもJICAさんとの協力の下、リサイクル工場と、教育センターをつくる準備が始まっています。ナイジェリアでも、このような砂漠みたいな所にいっぱい放置されているので、これを何とか日本のような綺麗な状態を作り上げるために、我々がお手伝いできるものがあるのではないかということでやっております。
最後のページを見て戴ければお分かりのように、人の手で自動車を解体していくということはみんながやれるのです。日本にはニブラというすごい機械でつぶす方法があるのですが、我々が40年前にやってきたようなことを教えてあげるだけでも、アフリカの自動車の循環というものは作れるのではないかということを今感じている次第です。そしてこの写真は、『カンブリア宮殿』に去年の9月の4日に出た際に、テレビ東京が一緒に付いてきて、ナイジェリアの取材をしたところです。
私が一番今大切に思うのは、日本というのは非常に豊かな平和な国です。これからどうなるか分かりませんが、今は平和で豊かな国だと思います。我々の昔からの教えられてきた精神、日本人の精神、和の心であったり利他の精神、人を思いやる、その思いをこの仕事、我々の静脈産業であったり、あるいはいろいろな技術であったり、商品であったり、それに乗せて、いかに日本と日本人が素晴らしいかと言うことをお伝えすることによって、一緒になって成長していけるのではないかということを、私はこの自動車リサイクル業を通して思いました。そんなわけで我々は、どんなところであろうとそういう日本の素晴らしいものを世界に広めていきたいということで、活動をしております。

モデレーター:萩原孝一氏

近藤会長、ありがとうございます。私が初めてUNIDOに赴任したときに、最初に在籍したセクションは、Feasibility Studies Branchというところでした。私がまず一番初めにやったことは、UNIDOが手掛けたフィージビリティスタディーズを片っ端から読むということをやりました。驚きました。ほとんどフィージブルである、バイアブルであるという結論が導き出されました。たぶん250件ぐらいだったと思いますが、その中で、インプリメンテーションステージまで行った案件は、僅か5パーセントぐらいでした。Feasibility Studies Branchの経験から数字で物を見る事に洗脳されて、日本に帰って東京事務所で仕事をしているときも、やはりそういう視点で投資促進事業を見ていました。その中で、私は近藤会長に初めてお目にかかり、この人ちょっと狂っているかもしれないという思いを正直抱きました。私の知っていた会社では、「殿、ご乱心」とばかりに止める人たちがいて、前に進まないというのが通例でした。そこで、興味津々で金沢まで行きました。びっくりしました。言うなれば、社員一同狂っているのです。
見事にできることから着実に始めて、今では、我が国のBOPの旗頭、あるいは静脈産業の旗頭的な会社という位置付けを確立しています。私にとってこれは意外なことであり、ありがたい成果の一つでした。他の追従を許さない決定的な技術力を持っていれば、熱情だけでここまでいくという、そういう意識すら放棄させる素晴らしい会社であると思います。
それでは次に、西アフリカのフランス語圏のビジネスに関して、豊田通商の自動車本部戦略提携事業部から鈴木さんをお招きしております。よろしくお願いします。

パネラー:豊田通商株式会社 自動車本部戦略提携事業部 部長 鈴木健司氏 (要約)

