講演記録

2014年7月9日経済同友会  松浦晃一郎会長・講演録抄録

 「アフリカとの交流強化」

1.はじめに
 ご紹介にあずかりました松浦です。今日は経済同友会のアフリカ委員会でお話しをさせて戴けることを、嬉しく思っております。事務局の方から、「アフリカとの交流関係強化」というテーマで、四つのポイントについて話してほしいと伺っています。「日本、アフリカ関係の変化についての分析」、「今後の日本アフリカ関係の展望」、「アフリカをエンパワーする日本の貢献」、「アフリカにおける中国、欧州諸国との比較、そしてそれを踏まえた日本の独自性」、これらの四点についてお話ししたいと思います。
 皆さまお仕事を通じて、あるいはいろいろなことでアフリカについてご存じと思いますが、アフリカを理解するためには、まずアフリカの歴史をしっかり理解して戴く必要があると思います。ここ数日秋篠宮殿下、妃殿下がザンビアとタンザニアを訪問されました。4年以上前には、皇太子殿下がケニアとそれからガーナにお出でになられていますし、安倍総理が、この1月にコートジボワール、モンザンビーク、エチオピアを訪問されました。ひと言でアフリカ、特にサハラ以南のアフリカといっても、国別、地域別に非常に多彩です。そこをしっかり頭に入れておく必要があると思います。

2.アフリカをサブリージョンで考える
 最近外務省の依頼で「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」に参加しました。一回目は20年前、二回目がほぼ10年前、それで今回が三回目です。3月、4月、5月、6月と毎月一回、集中的に議論をして、13ページの報告書が出ました。これを踏まえて外務省がこれから関係各省と相談をして、12月末の閣議にかけることになっています。
その中で私が非常に強調して、かつ皆さんが賛同してくれた点が一つあります。それは、この日本のODAの地域別方針の中で、従来はアジア重視など地域別にとらえて来ましたが、そういう時代は去ったと思っています。例えば、韓国はずいぶん前にODAは卒業していますし、中国ももう卒業していて、それどころかアフリカなどでは日本の競争相手になっているわけです。他方、このアジアの中にもまだまだODAを必要としているところがあります。この地域レベルではなくて、英語ではサブリージョン、日本語で準地域というのですが、つまり地域の中での区分け、即ちサブリージョンごとに検討する必要があります。
アジアについていえばASEAN、それから南西アジア、中央アジア、それから太平洋の島国、最低限これだけあるし、さらにいえば、ASEANといっても10カ国それぞれ相当発展段階にデコボコがあり、日本との全般的な関係にも同じことがいえて、ここは国別にしっかり見なければいけないという点を強調しました。これにはほかの有識者の皆様も賛成してくれました。
アフリカについては、北部アフリカ、西部アフリカ、中部アフリカ、東部アフリカ、南部アフリカと、最低限サブリージョンごとにしっかりアプローチをとり、考えていく必要があります。さらにいえばそのサブリージョンの中でも、西部アフリカでは中核はナイジェリアで、ナイジェリアのGDPは、南アフリカを追い越して経済的に見ればいまアフリカ最大です。しかし発展段階からいえば、西部アフリカは南部アフリカよりはるかに遅れており、ナイジェリアの他に、宗主国で見れば旧英領、旧仏領、さらには旧ポルトガル領、ほかにリベリアのように19世紀から独立をしていたなど、いろいろな国があるわけです。
日本とアフリカの交流関係を強化していくということを、皆さんがしっかり検討し、実際にそれを実施されることは非常に嬉しく思いますけども、その際にぜひきめの細かいアプローチで、サブリージョンごとに考えて戴きたい。アラブ連盟にも入っている北部アフリカの国。旧英領、旧仏領を中心としながらも旧ポルトガル領も入っている、西部アフリカ。それから東部アフリカは、旧英領が中心ですけども、エチオピアのように長年独立を保っている国。ウガンダ、ブルンジのように、ベルギー領であった国。さらにコンゴ民主共和国の様な国や、カメルーン等の旧仏領の国々など中部アフリカもバラエティーに富んでいます。南部はもちろん南アフリカが中心で、広い意味では旧英領が中心ですけれども、マダガスカルという旧仏領も入っており、南部アフリカもバラエティーに富んでいるわけで、そういうサブリージョンごとにしっかり見て戴きたいし、さらにいえば国別にも見て戴きたい。

3.安倍総理のアフリカ訪問
 そういう意味で安倍総理が今回コートジボワールを選ばれたのは、非常によかったと思っています。今まで、日本の総理がアフリカを訪問したのは2001年の森総理で、南アフリカ、ケニア、ナイジェリアを訪問しました。いずれも中核の国でありますけれども旧英領です。それから2006年に小泉総理のアフリカ訪問が実現し、ガーナ、エチオピアを訪問しました。これは旧英領と、エチオピアには当時のOAU(現在のAU)の本部があるということが大きな理由だったわけです。そして今回はコートジボワール、日本の総理が旧仏領を訪問したのは今度が初めてです。それからモザンビーク、これは旧ポルトガル領で、日本の総理が旧ポルトガル領を訪問したのも初めてなわけです。この点で、アフリカ側は、安倍総理の訪問を非常に評価しており、日本がアフリカについてきめの細かい対応を考え出してきた、というふうにアフリカ側は受け取っています。
そしてコートジボワールでは、ウワタラ大統領の音頭でECOWASという地域機構の首脳をみんな招いて、安倍総理はウワタラ大統領だけでなくECOWASの首脳全部と会談されました。旧仏領の国へ初めて行かれたということのみならず、ECOWAS全体のことについても議論されたことは非常によかったと思っています。モザンビークはいま申し上げましたので省略しますが、エチオピアはまさにAUの本部で、日本の対アフリカ政策を議論されて、スピーチの最後に「これから毎年アフリカに行きます」と発言されたが、ぜひ毎年行って戴きたいものです。今回の訪問は、日本がアフリカに対してきめの細かいアプローチを始める、大きなきっかけになったと思っています。

4.ODAと官民連携 
 それともう一つ良かったことは、30人もの日本の経済界幹部を同行させたことです。今の時代は、民間の活動というのが非常に重要になってきています。ただ、日本政府の対外政策といえば、やはりODAが重要で、日本政府がしっかりコントロールできているのはODAだからです。全体の方向について、政府がしっかり政策として打ち出せるのはODAです。政府といろいろな政府機関との協力、それから政府と民間の協力が重要であり、さらにいえば、国民がしっかりODAのあり方を支持してくれるということが重要であると今回の報告書でも謳っております。
しかし今は、アフリカ側が期待することは、まずはODAですが、それ以上に民間投資です。民間投資の比重が非常に高くなり、TICAD Vのときにも、アフリカは民間投資ということを非常に強調しました。つまり、民間投資も日本からもっと受け入れたいと言っています。ただこれは、政府がこの国にもっと投資しろといっても、企業は投資リスク、投資リターンを計算して投資するわけですから、政府の考える政治的、あるいは戦略的な重要性から投資が出てくるわけではないので、難しいわけですけども、投資とODAというものをしっかり結びつける、つまりODAをやるにあたっても民間の投資ということを念頭においてODAを考えていくということを、今まで以上にやる必要があると感じています。