私は自動車本部に属しておりますが、フランスのCFAOとの提携窓口を担当している部で、自動車に限らず全社対応の窓口です。それからこの4月に社内でアフリカ極が立ち上がりました。弊社はほかの商社と同じように、商品ごとに本部がありますが、それを地域軸で経営して戦略を作っていくということで、アフリカ極を立ち上げました。私はそちらのほうの事務局長も兼任しております。
本日は、「西アフリカもおもしろい」というタイトルですけれども、個人的には「西アフリカこそおもしろい」と申し上げたいぐらいポテンシャルの多い地域、逆に言いますと言葉の問題もありますので、東に比べるとちょっと日本企業にとっては手が出しにくい地域であったのだろうと思います。弊社の西アフリカでのビジネスにつきまして説明をさせて戴きたいと思います。
弊社のアフリカでの歩みを簡単にまとめました年表です。一番左の上が、1922年、初めてエジプトに綿花を輸出したというのが、弊社のアフリカビジネスの取っ掛かりです。これは西アフリカではないのですが、これがアフリカ大陸との一番最初の接点だったということです。
その次に1964年、日本から車を初めて輸出いたしました。これが自動車分野での一番最初の取っ掛かりという、2番目の節目です。その後は、日本で生産された日本車を世界各国に輸出するわけですが、アフリカにも輸出していき、1970年、80年と輸出のビジネスを中心にやっておりました。
90年代になると、アフリカの中で内紛があったり、経済的な問題があったりして、市場自体がシュリンクした時期があって、この時期、ほかの日系企業がかなり撤退された中で、弊社は何とかそこを踏ん張り2000年まで持ちこたえました。
2001年にイギリス企業のロンローが南部アフリカで自動車ビジネスをやっていましたが、ここの自動車部門を買収いたしました。ここが一つの大きな転機で、今までは日本から物を輸出するビジネスをやっていたのですが、それに対して現地の企業を買収して、現地の経営を開始したということ、ここが大きな節目です。
その後、現地への投資を進めて、輸出型のビジネスから、現地で経営して現地で物を売って、現地でお客さんにサービスをしてゆく事業形態に変わっていきました。一番右下に書いていますが、2012年に、ケニア政府と包括契約を締結しました。これは何かというと、ケニア政府が「ビジョン2030」という、国家ビジョンを持っていて、これに対する民間側の包括パートナーとして覚え書きに調印し、国の成長を助けるようないろいろな分野での事業を推進しているということです。それから同じ年なのですが、CFAOを買収いたしました。現在97.4パーセントのシェアを持っております。こんな形で、アフリカのビジネスを推進してきました。
アフリカビジネスを推進していく上でのビジョンとして、3つの柱を掲げています。一番左が「事業の創造」です。これは民間企業として当然のことなのですが、利益を挙げないと会社として存続ができない、従って事業をするということです。その次、真ん中が「人材育成」です。それから右にあります、「社会貢献」です。やはり継続的に事業を行っていくには、単に利益追求だけではなくて、現地の中に入って、良き市民として現地の人材育成を行っていくことが絶対に必要だということです。同時に、良き市民として社会に貢献していくことも必要だと考えます。この3つを同じ重要性を持ったビジョンとして2013年の初めに策定しました。
弊社の事業展開を説明します。まず自動車関連の取り組みですが、左のほうが自動車の生産のバリューチェーンと呼んでいるものです。これは、完成車の組み立て工場です。その周辺として、材料調達、保管、最終組み立ての前のサブアセンブリ、組み立てた車の輸出、運送というロジスティックスの部分など、いろいろな事業がありますが、これを南アフリカでやっています。
それから右側が、販売のほうのバリューチェーンです。新車の販売に加えて、新車を販売するときに、ファイナンスを付けて割賦販売ができるようにする機能、それから販売した車をサービスする、例えばボディーに傷が付いたときには板金塗装の修理をする、あるいはその車を買い替えるときに中古車の下取り・販売など、新車の販売だけではなくて、関連するいろいろな事業があります。この様にしてアフリカ全体で取り組んでいます。
次が、自動車以外でインフラ関係の例です。左側がエジプトでの取り組みです。今までインフラ関係、エネルギー関係で31件、約2,000億円を受注しています。右側がケニアの地熱発電です。今年の2月、地熱発電所をオープンいたしました。この地熱発電所がケニアの電気需要の44パーセントを占めるような大型の案件となっております。その下が、関連リリース、ケニア政府との包括と書いてありますが、先ほど申し上げましたような国の成長を助けるような産業取り組みです。
次に、CFAOはフランスの総合商社で、連結会社数145社、売り上げ約4,000億ユーロ、従業員数12,000、フランスの株式市場にまだ上場しています。うちが97パーセント持っているのですが、上場してフランス企業としてのアイデンティティーを維持した形で運営しています。事業分野を説明しますと、左の上が自動車、建設機械、農業機械等々の機械類です。右の上が医薬品で、これは薬や医療機器です。下が飲料、文具等、消費財です。飲み物、食べ物等々の販売、一部、生産も行っております。
このCFAO社と組んで、西の方を強化しており、まず自動車分野では、53国をカバーしており、従業員はアフリカ大陸で14,600人です。自動車に関してだけで取り扱いブランドは24ブランド、販売台数が92,000です。
次に、アライアンスの事例ですが、こちらは医薬品、これは西のほうを中心にヨーロッパで仕入れて、集中在庫基地からアフリカに毎日出荷しています。取り扱いメーカーが450、販売網として20カ国プラス、フランス海外県が7カ国です。薬局等々に売っており、約5,000店の薬局が対象とし、取扱い商品は30,000点です。
その下が小売事業で、フランスのカルフール(世界第2位の小売チェーン会社)とJVでアフリカに出店を進めており、今年の10月に第1号店がアビジャンでオープンします。土地面積が19,000平米、店舗面積が10,000平米ぐらいのフルモールで、ハイパーマーケットにプラスして、ブティックやフードコートもあり、合計で50店ぐらい入るモールになっています。これを今後10年間で70店ぐらい作り、10,000人ぐらいを雇用してゆきます。
次の例は、製造販売です。これはCFAOが、BICのボールペンとか、ロレアル、ハイネケン等々の工場を持って生産をしていますが、私どもはトヨタのDNAがあって、生産とか改善とか、そういうのが強いので、彼らの工場の効率アップ、あるいは改善、安全等々を手伝って事業を拡大していこうということです。
それから下のほうの、ヤマハの2輪製造・販売業はナイジェリアで、ヤマハとJVで2輪車を今年の後半から生産し、2018年に70,000台を目標としています。最後に我々のビジョンの2本目、3本目の重要な柱であります「人材育成」と「社会貢献」についてちょっと触れさせていただきます。
左のほうが人材育成・教育支援ですが、トヨタケニアアカデミーをやっています。もともとは自動車のサービスのメカニックの養成所だったのですが、それを拡大して、自動車だけでなくて農機、建機のメカニックの養成も含め、かつ当社の人間だけではなくて外部の人にも開放して、オープンなアカデミーをつくりました。さらにメカニックだけではなくて、マネジメントコース等々も今準備しており、これは地域の人たちのスキルアップ、雇用の育成を目的としたものです。
右側が「社会貢献」のベンチャーファンドですが、サスティナブルな社会貢献のために、現地の事業に出資、あるいは支援する形で、草の根産業を育成して雇用づくりに貢献したいということです。1号案件、第2号案件は、ザンビア、エチオピアで具体的にスタートしました。こんな形で事業の創造と人材育成、それから社会貢献、この3本柱で、西アフリカもサスティナブルに事業を行っていきたいと考えております。