5.日本の貢献と独自性 
 残念なことですが日本のODA予算が、今1997年の半分になっています。他方ODA予算のアフリカのシェアは高まって、10%を切っていたものがいまは20%です。TICAD Iが1993年の秋に開かれて、対アフリカ対策の出発点になったことが大きいと思います。
冷戦時代にアメリカ、ソ連が政治的な理由で、対アフリカ援助に力を入れて、冷戦が終わり両方が引き上げた中で、日本がTICAD を提唱して、アフリカを重点地域の一つとしたことで、アフリカも非常に歓迎し、本当に新しい出発点となりました。しかもアメリカとソ連が引き上げる中、日本は日本の見地から重要であるという国を、あるいはサブリージョンを選び、アフリカの政府、さらには民間とも手を握ってやっていく政策をとったということが、非常に評価されました。
ちょうどアフリカのほうは1990年代いろいろな国で独裁国家、軍事国家が残念ながら続きましたが、徐々に民主化が進み、更に、南アフリカでアパルトヘイト政策が終わりマンデラ政権が成立して、それが周りの南部アフリカの国々にいい影響を与えました。ナミビア、アンゴラ等々、非常に大きな展開があり、日本の新しい出発点と、幸いにして一致したということです。私は、一回目の1993年は細川総理で、二回目は5年後の1998年、駐仏大使でしたが、小渕総理に呼ばれて、日本の一員として参加しました(2008年はユネスコという国際機関の代表として参加)。

6.他国の動きと日本の特色 
 この2000年代に入ると、徐々に中国、インド、ブラジルなど、新興国がいろいろな政治的、経済的な要因からアフリカに進出し、アメリカも復帰してきます。ヨーロッパでいえばフランスは従来以上に力を入れるし、イギリスも英連邦の関係でもう一度見直し、ロシアはロシアで権益の確保の為に出てきます。特に中国は大変な経済力効果を背景として、進出してきます。なんといってもアフリカは資源という点で、非常に重要です。未開発の資源が多いです。
消費市場としての難点は、国が小さく分かれているということですが、全体の人口で見れば、2050年には、アフリカは現在の10億人から20億人に増え、2100年には、20億人が40億人と予測されます。アジアは2050年以前にピークを迎え減少してゆくと予測され、消費市場としてもアフリカが注目されてきます。ただ、90年代から、民主化への動きが広がりましたが、残念ながら中には逆行の動きもあって、なかなか民間活動、特に投資活動という観点からは、アフリカに出ることに躊躇を感じる企業も多い状況です。しかし、よく見てみればアフリカ全体が逆行しているわけではなくて、全体としては90年代に始まった民主化の方向に動いています。また、サブリージョン単位の経済統合も、遅々とはしていますが進んでいます。加えて、アフリカの国々の日本観、日本に対する見方というのは引き続き暖かいものがあります。デコボコはありますけども、幸いにしてマイナスのイメージはありません。60年代から、援助してきた実績というものがあり、全ての国ではないにしても良いイメージを持っており、それに加えてTICAD が動きだして、全体として日本がアフリカをしっかりと考えていると受け取られています。
ただ問題は、アフリカの日本への期待が90年代に非常に盛り上がり、また2000年代、また2010年代も盛り上がっているわけですが、対日期待の中身がかつてはODA中心であったものが、今度はODAプラス民間投資となってくると、そんなに簡単に増えていかないということで、アフリカの期待と、日本が実際にできることのギャップが心配されます。またODAの次元でいえば、日本はこの実施にあたって、現地の人材を大事にし、それが現地の人材育成につながります。目立たないけれども日本のODAプロジェクト、さらには民間投資プロジェクトを通じて人材育成をしてゆきます。これは欧州の援助でも必ずしも十分ではなく、中国の援助になると中国から労働者まで連れてくるといわれており、まさに日本の援助の非常に重要な点です。さらに、現地で人材育成をするのみならず、日本にもっとアフリカの人材を受け入れ、アジアでやったようにやりたいと思いますが、予算の問題、組織の問題等があってなかなか進んでいません。