モデレーター:萩原孝一氏

鈴木さん、ありがとうございます。「西アフリカもおもしろい」ではなくて、「西アフリカこそおもしろい」という面白いご指摘です。
いろいろとご質問がおありかと思いますが、関さんに、まとめのような形になりましたけれどもよろしくお願いします。

パネラー:JETRO 海外調査部中東アフリカ課 関隆夫氏 (要約)

お手元に印刷した資料が配布されています。改めて頭の整理の意味で資料を作りました。
西アフリカが私たちにとって、心理的にやや遠く感じてしまうのは、東アフリカよりももう一回りぐるっとケープタウンを回っていかなければいけないからです。逆にこの地図を見ながら、西アフリカの攻め方を考えると、そこはヨーロッパ、あるいはアメリカの拠点からカバーすればよいではないかという視点も何となく見えてきます。
1枚めくって戴いたところに、2013年、2014年に、世界の調査対象国の中でビジネス環境を改善した国々として10カ国挙げられており、色を付けているところ、ベニン、トーゴ、コートジボワール、セネガルの西アフリカの4カ国が入っています。もちろんランキング全体としては下から数えたほうが早く、決してビジネス環境全般は優しいものとは言えないのかもしれませんが、政府、あるいは政府関係部門などが一生懸命ビジネス環境を整えようとしているのが見て取れます。特にどの国もビジネスを開始する手続き面での迅速化や、少数投資家の保護など、少しでも投資をしやすい環境というものを徐々に整備しています。
その次のスライドに、私が話をさせて戴くときに好んで使っている地図を載せています。西アフリカだけを切り取ってみても、およそアメリカぐらいの広さはあるところから、いかに地理的に大きな範囲の中でビジネスを考えるか、あるいは物事を考えていくことが必要ということになります。
西アフリカ諸国の中で冷静になって経済規模を考えると、ECOWAS諸国の中でやはりナイジェリアは断トツの経済規模を誇ります。ナイジェリアとそれ以外のECOWAS諸国には歴然とした差があるというのが一つです。2014年にナイジェリアがGDPの再計算の結果を発表したところ、ナイジェリアはサブサハラアフリカで南アフリカを抜いて、一番経済規模が大きく、全体の3割を超えて35~36%を占めました。これに続くのが南アフリカで20%強。サブサハラアフリカの中でもこの2ヵ国だけで過半を超る経済規模です。
ではもう一歩さらに冷静になって、ナイジェリアと日本の経済規模と比べてみると、ナイジェリアがサブサハラで一番と言っても、大阪府と香川県とを合わせたぐらいです。さらにナイジェリア以外の西アフリカの国々を全部足しても、実は茨城県と同じぐらいというような規模になります。
その下に今度は人口で見ていますけれども、ナイジェリアは日本を上回るような、1億5,000万人を超えるような数字ですし、ナイジェリア以外を合わせてみると、やはり日本を超える人口です。しかし、これだけの人口がいてもアメリカと同等の広さの中に、都市を中心に散らばっている状態なのだということをまず踏まえておきたいと思います。
その次のページですが、アジアと比較して、西アフリカのECOWAS加盟国の経済成長率と、人口増加率と、丸の大きさで1人当たりのGDPの規模を表しています。アジアの国々は過去10年ぐらい、どんなふうだったのか、西アフリカの諸国については、IMFが出している数字から今後5年間(2015年から2020年の間)、どのような経済成長を遂げていくのだろうかというのを図示してみたものです。
時間の関係もあるので、主要な国、より皆さんの関心が高い国々で説明しますが、いずれの国も過去10年のアジアの国と遜色ないような経済成長率が見込まれているということが挙げられます。また人口増加率というのが横軸に取ってありますが、人口増加よりもGDP成長のほうが高くなっており、基本的には1人当たりも豊かになっていくだろうと思います。もちろん配分(経済格差)の問題は国内のマネジメントの話で、ここでは触れませんが、経済成長と人口増加という意味では少なくとも1人当たりで今後も成長が見込まれているのだということを一つ指摘させて戴きたいと思います。
その次からのスライドは、ナイジェリア、コートジボワール、ガーナ、セネガルに関して、簡単にまとめたもので、ナイジェリアは今申し上げたとおり、アフリカ随一の巨大市場なのですが、ビジネスを実際にやっている方に聞くと、難易度が高いく、まず港で物を通関すること一つを取っても難しいというような話を聞きます。
気を付けなければいけない要因として、足元の石油価格の問題があります。アフリカ最大の産油国なので、当然のように石油価格による影響が出始めているのではないかという動きも見られます。先月、ナイジェリア中銀から、ドル決済はやめてナイラに替えて外貨を決済しなさいという通達が出ましたが、少しずつ石油収入が、まず直接的に政府の財政に跳ね返ってきており、石油輸出が貿易収支、ひいては国際収支、外貨繰りに影響を及ぼす話になります。
当面は、石油が高かったときの余剰金が積んであり、そちらである程度は持ちこたえるのではないかと、12月、1月ぐらいの段階では見込んでいましたが、これは今後まだ引き続き要注意というような状況です。ただ、一時的に石油が下がっても、中長期的には石油を持っているというのは底堅いという部分もありますし、加えて市場という意味で言えば、何といっても2030年には4億人を超え、インド、中国に次ぐ巨大な国になってくるものですから、そこでも何かしらやりようというか、展開を考えられるということなのかもしれません。
3番のところに、それぞれ各国、最近の日本企業のビジネス事例というのを付けてあります。電通とか、日産自動車などに加えて、つい先ごろホンダが年間1,000台ほど現地で組み立てをすると一部ニュースにもなったような動きもあります。
それからコートジボワールです。西アフリカのフランス語圏の中でどこかに拠点を置くとすれば、おそらくセネガルかコートジボワールがまず検討の対象になると思います。コートジボワールは、一時期政治が不安定になって、アフリカ開発銀行などもチュニスに移動していましたが、再びコートジボワールに戻ってきており、何といってもフランスの遺産と言うべきか、フランス系の人材や産業の厚みと言ったらいいのか、集積と言ったらいいのか、西アフリカでは随一ではないかと思います。また電力輸出国だったりもします。アフリカは、どこでも電力不足というのは大問題ですが、コートジボワールはその面でも周りに比べると比較的よいのではないかと思います。アビジャン港からのトランジット貨物の数字も付けてあります。後背地であるブルキナファソ、マリ、ニジェールへの玄関口といった役割もあります。投資環境も改善しており、NECや、三菱商事も活発に動いています。徐々に、商社が事務所を再開する動きがありますので、コートジボワールを拠点に西アフリカ、フランス語圏を考えていくのだろうと思います。次回大統領選は2015年10月です。アフリカでは緊張が高まる瞬間でもあります。これから何か始めるのであれば、選挙のタイミングは常に見た方がよいと思います。
ガーナですが、ガーナはそういう意味では次回大統領選挙というのは2016年です。次にまた与野党が逆転するのではないかと言われていたりもしますが、ガーナの場合、民主的な国としての評価が確立しており、仮に与野党が逆転したとしても、ガーナが混乱するようなことにはならないのではないかというのが、大方の評価かと思います。
ガーナといえばやはりカカオが有名なのですが、それ以外に金と、石油があります。この後、数年経つと、石油の生産がどっと増えてくるので、将来的にはガーナ経済への貢献で金を抜くと言われていますが、いずれも一次産品ですし、現在の価格というところに大きく左右はされてしまいます。残念ながら、現政権の経済運営はどうなのか、消費者物価という意味ではかなり高い、消費者物価指数であれば16.9%、外貨準備高は、2014年12月は輸入の3.2カ月分ですが、これが14年の夏には3カ月を割り込んでいて、2.5~2.6カ月という数字で、こういったところもちょっと懸念材料です。とは言え、日本企業も比較的熱心に、積極的にガーナに取り組んでおり、資料にはビジネス事例を参考に掲載してあります。金、石油、カカオといったように価格変動に左右されると言いましたが、逆に言うと石油一本足ではない国際商品を抱えているとも言えます。
その次はセネガルです。セネガルは、おそらくフランス語圏でコートジボワールに拠点を持つかセネガルにするかの選択肢になりますが、残念ながらほかの国に比べると、セネガルのみの人口を考えたときにやや迫力がないのではないかと思います。ただ、セネガルもビジネス環境の改善意欲は非常に旺盛なものがあり、またこの国も非常に安定した民主主義が成熟した国というとらえ方をされています。2035年に向けて、今一生懸命、経済改革をしており、セネガル新興戦略として2番のところに書いてあります。こちらでも、コメの生産の倍増とか、域内貿易ハブとしての地位を確立すべく港の改修だったり、大きな課題の電力供給の改善に取り組んでおり、一生懸命、サル大統領の下でやっているところです。日本企業のビジネス事例については、JICAのスキームなどを使いながら、カゴメが三井物産と一緒にトマトの栽培・加工事業に取り組んでいます。
北アフリカに掛かっていますが、モロッコです。モロッコについては、これも最近よくいわれていることですが、モロッコ関係の金融機関とか、あるいはロイヤル・エア・モロッコなどが西アフリカをずいぶん結んでいて、西アフリカへのゲートウェイみたいな売り出し方を一生懸命しています。実際、対外投資残高を見ると、企業によってはモロッコのフリーゾーンに物を置いておいて、そこからアフリカの他地域に出していくといったようなことをやっているところもありますので、西アフリカということを考えた場合に、モロッコというのも一つ活用の仕方があるのではないかと思います。
最後にJETROがやっていることを紹介します。アフリカビジネス支援サービスとして、現地で拠点設立などをするに際して、出張旅費や調査費を一部補助しています。企業の方が抱える課題とその解決方法をJETROに共有することをお願いし、JETROは広く一般化して日本企業のビジネス展開の知恵とする代わりに若干の経費を支援する仕組みです。
その次のページでは、BOP/ボリュームゾーンへの販路開拓の取り組みです。こんなことに取り組んでみたいというものがありましたら、ぜひJETROに一度相談をお寄せいただければと思います。
最後のページですが、現地ミッション・展示会への参加です。まさに西アフリカで今年度、11月のラゴス国際見本市2015でのジャパンパビリオンは出店料無料、スペースはJETROで用意します。これにあわせて受容性調査、例えば、日本企業の食品や文房具などが現地でどういった形で受け入れられるか、受け入れられないかという事業を組み合わせたり、あるいは大使館と共催で日本食のデモンストレーションもその場でやったりする予定です。
また農業関連で、西アフリカ農業関連ビジネス開拓ミッションを8月に行います。これも現地の農業生産法人、あるいは政府関係の方々や、実際にご参加戴く方のご意見などもお聞きしながら現地で有効に使ってもらえるようなミッションを今組んでいるところです。