7.今後の日本とアフリカの展望
 しかし今後を展望すると、日本とアフリカの関係は、紆余曲折はあっても、しっかりと伸びていくと思っています。日本から見れば日本が必要としている資源が未開発のかたちでアフリカには残っていて、それに企業が参加していくという形で伸びてゆきます。アフリカ側からすれば、できるだけ加工度を上げて持って行って欲しいうことになってきますので、そのへんが難しいところです。いずれにしてもアフリカは資源の宝庫ですから、資源を中心に日本とアフリカの民間関係、投資関係は伸びてゆきます。
ODAの次元でいえば、世界的に見て貧困が一番残るのはアフリカです。さらにいえば持続的な成長が必要なのはアフリカです。いま国連で2015年をにらんで、新しい開発目標を進める作業が進んでいます。2000年9月にミレニアム開発目標として八つ採択しました。ユネスコもそれに貢献しましたが、一番の狙いは2000~2015年にかけて、世界の絶対的貧困を半分にすることでした。当時、世界人口60億人のうちの五分の一の12億人が毎日1ドル以下で生活しており、それを2015年までに半減させるという目標で出発しましたが、半減はとても達成できない状況です。他方この持続的発展、いわゆるサスティナブル・デベロップメントは、第3回の地球サミットが、先月の5月にブラジルで開かれ、2015年以降を見すえて、新しい目標をつくるべきであるとして、いま国連で作業をしています。日本も参加していますけれど、この夏には答申が出てくると思います。それから開発ミレニアム目標、ミレニアム・デベロップメント・ゴールズ(MDG)に関しては、国連事務総長のハイレベル・グループが昨年答申を出して、2030年をにらんで前回と同じように目標を作る事になっています。第一目標は絶対的貧困の半減なのですが、第二目標はその為に初等教育を全ての児童が受けられるようにすることで、ここでユネスコが絡んできます。ただし今度の目標では初等教育だけではなくて、中等教育、高校教育にもふれるという答申になっています。ほかに保健衛生環境の改善もあります。
今作業をしているサスティナブル・デベロップメント・ゴールズはSDGといいますが、それと昨年答申のあった新MDGを一本化する作業が行われて、来年の秋の国連総会で採択することになると思います。実態的に一番深刻なのは、アフリカですから、アフリカの貧困対策、さらにはそれを踏まえて持続的な開発を進めることです。資源を開発すれば儲かるわけですが、アフリカの人達からすると、持続的なかたちで開発してほしいと考えています。単に先進国が来て開発してお金を残していくのではなくて、その国の発展に役立つような形にしてほしい、という気持ちが非常に強いわけです。それがいまの貧困対策と、持続的な開発を結びつけ形で、来年の秋には採択されると思います。これは日本にとっても、非常に重要なことです。
日本のアフリカ対策は、マクロ的にいえばこの国連のMDGとSDGを主にしたものができますから、それを踏まえてグローバルな対アフリカ政策をしっかりと考えて欲しい。ミクロ的にいえば、TICAD Vで約束をした一連の政策を具体化させる事です。今年の5月にカメルーンのヤウンデで閣僚レベルのフォローアップ会合があって、岸田外務大臣がODAの実施状況をしっかり説明をしています。そのフォローアップにあたって新MDGとSDGを合体した新しい目標に関して、こういう場でも日本の実施状態をしっかりと報告をして欲しいと思います。

8.アフリカ協会について
 私がアフリカ協会の会長になって、1年あまりになります。アフリカ協会の目的は、アフリカ諸国との経済、技術、文化交流を促進するということですが、企業関連の具体的な支援活動は、ひとつはアフリカに関する情報を民間の方に提供するということで、この情報も全般にわたるものとサブリージョンと国別の情報に分けています。また、現地の日本大使が一時帰国される時に時間を戴いて「大使を囲む懇談会」を開催しています。3月にマダガスカル大使を囲む会から始め毎月1-2回のペースでやっており、近々、モザンビークから帰国された橋本大使にやって戴きます。そういう場で、具体的な話、さらにいえば日本の対モザンビーク対策をどの様にしていけばいいかということまで議論されれば嬉しいと思います。それから、日本の企業が具体的にどこかに進出したいが、あまりアフリカのことを知らない、例えばナイジェリアのことを知らないというのであれば、ナイジェリアについて知っている理事とか、顧問とか、特別研究員との話し合いの場を準備しています。この様に民間との関係を強化して、アフリカとの交流を深めることにプラスになるような活動をやっていきたいと思っています。
ありがとうございました。
 
編集責任/淺野

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