モデレーター:萩原孝一氏
関さん、ありがとうございました。三者三様、非常に個性豊かな面白いお話が続いたと思います。それでは議論に入ります。発言される前に、名前と所属をお願いします。

山野裕治氏 サントリー食品インターナショナル(株)経営企画本部グローバル事業推進部
豊田通商さんにお伺いしたいのですが、フランスの会社を買収したことを契機に、アフリカへのビジネスを拡大されたということなのですが、アフリカビジネスのマネジメントについては、フランスの会社を経由してビジネスの管理をされているのか、それとも日本側から直接されることがあるのか、どういうふうなフローになっているかというのを参考までに教えて戴きたいと思います。

パネラー:鈴木健司氏
基本的にはフランスの会社をすべて経由してやっています。日本から見るよりも、言葉の問題もあるし、あるいは事業基盤も既にあるので、ヘッドクオーターがパリにあって、事業会社が145社、アフリカ大陸にあり、そこでやってもらうというような感じです。

山野裕治氏
東アフリカのほうには、もともとビジネスがおありだったということだと思いますが、そちらは日本からということでしょうか。

パネラー:鈴木健司氏
そうです。

白井純一朗氏 伊藤忠商事(株)金属カンパニー
鈴木さんと関さんにお伺いします。説明の中で、自動車や生活資材、そういったものが主な消費資材になってくるというのが当方の印象なのですが、資源ビジネスに関してどのようなポテンシャルがあるのを教えて戴きたいと思います。

パネラー:関隆夫氏
例えば西アフリカではまだ見られないのですが、東で言えば経済回廊開発計画という形でJICAや多国間のドナーが、やっていますけれども、あれも道や橋ができただけではダメで、さらにその奥で、道ができたことによって今までは開発できなかった鉱山なり、さらにその鉱山から肥料を作るとか、何か別の展開が期待されます。
そういう意味で、西にどんな資源があるのか、不勉強で十分に理解をしていませんが、回廊沿い、あるいはその先、周辺で何かついでにできてくると、より経済フィージビリティというか、経済性が上がってくるのではないかと。そういうところがリンクしているといいなと、これは個人的願望ですけれども、考えています。

パネラー:鈴木健司氏
私も関さんがおっしゃったことに非常に近い意見なのですが、まず交通インフラが進んでいないというのが決定的な問題としてあると思います。それから電力事情があり、鉄鋼産品を加工するのに電力がいるけれども、それがない、運ぶ道路もないというのが一つです。
あとは港の問題もあると思います。この辺りは来年、TICAD VIがあって、前回のTICAD Vのときにも、かなり日本政府として大きなコミットメントをしたので、それも含めて欧米のいわゆるサスティナブルな支援というのが今後あるとすると、インフラが充実してくる。ネット検索すれば直ぐに出てくる筈ですが、内陸部を含めて資源は豊富にあるというのは間違いないので、インフラがキーではないかと思います。

モデレーター:萩原孝一氏
今、アフリカはバブルの状態にあり、専門家に言わせると、ある、ないではなくて、いつはじけるかが問題だという説があります。翻ってみると、このバブル現象というのは2006年ぐらいに突如、アフリカから出る資源の高騰によるものだということで、資源狙いの欧米、あるいは中国、韓国の進出に引きずられるような形で、西アフリカも含めて一見アフリカが経済発展しているように思えるのですが、私はどうしてもかつての資源の呪いの再来というのがもう1回来るのではないかということを危惧しています。黒河内大使、かつてナイジェリアの大使をされていましたが、資源に限らず何か総合的にご意見はありませんか。

黒河内泰氏 元ナイジェリア大使
私が現地でいろいろ見ていたときの経験からすると、多くの方が無駄なようでも約1年間、わーっとたくさん見ていると、どんなポシビリティがあるか、どんなフィージビリティがあるか、リソーシーズがあるか、調べていないものがまだまだたくさんあるだろうと思います。欧米の先進国がいろいろ探査して、いろいろな資源地図をつくり、何か出てはいるのだけれども、その中に多くのものが取り上げられないままになっています。これをもっとゆっくりと調べることに全力を挙げるなら、私は、次に出るステップのスプリング・ボードになるのではないかという気がしています。

Mr. Ngor Ndiaye 在京セネガル大使館 一等書記官
今日のフォーラムは、日本の人達が西アフリカをどの様に考えているのかを知ることが出来る、自分にとっては大変面白い機会です。お呼び戴いた事に感謝します。
プレゼンに関して言えば、西アフリカについて難しく考えられている様ですが、それは、State by Stateで述べられているかだと思います。自分たちはもうこの段階を過ぎ去っていて、地域共同体ECOWASとして考えています。我々は、間もなく同じパスポートを持ち、同じ通貨を持ち、同じ関税率を持ち、全て一つの地域としてやって行きます。若し、ナイジェリアに投資すれば、15ヶ国に投資したと同じことになります。セネガルやリベリアに投資しても同じです。何処かの一つの国に輸入すれば、15ヶ国に輸入したことになります。我々は3.14億人の市場であり、日本の1.27億人よりも大きな市場です。西アフリカは何処の国に行っても同じで、地域としては一つです。以上が、第1点です。
第2点は、資源投資についての質問がありましたが、西アフリカには皆さんが必要とするどんな資源もあります。モーリタニアからセネガルにかけては鉄の鉱床があり、オーストラリア企業5社がセネガルの金に投資しており、ロシア企業のルサールはギニアでアルミに投資し、オイルはナイジェリアにもセネガルにもほかの国にもあります。オイルがあっても取り出せないではないかと言われるかもしれないが、我々は、国家の建設中であり、独立以来いろいろの困難を経験しながらも、教育や訓練を施し、自分たちで採掘できるようにと頑張っている。これは既に取り組んでおり、数年の内には、アフリカも変ってきたと理解してもらえるだろう。
第3点は、港です。セネガルには大きな港があり、これは玄関口の役割を果たし、内陸国にも繋がっています。勿論、コートジボワールにも、ガーナにもあります。セネガルからの輸出入は容易であり、マリ、ギニア、モーリタニアからの貨物も捌いています。
最後に、10月28日、29日に第1回ECOWAS・日本 ビジネスフォーラムの開催を予定しており、外務省、JETROほかの協力も得て、500人規模でアフリカから100人を招き、ハイアットリージェンシーで行います。皆様、ご招待しますので、是非、お越しください。

モデレーター:萩原孝一氏
ありがとうございます。3つのポイントのうち、最初の「国ごとのアプローチではなくて、リージョナルなアプローチ」と言う話ですが、私の印象としては、果たして一枚岩なのかどうかという点で、どうしてもクリアでない部分があるのですが、どうですかね、皆さんの企業の中でリージョナル的なアプローチというか、リージョナルから何か風穴を開けると言うビジネス展開のご経験がおありになると思うのですが、いかがですか。

パネラー:鈴木健司氏
まったくそのとおりで、1カ国ずつは小さくても、やはり地域経済共同体というベースで我々は常に見ています。これは西もそうですし東もそうです。各経済共同体によって進捗度合いが若干違うというのはありまして、例えばSADCですと、国と国との通関のシステムが同じなので、すっといけます。それが東アフリカ共同体(EAC)ですとまだないとか、ECOWASですと税関のシステムはあるけれども、通関のクライテリアが違うので時間がかかるとか、アイテムごとに進捗が違うのです。優れているところもあれば優れてないところも、進んでないところもあれば進んでいるところもあるというところなのです。
おっしゃったとおり、我々は結構CFAO経由で生産もやっていますので、当然地域共同体の中で大きな市場をひとくくりで見られて輸出できれば非常にいいのですが、そのあたりの消費材のカントリー・オブ・オリジンの定義ですとか、そういうところはもう少し整備する必要があるのではないかと思っています。

富田義孝氏 元ギニア大使
今言われたとおりだと思うのです。私はギニアにおりまして、英語圏以外の西アフリカはだいたい全部行きました。現地で仕事をしていて感じたのは、もちろんギニアはECOWASに入ってないのですが、ECOWASとしてまとまって何かをやるという主張は確かにあるのです。しかし、では実際にそれで物事が全てうまくいくのか、例えば比較をするのは無理かもしれないけれども、EUのようなものと比較できるのかというと、まだまだ比較できない状況だと思います。一国一国がまだまだ独立心が強い国とか、まったく別の動きをする可能性があります。
それから西アフリカということで、先ほどのご説明の中で、フランス語圏ということがたびたび出ているのですが、やはりフランス語圏と英語圏の違いというのは大きいと思います。英語圏はやはりイギリス的な感覚で物事が動いています。フランス語圏については、やはりフランスの旧植民地だったということもあり、非常にその影響力は強いです。既に独立しているとはいえ、今でもフランスが経済的な支配をしているのだなと思われるようなことがしばしばあると感じていました。そんな中で、これからどういうことをやっていくのかということかと思います。
すみませんが、2つばかりお聞きしたいことがあります。漁業についてはまったく触れておられませんでしたが、何か将来あるのでしょうか。モロッコに漁業の基地みたいなものを置いて、そこから西アフリカのフランス語圏にいろいろ協力するなどです。実はギニアから、漁業の技術を研修するためにモロッコに派遣された人たちがいました。その人たちはモロッコで十分な教育を受けてきて漁業関係の指導者になっています。そういう例もあるので、漁業も将来的には何かあると思います。漁業というのは捕ることだけではなくて、漁船をどうするのかなど、必ず問題が出てくると思います。漁船の修理や漁船の新造です。それが1つです。
それから小さい話ですが、今セネガルで若い日本人の青年が何人かで新しい事業として日本食のレストランをダカールに開店するということで頑張っています。このレストランが成功すれば、いろいろなことに影響してくると思います。現地に出ていっている日本の企業の方々との関係とか、そういうのを通じてセネガルの人たちとの新しい交流ができていく、これがやはり一つ大事なことなのではないかという気がしています。私は一応、出掛ける前にその若者と話をして、モラルサポートはするからねと言って送り出したのですが、もう家族連れで行っており、覚悟はできている人たちなので紹介をさせて戴きました。
それから先ほど、資源はあるのかというご質問がありました。ボーキサイトは世界の3分の1がギニアにあると言われています。しかし、アルミが最近は少し重要度が下がってきて、興味が低くなってしまったのですが、興味があった時代でも、日本からは全然出てくる様子がなかったというのが実情です。治安状況が必ずしも良くないとか、経済状態が悪く採算がとれるのかとか、いろいろあったと思います。ただその中でも、アメリカはもう以前から出ており、日本が出ていかなければどうなるか、結局今は中国になっています。
ギニアの場合はボーキサイトのほかに、鉄鉱石もふんだんにあります。ダイヤモンドも出ます。そういう資源は十分出ますが、経済活動として有益なのかどうかは、私は分からないので、その辺はこれからの研究課題なのかなという感じがします。

モデレーター:萩原孝一氏
確かに資源があるかどうかといえば、たっぷりあるような気もするのですが、今までの歴史を見ると、やはり一次産品供給型の歴史を脱却していないといえます。ボーキサイトはある、では自国でアルミニウムに変える技術、あるいは経済力、地盤があるかどうかというのは疑問です。そこに日本企業が関与していくモチベーションはあるような気はします。豊通さんは、漁業のほうは何かお考えのことはありますか。

パネラー:鈴木健司氏
漁業はちょっと考えておりませんでしたが、加工も含めてビジネスとしてはあり得ると思っています。ただ、そういった加工食品が今非常に限られているという事情がありますので、今後新規に作っていくには、ほかに比べるとプライオリティーが若干低いのではないかという気はします。

モデレーター:萩原孝一氏
漁業も単に魚を捕るだけではなくて、かつてヤマハさんがセネガルで活動してフィッシング・ボートをたくさん作って、いろんな人々に益がありましたが、本当に今いずこという感じなのです。

澤村洋平氏 伊藤忠商事(株)建設機械部建設機械第一課
アフリカや西アフリカは面としてとらえるべきだと思っています。一つ一つの需要が少ないですし、集めてやらないとなかなかお金が合わないなと思っています。ですので、豊田通商に先にやられてしまって、ちょっと私は悔しい思いをしておりました。(笑い)
先ほど話が出たように、旧宗主国からマネジメントをしたり、ヨーロッパから見るべきだと思います。ただ、フランスの会社を買ってそこからマネジメントするのなら、確かにできるかもしれませんが、豊田通商が、そのフランスの会社をさらにどうマネジメントするかは、たぶん難しいのではないかと想像しています。
私からの質問ですが、この前実家に帰りまして、父親から、「お前は何を今やっているのだ?」と聞かれました。アフリカをやっているというと、「アフリカは今どうなのだ?」と聞かれ、「アフリカはこれからいろいろあるから面白い国なのだ」と答えたのです。そうしたら父親から、「お前、それ30年前からずっと言われているぞ!、明日見込める、明日見込めると」と言われまして、私からは、「いやあ、インフラがね」とか、今出てきたようなことを言ったのですが、「そんなことを言ったらアジアはどうなのだ、アジアでは、インフラは30年前は全然駄目だったけれども今はこんなに発展・発達しているだろう」と、父親から言われたのは、アフリカは何でアジアと比べて発達しないのだ、いつ発展するのかということですが、これに関して私はどう答えればいいのかをお聞きしたいと思います。

モデレーター:萩原孝一氏
すごく基本的な、素晴らしい質問だと思います。おっしゃったとおり、この20年、30年、日本は不戦敗を続けていて、「アフリカがもう少し良くなったら出て行こう」で、その時期を待つ間に、中国、韓国の大進出があり、今それに大慌てな状況だと思うのです。
サムスンの例を引けば、日本人として非常に学ぶべきところがあるのではなでしょうか。サムスンは、アフリカには1兆円の市場があると言って、冷蔵庫や洗濯機などの家電製品を、現地に適合する仕様にして供給しています。西アフリカは電圧が不安定ですから、先進国仕様ではすぐ壊れる。それで、サムスンはパワー・チャージャーを付けて壊れないようにしたのです。このような工夫に投資をしました。このメイド・フォア・アフリカ、メイド・バイ・サムスンから、今その成果として、サムスンの白物家電は壊れないとの評判になっています。これなどは日本が非常に苦手なことだと思うのです。電力不足、電力に問題があるというのは障壁だけれども、サムスンは見事にそれを逆手に取って、ビジネスチャンスとしている。この考え方の違いというのはすごく大きいと思います。
テレビが普及するときに、サムスンはサテライトチャンネル30局をサービスで付けて売りました。どういうことかと言うと、アフリカの地上波ではやっていない(アフリカの人が死ぬほど見たい)ヨーロッパのサッカー番組を自宅で見られるということです。これは本当に知恵の出し合いで、そういうビジネスチャンスをうまく使っていると思います。私は、日本のこの30年間、この辺の事で民間企業が見逃しているビジネスチャンスがあったのではないかと考えるのですがいかがですか。

大島賢三アフリカ協会理事長
今の問題について、私の個人的な経験を踏まえて言いますと、日本のアジアに対する開発援助政策と欧米諸国のアフリカやアジアへの開発援助政策の違いは、もう20年ぐらい前から援助国会合でずいぶん議論が出るのです。
当時、欧米が日本に対して言ったことは、インフラに対して円借款を出す日本のやり方は間違っているということです。もう少し無償援助をやれというのです。人道援助のところに金を出して、貧困対策とかをやるべきで、日本がアジアに対するインフラ援助をしこしことやっているのは良くないと、ずいぶん批判されました。しかし我々は間違ってないと主張しました。日本自身が過去に経験した発展の経緯は、しっかりインフラをつくって、それから産業が興って、投資が起こり、貿易が出来るようになって、それが経済を活性化させた、これが日本の経験だと。日本はこれを、アジアでやっている、これは間違ってないと思うと主張したのですが、欧米の人たちは、いや、ポバティーリダクション、貧困対策ということだったのです。
ずいぶん議論がありましたが、結果はそれではどうだったかというと、まさに今出ていると思います。これですべてを説明するわけではありませんが、欧米諸国は最近になって、やはりインフラは大事だということに気付いて、それらの政策を改めてきたというふうに聞いています。欧米諸国はアフリカに対しては、まさにそういうアプローチを取ったので、先ほどから議論が出ているように、インフラの整備も追いついていません。アジアではそこは成功しています。日本がすべてやったというつもりはありませんが、アジアの今の発展と、アフリカの発展のレベルのどこかに関係しているのではないかと思います。

澤村洋平氏
ありがとうございました。大変しっくりきましたので、帰ったら父親にそのように言います。

桧垣盛氏 伊藤忠商事(株)いすゞビジネス第一部いすゞ第一課
商社が関連する産業では、基本的な取引相手というのは、どこかの国・地域に投資をするという話ではなく、まず取引先を見つけるというところから始まると思います。
CFAOが豊田通商に買われる前は、私の部署ではCFAOと取引していて、西アフリカ地域では長く面で展開していたのですが、現時点でやっている取引は、各国の取引先とそれぞれやっているという形です。そこから例えば西や南でいえは、ベナンだったり、南アというふうに横に展開するというような試みをされているのだろうか、豊田通商で1カ国だけでやっていたビジネスというものを横展開するというのは簡単ではないかもしれませんが、どのようにされているのかといったことを一つお伺いしたいと思います。

パネラー:鈴木健司氏
企業秘密(笑)。いやいや、当然横でというのはやらなければいけないことだと思いますし、1回出張に行ったときに隣の国にも行けるというのもありますし、隣の国同士で市場がまったく違うというのはあまりないので、ある意味では一番やりやすいことではないかと思います。従って何のトリックもなく、普通に開拓されて今みたいにやっていくと、それが面になっていくというのがあると思います。
あとはやはりもう少し俯瞰的に見て、地域共同体がどういうふうに制度が変わっていくかというのを少し見通しながらやっていくと、単に一つ一つではなくてもう少し有機的な展開もできるのではないかと思います。

モデレーター:萩原孝一氏
今日は金沢からお越しいただいて、会宝産業さんはもともとナイジェリアから始まって、今はガーナのほうというか、ECOWAS域内、西アフリカ共同体、何かその辺の将来的な横展開の展望は如何でしょう。今たまたま英語圏ですけれども、フランス語圏に伸ばしていくというようなご予定はありますか。

パネラー:近藤典彦氏
率直に言うと、今予定はありません。英語圏の中でまず我々ができることをやる。やはりヨーロッパ圏の中へ行くと、ヨーロッパの車がまだ多いのです。日本の車がヨーロッパから入って左ハンドルでもいいのですが、もっと入ってきて、種類が多くなってくると日本の部品がまたある意味で活用されますので、我々はもう少し遅れてから入っていくという形にはなると思います。その時期が来ればまた、リサイクルということもやらなければいけないですし。

モデレーター:萩原孝一氏
もしそうなれば、豊田通商とのコラボレーションみたいなことも考えられますね。この話はもう何時間あっても尽きないと思いますが、残念ながら時間が来てしまいました。この後、30分ばかりですが、コーヒーがありますので、名刺交換やご歓談、また登壇者へのご質問、アフリカ協会の人間も何人かいますので、懇談戴きたいと思います。
ぜひ皆さんもこの機会に、アフリカ協会に入会しませんか(笑)、お誘いさせて戴きたい。それと「Facebook」をおやりの方が何人かおられると思います。アフリカ協会も「Facebook」を立ち上げました。今、1,600人「いいね!」が付いているので、なかなか大したものだと思うので、ぜひそちらのほうも、いっきに今日30人ぐらい増えるのではないかと期待しています。それでは本当につたないモデレーターで申し分けありませんでした。これにてフォーラムを散会としたいと思います。ありがとうございます。(拍手)

司会
皆さま、本日は誠にありがとうございました。資料の準備のほうで不行き届きがありまして、ご迷惑をお掛けいたしました。おわび申し上げます。これからも本日のような地域やテーマを絞ったフォーラムを続けていきたいと思いますので、皆さまのご協力をお願い申し上げる次第でございます。
この後、向こうのほうにコーヒーとクッキーを準備してありますので、お急ぎでない方はぜひそちらで情報交換とか、名刺交換とかをなさってください。本日はありがとうございました。(拍手)
(編集:副理事長・事業委員長 淺野昌宏)

 

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